『ライオンの隠れ家』DVから母子を守る家族と社会の闘いの物語
ほっこりする家族のヒューマンドラマと本格サスペンスが綯い交じるTBS金曜ドラマ『ライオンの隠れ家』。第5話では、謎だらけだった登場人物たちの関係性が見えてきた。中盤から後半にかけて、パズルがひとつずつ丁寧にはめられていくようなストーリーテリングに心地よさを感じていたところ、ラストでまた先の読めない新たな展開を迎えている。
明らかになってきた複雑な人間関係
主人公の兄・小森洸人(柳楽優弥)と自閉スペクトラム症の弟・美路人(坂東龍汰)の平穏な2人暮らしに、ライオンと名乗る小さな男の子(佐藤大空)が乱入。平穏だった日々が嵐のような渦にのみ込まれていくなか、3人の間には徐々にお互いを思い合う気持ちが生まれていく。
一方、身体にDVを思わせるあざがあるライオンが兄弟の前に現れた裏では、橘祥吾(向井理)の妻・愛生(尾野真千子)と息子が行方不明になる事件が発生。女性の遺体が発見されるも、愛生ではないことが明らかになっていた。
また、洸人の仕事場の同僚で、事情を知ったうえで協力する美央(齋藤飛鳥)は、裏で謎の男・X(岡山天音)とつながっており、愛生もまたXに動かされていた。
そんな謎だらけの複雑な関係性のなか、愛生は兄弟の姉であり、ライオンは姉の息子であることが明らかになる。母と息子はお互いに会いたくても会えない事情があり、ライオンは兄弟のもとに預けられていた。
また、洸人がライオンを母・愛生に会わせようとするのに反対する美央は、Xの支持を受けて愛生をサポートする立場であることが推察される。Xから「また見殺しにするのか」と詰められるところからは、ライオンまたは愛生を助けられなかった過去を背負っていることがわかる。
美央の過去が、物語の真相のカギになるのかもしれない。彼女は、Xまたは愛生による、ある計画をサポートしている。それは、父・祥吾のDVからライオンを守るため、父と息子の縁を完全に切ることのようだ。
家族の愛と絆が自然に育まれていく
本作は、DVから子どもを守るための家族の闘いの物語なのだろう。突然現れた男の子を、姉の息子と知らぬまま家族の一員として迎えることになった兄弟は、戸惑いながらも環境に順応していき、家族としての愛と絆が自然に育まれ、それぞれが人間として成長していく。
そして、その子どもを、家族を、周囲の人たちや社会が必死に守ろうとしている。そんなことを描いていくドラマになる気がする。
第5話のラストでは、母と息子がようやく再会する直前で叶わず、新たな展開に入った。いつの間にかすっかり洸人に感情移入しながら、次なる予想できない展開を楽しみにしている。
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