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東根室だけじゃない! 過疎化や通学生のバスへの転移などで先行き不安な花咲線の廃止危惧駅12

清水要鉄道・旅行ライター
別当賀駅(根室市)

 23日、日本最東端の駅として知られる東根室駅の廃止が検討されているとのニュースが報じられた。このニュースは筆者のような駅を趣味対象とする「降り鉄」にとっては衝撃的なニュースだった。その理由はもちろん、東根室駅が「最東端」だからというのもあるが、東根室駅よりも利用者の少ない駅を差し置いての廃止検討だったからという方が大きい。

 東根室駅の令和4(2022)年度の一日平均乗車人員は10.8人だが、東根室駅が属する花咲線(根室本線のうち釧路~根室間)には、もっと利用者が少ない駅がまだまだあるのだ。この記事では、そんな花咲線の廃止危惧駅を紹介していこう。

武佐駅(釧路市)
武佐駅(釧路市)

 まずは釧路駅から二駅目の武佐(むさ)駅だ。釧路市郊外の新興住宅地に位置し、開業は昭和63(1988)年3月13日と比較的新しい。駅前には団地が立ち、一見利用者が多そうに見えるものの、令和4(2022)年度の一日平均乗車人員は4.0人だった。住宅街にあるにも関わらず、それが利用に結びつかないという点では東根室駅と似た性格の駅と言えるだろう。

別保駅(釧路郡釧路町)
別保駅(釧路郡釧路町)

 武佐の次の別保(べっぽ)駅は釧路郡釧路町の玄関口だ。国道44号線が目の前を通り、近くには釧路町役場もあるものの、町の玄関口としては活気に欠ける。それもそのはずで、釧路町の人口の半数以上は釧路市に隣接したセチリ太地区に居住しているため、別保地区は役場こそあれど市街地自体は小さいのだ。別保駅の令和4(2022)年度の一日平均乗車人員は3.4人。役場最寄り駅と言えど、釧路町が駅の存続に意義を見出さなければ廃止もありえるだろう。

上尾幌駅(厚岸郡厚岸町)
上尾幌駅(厚岸郡厚岸町)

 上尾幌(かみおぼろ)駅は厚岸郡厚岸町最西端の集落・上尾幌地区にある駅だ。昭和10(1935)年12月に建て替えられた古い木造駅舎が残っている。上尾幌はかつて炭鉱と林業で栄えた集落で、最盛期には2000人以上が暮らしたが、令和元(2019)年度時点で人口139人まで減少している。集落には郵便局や森林事務所、きのこ菌床センターなどがあるものの、商店や飲食店などはない。令和4(2022)年度の一日平均乗車人員は4.0人。行き違いの設備があるので、もし廃止になっても信号場としての設備は残るだろう。

尾幌駅(厚岸郡厚岸町)
尾幌駅(厚岸郡厚岸町)

 尾幌(おぼろ)駅は国道44号線沿いに形成された集落にある駅だ。駅舎は貨車駅舎で、動物のイラストが描かれている。集落には郵便局、駐在所、セブンイレブン、食堂などが揃っており、賑わいが感じられるが、駅は集落の外れに忘れられたように佇んでいる。令和4(2022)年度の一日平均乗車人員は3.0人。

門静駅(厚岸郡厚岸町)
門静駅(厚岸郡厚岸町)

 門静(もんしず)駅は厚岸湾に面した漁村にある駅で、国道44号線に面している。駅前にはガソリンスタンドがあるが、商店や飲食店などはない。令和4(2022)年度の一日平均乗車人員は9.4人で、周辺の無人駅と比べると比較的多い。とはいえ、学生の卒業などで今後減少する可能性もないとは言えない。

浜中駅(厚岸郡浜中町)
浜中駅(厚岸郡浜中町)

 浜中(はまなか)駅は厚岸郡浜中町の玄関口だが、役場などがある中心市街地・霧多布からは大きく離れている。駅前の市街地には役場支所や中学校、スーパーマーケットなどもあり、一通り町としての機能が揃っているものの、駅の利用にはあまり結びついておらず、令和4(2022)年度の一日平均乗車人員は4.6人だった。 

