会社の人事は成果主義が増え、若手が抜擢されることもあるが、うまくいくこともあれば、そうでないこともあろう。織田信長に抜擢されたのに、期待に応えられず失脚した２人の武将がいたので紹介しよう。

　信長は版図を広げる過程で、譜代の家臣だけでなく、新参の家臣を抜擢することがあった。羽柴（豊臣）秀吉、明智光秀、荒木村重などはその好例で、敵に勝利した際はその領国を与え、支配を任せた。

　信長は家臣を大胆に登用する一方で、失敗した者には実に厳しかった。重臣の佐久間信盛は大坂本願寺を攻めあぐねたので、戦後、信長から厳しく叱責され、織田家中から追放される憂き目にあった。

　信長に抜擢されながら、その後の失態で失脚した武将として、中川重政、簗田広正の２人を取り上げることにしよう。

◎中川重政（生没年不詳）

　重政は出自に不明な点が多いものの、信長に従って尾張統一に貢献し、黒母衣衆として処遇された。永禄１１年（１５６８）、信長が足利義昭を推戴して上洛すると、光秀、秀吉らとともに京都などの支配に携わったことを確認することができる。

　重政は安土（滋賀県近江八幡市）の守備を任されたが、所領をめぐって柴田勝家と争い、弟の津田盛月が勝家の代官を殺害した。これを知った信長は激怒すると、重政と盛月を改易したうえで、徳川家康のもとに追放し、蟄居という厳罰を下したのである。

◎簗田広正（？～１５７９）

　広正も出自に謎が多い人物であるが、信長の馬廻として仕えて各地を転戦し、大いに軍功を挙げた。天正３年（１５７５）、広正は信長の推挙により、別喜姓を与えられた。同年の越前一向一揆の討伐には、諸将とともに広正も出陣し、越前・加賀の平定に貢献した。

　戦後、広正は加賀一国の支配を任されたが、しばらくして加賀の一向一揆が蜂起した。広正は一揆勢を討伐すべく出陣したが、苦戦を強いられたので、信長に援軍を求めた。信長は広正を更迭して尾張に呼び戻し、代わりに佐久間盛政を討伐に向かわせたのである。