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猟友会が「ヒグマ駆除拒否」報道を否定 騒動の背景にある法的問題とは #専門家のまとめ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:イメージマート)

北海道猟友会を巡る報道が話題となっています。体制が整備されていない自治体からのヒグマの駆除要請を断るように、全支部に通知する方向で検討しているというものです。しかし、猟友会は「誠実に対処する」「現時点でその方針に変わりが無い」などとコメントし、報道の内容を否定しています。とはいえ、これで全て解決したというわけではありません。騒動の背景にある法的問題を含め、理解の参考となる記事をまとめました。

ココがポイント

「支払われる金額が少ないからハンターたちが駄々をこねている、という訳ではない」「猟友会は(中略)警察や役所の下請けではない」
出典:現代ビジネス 2024/11/16(土)

「何か問題があるとすべては猟友会のせい」「警察(中略)の中で山に詳しい者もクマの習性を知っている者もほぼいない」
出典:現代ビジネス 2024/11/17(日)

「道内のハンターからは、行政の駆除要請に協力したハンターが、法的責任を問われる事態を疑問視する声もある」
出典:毎日新聞 2024/11/16(土)

「ボランティア精神頼みの現状は早晩限界を迎える」「危険な仕事はきちんとした身分の保証か、高い報酬のどちらかがないと成立しない」
出典:ENCOUNT 2024/11/16(土)

エキスパートの補足・見解

北海道公安委員会が猟友会砂川支部長の銃所持許可を一方的に取り消したことも騒動の背景にあります。2018年に市職員の駆除要請でヒグマに発砲し、現場の警察官も問題にしていませんでしたが、あとから付近に建物のある場所で安全確認が不十分だったとして銃刀法違反に問われたばかりか、不起訴で終わったのに銃所持の許可を取り消されてしまったのです。

裁判に発展し、一審では公安委員会による裁量権の濫用だとして男性が勝訴したものの、ことし10月に高裁で逆転敗訴し、上告審が続いています。

生命のリスクを伴う危険な業務ですし、駆除するだけでなく運搬や解体、焼却処分まで含めると大変です。しかも、駆除反対派から批判の矢面に立たされ、誤射など何かトラブルが生じたときには法的責任を負わされる立場でもあります。猟友会のメンバーらが行政に不信感を抱くのも当然でしょう。

もし本当に猟友会が組織を挙げて駆除の拒否に回れば、担い手不足に陥る自治体が続出します。とはいえ、権限や予算規模が小さい地方の市町村レベルで対処できる話ではなく、国による法整備や補助金を含め、駆除体制の抜本的な改革が求められます。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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