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秋ドラマは豊作か 1話目から見逃せない6作と配信ドラマ2作 春&夏ドラマ不調のTBSが盛り返す

武井保之ライター, 編集者
10月期TBS日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』公式Xより

10月に入り、今週からさっそく秋ドラマがスタートする。盛り上がりに欠けた夏ドラマから一転、話題作が多く生まれそうな期待感をあおるラインナップになっている。そんななか、注目したい地上波秋ドラマ6作と配信ドラマ2作をピックアップ。春、夏と話題作がなかったTBSに復調の兆しが見られる。

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野木亜紀子氏オリジナル脚本のTBS日曜劇場

まず、今期もっとも期待するのはTBS日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』。野木亜紀子氏のオリジナル脚本で、大ヒット中の映画『ラストマイル』を手がけた演出の塚原あゆ子氏、プロデューサーの新井順子氏も参加している。

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物語の舞台は、石炭産業で躍進した1950年代の長崎県・端島と、現代の東京のふたつの時代。戦後復興期から高度経済成長期にかけての物はなくても夢があり活力に満ちあふれた時代と、物は何でもあるけど若者が夢を持てない時代を描く、70年にわたる壮大な家族の物語になる。

どんな役柄でも抜群の安心感と安定感を感じさせる神木隆之介の芝居も楽しみだが、『アンナチュラル』や『MIU404』で描かれてきたような、現代社会へのメッセージ性が高い骨太な社会派ドラマが期待される。

柳楽優弥と坂東龍汰の競演が楽しみなヒューマンサスペンス

続いて、TBS金曜ドラマ『ライオンの隠れ家』。自閉スペクトラム症の弟と主人公の兄が平穏な2人暮らしの日々を過ごしていたなか、ライオンと名乗る小さな男の子が現れ、2人が彼を預からざるを得ない状況になってしまうところから物語は始まる。

慣れないながらもライオンと3人で暮らしていくうちに、ライオンがある事件に関わっていることがわかり、平穏な日々から嵐のような渦にのみ込まれていくヒューマンサスペンスだ。

兄と弟を演じるのは柳楽優弥と坂東龍汰。ドラマファンがいまもっとも芝居での対峙を観たい俳優2人だろう。オリジナル脚本によるサスペンスで、どんなヒリつく芝居を見せてくれるのか楽しみだ。

NHK脚本開発プロジェクト発の土曜ドラマに注目

加えて注目したいのが、NHKの脚本開発プロジェクトから生まれた、脚本家4人による共同執筆の土曜ドラマ『3000万』(NHK総合)。安達祐実の主演で、ちょっとした出来心からの思わぬアクシデントをきっかけに、人生が激変してしまう家族を描く。

日々の単調な生活、チャンスのない社会、子育てや将来への不安など、誰もが余裕も希望もない現代社会を生きるなかの痛みをえぐり出すクライムサスペンスだ。

そのほか、4作ぶりの現代劇で平成元年生まれの主人公がギャル魂を胸にパワフルに生きる姿を描くNHK朝ドラ『おむすび』、社会人1年目の主人公が大学時代の大切な思い出を振り返る『マイダイアリー』(ABC・テレビ朝日系)、口も態度も大きい小学校・保健室の小児科医が児童たちの異変を見逃さず背中を押す『放課後カルテ』(日本テレビ系)などが、心揺さぶるヒューマンドラマになっていそうな予感がある。

配信ドラマではNetflixとU-NEXT新作がすごい

配信ドラマでは、まずは9月19日から配信されているNetflixオリジナルドラマ『極悪女王』。すでに話題になっているが、感情を大きく動かされる感動の人間ドラマだ。

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もう1作注目したいのが、7月12日からU-NEXTで配信中の韓国の鬼才パク・チャヌク監督とロバート・ダウニー・Jrの異色タッグによるスパイサスペンス『シンパサイザー』(HBO)。パク・チャヌク節の光るトリッキーなストーリーテリングが秀逸。

ベトナム戦争時の2重スパイを主人公に、彼の現実と脳内の映像が倒錯しながら物語は進み、最終話で第1話からの前提が崩される仕掛けがある。韓国のトップクリエイターが、ベトナムとアメリカを舞台にした物語を、ベトナム語と英語でハリウッドで撮った意欲作であり、傑作。奥行きと奥深さのある韓国クリエイティブの最先端を体感できる。

さて、地上波連続ドラマではいまひとつ盛り上がりに欠けた夏ドラマだったが、秋ドラマは変わりそうだ。期待していいだろう。

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ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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