『海に眠るダイヤモンド』見えてきたフォーマット 端島に映す現代日本の社会課題と未来の地球環境
TBS日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』第3話が放送され、昭和の高度経済成長期と現代を対比する、壮大なヒューマンドラマのフォーマットが見えてきた。
毎話映し出されるのは、閉ざされた孤島の端島で起こるさまざまなトラブル。そこに、現代日本の社会課題を投影することで、端島を島国・日本の縮図として描いている。
(関連記事:『海に眠るダイヤ』重厚な物語の構造を立体的にした第2話 いづみの正体も匂わせた)
端島の炭鉱職員と現代の富裕家族の社会格差への意識の差
第3話では、端島の住宅における、炭鉱職員、炭鉱員、下請け労働者、島の商業関係者のヒエラルキーと住環境の格差を課題として提示し、その是正を含む労働意欲の向上のための施策に取り組む若手炭鉱職員の姿が映し出された。
一方、現代パートでは、いづみ(宮本信子)の孫の医学生・千景(片岡凜)がホストに400万円の売り掛けがあることが発覚。家族会議が開かれるも、紛糾することはなく、すんなり親が支払うことで決着する。
生まれ育った環境による貧困層と富裕層の社会格差を玲央(神木隆之介)の視点から映し、それに思いを馳せることは微塵もない富裕層の家族と、端島の格差を是正しようと奮闘する炭鉱職員が対比して描かれた。
地球の未来への気づきとアクションを求める暗示
そして、もうひとつ本作が提示していることがある。
端島の社会から、近い未来に地球に起こるであろう危機を映し出し、現代社会への警鐘を鳴らしているように見える。
第2話で猛烈な台風に襲われた端島は、水の補給が途絶え、日常生活が不便になるだけではなく、人の生死にさえかかわる深刻な事態に陥る。しかし、その危機を経て、1年半後には海底水道が敷設され、島に水道が開通。船で水が運ばれていたそれまでの島は、次なる時代へと社会が進化した。
第3話では無人島に移植された桜の木が登場した。それは地球の未来の自然環境に対する問いかけになっているのかもしれない。
このように、毎話示される当時の端島のトラブルを起点にする社会の発展や環境の改善は、地球の未来への気づきとアクションを求める暗示になっているのではないだろうか。
いづみとの同一人物を匂わせる4人のエピソード
本作の最大の謎は、現代のいづみが端島の3人の女性(朝子、百合子、リナ)のうちの誰か、ということ。第2話では百合子(土屋太鳳)といづみが重ねられたが、第3話では朝子(杉咲花)だった。
この先はリナ(池田エライザ)のエピソードの回もあることだろう。毎話ひとりずつ、いづみと同一人物であることを想起させるエピソードが繰り広げられるパターンのようだ。
もうひとつの謎である、端島の鉄平(神木・二役)と現代の玲央の関係性はまだまったく触れられていない。中盤に差し掛かるそろそろ“匂わせ”があり、しかしそれはラストでひっくり返る“フリ”であることが定石だが、いろいろ想像することを楽しませてくれる。
実にエンターテインメント性の高い重厚な社会派ドラマだ。
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