『SHOGUN 将軍』これだけ話題でも周囲に観た人がいないのはなぜ
ディズニープラスのオリジナルドラマ『SHOGUN 将軍』が『第76回エミー賞』で史上最多となる18部門を受賞した。
この3連休後半から連休明けにかけて、ネットニュースだけでなくテレビ情報番組までこの話題一色と言っていいほどの露出量になっている。
なのに、周囲にはドラマを観たという人がいないだけでなく、ほとんど話題に上らない。同じ配信オリジナルドラマでも、Netflixの『地面師たち』とは対照的だ。
洋画不振ともつながる日本市場の難しさ
『SHOGUN 将軍』は、「関ヶ原の戦い」前夜、窮地に立たされた戦国一の武将・虎永と、その家臣となった英国人航海士・按針を中心に、2人の運命のカギを握る謎多きキリシタン・鞠子らが織り成す、歴史の裏側の壮大な謀り事を圧倒的な映像で描いた戦国スペクタクル時代劇だ。
制作はディズニー傘下の米ケーブルテレビ局・FX。真田広之がプロデュースと主演を務め、日本人俳優や時代劇専門スタッフが多く参加し、劇中の7割ほどが日本語のセリフ。アメリカ製作の海外配信ドラマではあるが、日本人が観ても楽しめる、膨大な製作費をかけた大作時代劇になっている。
しかし、今年2月の配信開始当初はそれほど話題になっていなかった記憶がある。そしていま、これだけメディア露出があっても、Netflix『極悪女王』のほうが話題に上がる。
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その根底には、ディズニープラスとNetflixの市場シェアの差だけでなく、コロナ禍以降の深刻な洋画不振ともつながる、一般層の興味関心が国内作品に向く日本市場の特性があるだろう。
グローバルプラットフォーマーや外国映画配給会社からは、日本はアニメをはじめ、優れた国内作品が多く、それらが圧倒的に強い、外国作品の参入が難しい特殊な市場という話をよく聞く。
『SHOGUN 将軍』のように多くの日本人が制作に深く関わり、日本を描く作品であっても、その壁を崩すのは簡単ではないようだ。
一方、映画興行で見ると、今夏の洋画には興味深い動きがあった。
『インサイド・ヘッド2』は興収50億円に迫る大ヒットになり、『デッドプール&ウルヴァリン』はR指定映画ながら異例のスマッシュヒット。『エイリアン:ロムルス』も初週3億円を超え、今年の洋画興収の初週No.1となった。
それぞれが大きいトピックというわけではないが、明るい話題の乏しかった近年の洋画興行のなかでは、この一連のヒットは、洋画再興への一縷の望みがかかる希望の光のような動向になる。
そうしたなか『SHOGUN 将軍』の『エミー賞』受賞トピックは、その流れを少しでも勢いづけることへの期待がかかる。
『SHOGUN 将軍』と『極悪女王』が同時に話題になってほしいところだ。
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