 浜中町が「ルパン三世」の原作者・モンキー・パンチ氏の出身地であることに因んで、駅にはルパンたちの等身大パネルが設置されている。

姉別駅(厚岸郡浜中町)
姉別駅(厚岸郡浜中町)

 姉別(あねべつ)駅は浜中町東部の姉別集落にある駅で、駅前には酒店と郵便局がある。浜中町内の3駅の中では最も駅前集落の規模が小さく、快速「ノサップ」「はなさき」は停車しない。令和4(2022)年度の一日平均乗車人員は3.4人。

厚床駅(根室市)
厚床駅(根室市)

 厚床(あっとこ)駅は根室市西部の厚床集落にある駅で、かつては標津線が分岐していた。集落の規模は大きく、郵便局、セブンイレブン、飲食店などがあるものの、かつての路線分岐駅としては寂しげな雰囲気だ。交換設備は廃止となり、青春18きっぷのポスターにも使われた2番ホームも立入禁止となっている。令和4(2022)年度の一日平均乗車人員は7.2人。厚床から根室市街へはバスもあり、令和5(2023)年4月1日からは18歳以下のバス運賃が無料となるフリーパスが交付されていることを考えると、通学生のバスへの転移で、現在はもっと利用者が少なくなっていることだろう。

別当賀駅(根室市)
別当賀駅(根室市)

 別当賀(べっとが)駅は牧草地帯が広がる別当賀地区にある駅で、駅前と駅裏に小規模の集落が形成されている。駅舎は昭和末期に貨車駅舎となった。令和4(2022)年度の一日平均乗車人員は1.2人で、令和5(2023)年度は1人以下となっている。もはや廃止は秒読みといった感じで、東根室より先に廃止検討のニュースが流れていないのが不思議と言ってもいいほどだ。

落石駅(根室市)
落石駅(根室市)

 落石(おちいし)駅は太平洋に突き出た落石岬の最寄り駅で、減築された木造駅舎が残る。行き違い設備を持つ駅としては日本最東端。駅前には小規模の集落が形成され、公民館、義務教育学校、ガソリンスタンドがあるが、落石地区の中心集落からは2キロほど離れている。令和4(2022)年度の一日平均乗車人員は11.0人だったが、令和5(2023)年4月1日以降、落石地区と根室市街の間では通学時間に合わせてバスが運行(実証実験を経て定期化)されており、通学生はそのほとんどが鉄道からバスに転移したものと思われる。

昆布盛駅(根室市)
昆布盛駅(根室市)

 昆布盛(こんぶもり)駅は森の中の道道沿いにある駅で、一見秘境駅のようだが、少し離れたところに漁村の昆布盛集落がある。ホームのそばに小さな待合室があるが、なぜか床が盛り上がっている。上り普通列車の一部は通過する。令和4(2022)年度の一日平均乗車人員は3.0人。落石地区と根室市街を結ぶバスの経路に当たっているため、通学生はバスに転移したものと思われる。

西和田駅(根室市)
西和田駅(根室市)

 西和田(にしわだ)駅は牧草地帯の中の道道沿いにある駅で、駅舎は貨車駅舎。西和田は屯田兵村に由来する集落で、大隊長の苗字の「和田」から命名された。駅前には簡易郵便局、牧場、工場などがあるが、集落自体は小さい。下り普通列車の一部は通過する。令和4(2022)年度の一日平均乗車人員は4.4人だが、こちらも通学生はバスに転移したものと思われる。

 以上、花咲線の廃止危惧駅のうち、東根室駅を除いた12駅を紹介した。12駅の中には市街地にある駅や役場の最寄り駅なども含まれているが、市街地にあって高校最寄り駅である東根室駅すら廃止候補となる現状から考えれば、これらの駅も廃止候補となってもおかしくない。通学に便利なバスの登場など、花咲線を取り巻く環境も目まぐるしく変化しており、「この駅は集落が大きいから廃止にならないだろう」という推量も通用しなくなくなりつつある。いずれも駅も早めに訪問しておいた方がよいだろう。

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鉄道・旅行ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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