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唐田えりか、声を震わせながら流した涙の意味「もし出合っていなかったらどうなっていただろう…」

武井保之ライター, 編集者
Netflix『極悪女王』配信記念イベントに登壇したキャスト陣(筆者撮影)

Netflixシリーズ『極悪女王』の配信記念イベントが9月12日、東京・後楽園ホールにて開催され、ダンプ松本役のゆりやんレトリィバァのほか、長与千種役の唐田えりか、ライオネス飛鳥役の剛力彩芽、白石和彌総監督、さらに極悪女王レスラー役キャスト(マリーマリー・えびちゃん、隅田杏花、根矢涼香、鎌滝恵利、安竜うらら、堀桃子、戸部沙也花、鴨志田媛夢、芋生悠)が集結した。

準備期間に5年をかけた本作は、プロレスシーンの99.9%が吹替えなし。体型作りから技の習得まで、ふだんの女優業と平行してプロレス修行に打ち込んできたキャストたちの思い入れは強い。この日の特設リングの上から、キャストそれぞれが作品への熱い気持ちを語るなか、感極まった唐田えりかが声を震わせながら涙を浮かべるひと幕もあった。

ゆりやん、手が震えて涙が止まらないこともあった

本作は、80年代にカリスマ的人気で女子プロレス旋風を巻き起こした“最恐ヒール”ダンプ松本の知られざる物語を描くNetflixオリジナルドラマ。企画・脚本・プロデュースを鈴木おさむが手がけることでも注目されている。

この日のイベントでは、「ネトフリ極悪プロレス」と銘打ち、本作のプロレススーパーバイザーを務めた長与千種が設立したマーベラスプロレス全面協力のもと、現役プロレスラーたちが「ゆりやん軍団」(ドレイク森松、永島千佳世、DASH・チサコ、&ZAP-T)と「唐田・剛力軍団」(彩羽匠、桃野美桜、Maria、川畑梨瑚)に分かれて戦う30分1本勝負の生試合も行われた。

試合後にリングでマイクを持ったゆりやんレトリィバァは「日本中から嫌われたヒール役を演じてリングで罵声を浴びたときには、手が震えて涙が止まらないこともありました。当時のダンプ松本さんの気持ちを推し量ると、すごい覚悟があったことを体感しました」と撮影を振り返った。

そして、リング上の試合を終えたばかりの選手たちと、リングサイドで観戦していたダンプ松本ほかレジェンドレスラーたちに敬意を払いながら、「ダンプさんをはじめ、当時のプロレスラーのみなさんが、すごい時代に夢に向かって一生懸命に生きてきたことを尊敬するばかり。私も人生をかけてこの作品に力を注ぎました」とメッセージを送った。

唐田えりか、これからの人生を考えたうえでの挑戦であり覚悟

続いて行われたトークショーでは、ゆりやんレトリィバァのほか、唐田えりか、剛力彩芽、白石和彌総監督がリング上へ。白石総監督は、極悪女王レスラー役女優陣は、撮影前からプロレス道場に入門し、芝居よりも優先順位を上げてプロレス練習に励んだ結果、大技のジャーマンスープレックスホールドができるようになった女優までいたことを「驚きの仕上がり具合」として報告した。

一方、長与千種役を演じた唐田えりかは、本人から直々に教わったことが、光栄であり嬉しく感じながらも、偉大なレスラーであり、スターでもあった彼女を目の前で演じることがプレッシャーになっていたと明かし、「練習を重ねていくうちに、長与さんが一緒に戦ってくれていると思えるようになって。すごく支えてもらいました」と振り返る。

すると長与からも「私も唐田えりかさんの挑む力に助けられた」と笑顔の返事があった。

唐田は当時の練習から撮影までのハードな日々のなか、自身を見つめ直す時間にもなっていたことを思い起こし、思わず感極まって声を震わせながら涙ぐむひと幕もあったが、言葉に力を込めて、この先の女優人生への決意を口にした。

「一人ひとりの思い入れがとても強い、熱量の高い時間を過ごしました。私にとっても、本作はこれからの人生を考えたうえでの挑戦であり、覚悟のひとつだったので、この役を演じさせていただいてありがたかったです。もし、この作品に出合えていなかったら、自分はどうなっていただろう……。自分はまだまだがんばれる、がんばらなきゃいけないと思わせてくれた現場でした」(唐田えりか)

ゆりやん、自分の殻を破ってボーダーを超えた

プロレスアクションに話題が集まりがちな本作だが、それだけではない。本筋は、正統派プロレスラーとしての成功に憧れながらもクビ寸前だったダンプ松本が悪役に転身し、さまざまな代償を払いながら、苦悩や葛藤を抱えて日本女子プロレス史上もっとも有名なヒールに成り上がっていく人間ドラマだ。

ダンプ松本を体型から体現したゆりやんレトリィバァは「これまでの殻を破って、自分の感情と向き合えたことに感謝するばかり」と本作を経た自身の変化を喜ぶ。

「もしこの作品に出演させていただいていなかったら、いまの私がどんな人間だったか想像したくないほど、貴重で充実した時間でした。いままで、自分のなかのボーダーラインを超えて感情を表に出すことが恥ずかしくてできなかった。それが変わりました。自分がボーダーを超えられることも、その超え方もわかりました。この作品に引き出してもらいました」(ゆりやんレトリィバァ)

とにかく熱量が高い作品のようだ。演者にとってそれぞれの人生に影響を与えるほどの現場であったことが伝わってくる。最後に白石総監督は本作への思いを力強くこう語った。

「これまでにいろいろな作品を作ってきましたが、死ぬ前に見る作品は『極悪女王』だと思います」(白石和彌総監督)

否応なく期待が高められた本作は、9月19日より全5話で全世界配信される。

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ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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