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結婚について知っておきたい法知識~その3「協力義務」「扶助義務」

竹内豊行政書士
結婚すると、お互いに「協力義務」が発生します。(写真:アフロ)

前回は、お付き合いをされているパートナーと結婚をすると、民法752条の「同居」義務が生じることをお伝えしました。もう一度、民法752条をご覧ください。

民法752条(同居、協力及び扶助の義務)

夫婦は同居し、お互いに協力し扶助しなければならない。

今回は、民法752条で義務付けられている残り2つの義務。「協力」「扶助」の義務について見てみましょう。

1.協力義務

夫婦の協力義務も、同居義務と同じく、夫婦生活を営むための本質的義務です。その内容も程度も各当事者によって当然異なります。夫婦それぞれの職業、資産、社会的地位、その他一切の事情に応じて、夫婦の間で決めるしかないというのが実際のところです。

以前は家事や育児は妻が行って当然と考えられていました。しかし、女性の社会進出に伴い、たとえば家事の分野では、家事を夫婦で協力し合って分担するといった「家事シェア」という言葉が最近よく聞かれるようになってきました。また、子の養育に夫が参加するという「イクメン」が定着しているのはご存知の通りです。この二つの言葉は、協力義務をうまく表現しているといえます。

なお、協力義務違反者に対しては、家庭裁判所に審判の申し立てができます。しかし、強制履行の方法は実際ありません。ただし、離婚原因の一要因としては考慮されます。

2.扶助義務

同居義務および協力義務と同じく、結婚の本質的義務です。

扶助とは相互的な経済援助を意味します。夫婦は同居して共同生活をするため、パートナーが要扶養状態に陥った場合には、パートナーの生活を自分の生活水準と同じように保持(キープ)する義務があります。このことを「生活保持義務」と言います。

この「生活保持義務」の提唱者である現代家族法の創始者である中川善之助博士(1897-1975)は、生活保持義務を、「最後の一片の肉、一粒の米までをも分け食らうべき義務」であると表現しています。夫婦が緊密な関係であることを想定しているのを端的に表している言葉です。

民法752条に掲げる「同居」「協力」「扶助」の3つの義務は、民法が提案する夫婦円満の秘訣と見ることもできます。

お付き合いしているパートナーとの結婚を迷っている方は、その方が自分に対して「3つの義務」を果たすことができるか否かを基準に考えてみるのもよいかもしれません。

また、これから結婚相手を見つける方は、「3つの義務」を頭に入れておくと、よきパートナーと巡り会えるかもしれません。

ただし、「3つの義務」は相手に一方的に求めるものではありません。お互いが果たすものです。この事をくれぐれもお忘れなく。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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