18きっぷ改悪の陰に「転売」「偽造」問題 一部の不心得者のせいで多くの利用者に皺寄せが…
冬季より大幅な変更が加えられて使いにくくになることで、「改悪」と騒がれている青春18きっぷ。今回の変更で、任意の5日間を指定して各日に利用開始する方式から、購入時に利用開始日を指定して連続3日間または連続5日間利用するという方式になる。一方で、磁気券化で自動改札機対応となり、改札通過時に待たされることがなくなるという改善点もあるわけだが、トータルで見ると、不便になった点が多いだろう。
「連続化」は、現在のシステムでは磁気券で利用開始日を任意に指定するのが難しいことによるものだが、なぜJR各社はきっぷを不便にしてまで磁気券化を実施したのであろうか。
理由の一つとしては、有人改札の減少が挙げられる。人手不足等により都市部の利用の多い駅ですら無人の改札が増えた現在、自動改札機に対応していないきっぷは駅員にとっても旅客にとってもありがたくない存在と言えよう。
次に考えられるのは「転売対策」だ。18きっぷの仕様変更が発表される二日前、10月22日の神戸新聞は「電車乗り放題券の転売問題」を報じていた。この記事自体は、山陽電鉄の「1Dayチケット」が使用後に金券ショップに転売される問題を取り扱ったものであったが、その記事の末尾に気になる一文があったのだ。
当たり前のように金券ショップでの転売が行われている青春18きっぷだが、規約では転売が禁止されている。転売が横行する現状に業を煮やしたJRが、転売しにくいよう連続化したとも考えられる。今回の「改悪」を受けて、さっそく18きっぷの買取中止を発表した金券ショップもあるが、JRからすれば狙い通りといったところだろうか。
もう一つ考えられるのが「偽造対策」だ。令和3(2021)年3月には、青春18きっぷをパソコンで偽造して無賃乗車をした元国交省鉄道局鉄道事業課の課長補佐の男に、懲役1年執行猶予3年の有罪判決が下されている。この男は「自動改札機を通さない青春18きっぷなら偽造できると思った」と供述していた。自動改札機を通す磁気券であれば、自動改札機に真贋を判断されてすぐに見抜かれるが、駅員に一瞬見せるだけの18きっぷであれば、巧妙に偽造すればバレにくいという、きっぷの特質を突いた偽造事件だったのだ。
18きっぷの偽造を行っていた不心得者は他にもいると思われ、過去には偽造券がフリマアプリに出品された事件もあった。
JRのきっぷの偽造品がフリマアプリで出品されているので注意が必要 -Togetter
これらの偽造事件を受けてJRが18きっぷを偽造しにくい磁気券に切り替えたのであろうことは想像に難くない。大半の利用者が規約を守ってきっぷを使っていたとしても、規約を守らない一部の不心得者のせいで、他の利用者に皺寄せが行くような対策が行われてしまった。一部の撮り鉄の迷惑行為によって撮影禁止の場所が増えてしまうのと、構図としては一緒だ。
きっぷの偽造については「有価証券偽造等罪」に問えるものの、転売については今のところ取り締まる法律がない。18きっぷ以外にも、臨時列車のきっぷや限定グッズの転売も問題視されており、それらを取り締まるためにも、有効な法律の制定が待たれるところだ。
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