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「プレスリリースで送るほどのものがない」と嘆く前にできること~教育広報担当者が知ると得する話・4

石渡嶺司大学ジャーナリスト
(写真:イメージマート)

◆「近大のような卒業式もないし」と嘆く広報担当者

大学広報担当者からは、近畿大を羨む話が良く出る。

それが回りまわって「メディアは近大ばかりえこひいきして」論になっていることを前回、ご紹介した。

こちらが、「プレスリリースを送ってほしい」と伝えると、ほぼ全員、「近大のようなネタがない」と愚痴る。

いわく、

「派手な入学式・卒業式もできないし、マグロのような研究成果もない」

「プレスリリースに書けるようなものがない」

などなど。

ちなみに、広報関連で過去に相談を受けたのは公式・非公式含めて数十校。学長や理事、広報部長など、職務権限のある大学も含めて、その大半がプレスリリースを送ってくれない。

それどころか、学部新設などの大きなトピックスがあっても、プレスリリースやパンフレットすら送られてこない。

いかに、この石渡が大学業界から嫌われているかを示すエピソードである。

◆小さいネタでも送ったもの勝ち

酒の量が増えそうだが、酔いつぶれる前に本稿の話を進めたい。

結論から言えば、ネタの大小はこだわる必要がない。

イベントや研究成果、学部・学科新設以外でも大学は色々あるはずだ。

様々な行事や教員の研究発表、地域との交流活動、部活・サークル関連など。

近畿大は、大小問わず、1日に数本のプレスリリースを送ってくる。

他の大学も「送るネタがない」と愚痴らずに、近大を見習ってどんどん送ってほしいものだ。

◆近大と石渡が癒着しているか、自己点検

それにしても、近大をえこひいきしただの、癒着しただのと、よく言われるので、改めて近大を扱った記事を点検してみた。

近畿大「深夜アニメ20本視聴」講義の実況中継ルポ~想像の斜め上を行くガチ中のガチだった!(Yahoo!ニュース個人/2016年5月23日公開)

人気YouTuberの禁断ボーイズ、母校近畿大に降臨~高校生キャリア選択の新たな扉を開く(Yahoo!ニュース個人/2018年7月23日公開)

上がった大学・伸びる学部84校~Fランク脱出/情報系/観光・国際系~コスパのいい大学2022(Yahoo!ニュース個人/2022年1月23日公開)

Yahoo!ニュース個人だと、この3本だった。ただし、2022年公開の「コスパのいい大学2022」は近畿大だけでなく84校を紹介している記事だ。

他の媒体でも、近畿大を別格扱いにした覚えはない。

これで、「近大をえこひいきしている」と言われて、実にいい迷惑である。

◆近大のプレスリリースの効果は?

愚痴はさておき、この3本の記事の出発点は何だったか、振り返る。

まず、文芸学部のアニメ講義ネタ、これは他媒体(ねとらぼ)が大元で、面白そうと思い、近畿大広報部に取材を申し込んだ。

記事タイトルにもあるように、想像の斜め上を行く濃い内容だった。

ユーチューバー記事は、当時、YouTubeで人気絶頂だった禁断ボーイズの動画からである。近大出身者が4人中3人を占めるユーチューバーグループで2018年当時は100万人登録を超え、10代からの支持が絶大だった。10代ならざる石渡もファンであり、動画をちょこちょこ見ていたところ、近畿大のオープンキャンパスに出るとの動画が出ていた。

これは面白い、と思い、当時、広報部長だった世耕さんに電話して、OKを貰った。

オープンキャンパスの講演後には、彼らに取材もさせてもらい、これが人気ユーチューバーか、と感心したのを覚えている。その4年後に解散。さらに、メンバーの一人がしょうもない犯罪で逮捕されるとは夢にも思わなかった。

なお、文芸学部ネタ、オープンキャンパスネタとも、交通費等は自己負担である。

「コスパのいい大学2022」は、プレスリリースの効果があった、と言える。

まず、出発点は情報学部設立のプレスリリースだった、との記憶がある。

それから、情報学部のメディア向け説明会(zoom)開催の案内が来て、ちょうど日程が空いていたので参加した。

それやこれやで、情報学部についてはそこそこ知っており、Yahoo!で大学紹介記事を書く際、84校の中に入れた次第。

それと、これは時期と媒体(Yahoo!ニュース個人以外のネットメディア)は忘れたが、マナー講座についても記事にした。

近大からのプレスリリースの一通がインターンシップの事前研修について。確か、マナーがどうこう、という内容だった気がする。

ちょうど、関西にいる時期だったので、見学を近大に依頼。OKを貰って、後ろの方で話を聞いた。

その後、就活関連の記事を書くこととなり、このマナー講座についても記事中で反映した。

この4本の記事、プレスリリースの効果があったのは2本。近畿大からのプレスリリースは2012年ごろから受け取っている。たぶん、年に300本は受け取っているはず。10年で3000本として、記事化が2本。

確率としては0.06%となる。

◆以下、有料公開部分となります。

◆広告効果を考えれば安い?

◆「近大ならでは」が実はない

◆ネタの大小・質よりも量・頻度が大事

※無料公開部分1800字・有料公開部分の文字数2500字/合計4300字

学校・教育機関広報担当者向けシリーズ・バックナンバー

鶴見大学VS週刊文春のプレスリリースを勝手に添削~教育広報担当者が知ると得する話・1(2023年3月12日公開)

侮辱・不適切動画が出た学校はどうする?~教育広報担当者が知ると得する話・2(2023年3月16日公開)

「近大ばかりえこひいきして」に反論したい~教育広報担当者が知ると得する話・3(2023年3月31日公開)

以下、有料公開部分です。

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大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計33冊・66万部。 2024年7月に『夢も金もない高校生が知ると得する進路ガイド』を刊行予定。

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