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衆議院選挙の争点~「選択的夫婦別姓制度」とは

竹内豊行政書士
衆議院総選挙ので争点の一つ「選択的夫婦別姓制度」とはどういう制度でしょうか(写真:イメージマート)

10月27日(日)は第50回衆議院議員総選挙です。今回の選挙では、「夫婦の姓」をめぐる「選択的夫婦別姓制度」の賛否が争点の一つとなっています。「最近よく聞くけど、どういう制度なのかよくわからない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、選択的夫婦別姓制度とはどのようなものなのか3回に分けて見ていきたいと思います。

現在の制度~夫婦同姓の原則

選択的夫婦別姓制度に関する議論は、つまるところ「今の夫婦の姓に関する制度を変えよう」「いや、今の制度のままでいい」という話です。そこで、この制度の賛否を問うには、現在の夫婦の姓はどのようにして決められているのか知っておく必要があります。

結婚するには婚姻届を届け出なければならない

法律的に夫婦と認められるには、婚姻届を役所へ届け出ることが必要です(民法739条)。

民法739条(婚姻の届出)

婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。

2前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。

※法律では、結婚のことを「婚姻」と言います。

この規定によって、「婚姻届」を役所に届けることと「法律上の結婚」が認められることの2つが、ひも付けされています

婚姻届には「夫婦の姓」を記入しなければならない

婚姻届には、「夫婦が称する姓」を記入することが義務付けられています。すなわち、「夫婦が称する姓」を記入しなければ、役所は受付しません(戸籍法74条)。

戸籍法74条(婚姻)

婚姻をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。

一 夫婦が称する氏

二 その他法務省令で定める事項

※法律では、「姓」のことを「氏」(うじ)と言います。

夫婦同姓の原則

この戸籍法74条の規定は、次の民法を基としています。

民法750条(夫婦の氏)

夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

本条により、結婚するには「夫婦の称する氏」は、「夫または妻」の姓のどちらかを選ぶこととなります。その結果、夫婦は同じ姓となります。これを「夫婦同姓の原則」と言います。

以上をまとめると次のようになります。

・夫婦は必ず夫または妻のどちらかの姓にしなければならない

・どちらの姓にするかは、婚姻届を役所に提出する際に決める必要がある

・婚姻届の「結婚後の夫婦の姓の氏・新しい本籍」の欄に不備がある場合には、婚姻届が受付けされない

つまり、現行制度では、夫婦の姓を「夫または妻」のいずれかに決めなければ婚姻届は受理されず、法律婚は成立しないということです。

したがって、現在の婚姻制度では、あるカップルが結婚するには、民法750条の定めにより、「夫の姓を称するか」「妻の姓を称するか」のいずれかを選択する必要があります。裏返せば、夫か妻のいずれか一方が姓を変更しなければ法律的に結婚することができないということになります。

しかし、結婚するに当たって、姓を変えることに抵抗があったり支障が生じてしまったりする人も実際いるでしょう。そのような方に、「姓を変えることなく、法律的に結婚できる」という選択肢を与える制度が選択的夫婦別姓制度といえます。

次回は、選択的夫婦別姓制度が導入されるとどうなるのかを見てみたいと思います。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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