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新入社員に「やれっ!」50代マネジャーが放った言葉に賞賛の嵐のなぜ?

横山信弘経営コラムニスト
効率化ばかり考える新入社員(写真:アフロ)

「いいから、やりなさい」

「やりなさい、という言い方はないでしょう」

「もういい! やれっ!」

ついに堪忍袋の緒が切れた。営業部長(50歳)が新入社員に向かって声を荒らげたのだ。

「やれっ! は言い過ぎたかもしれない」

とこの部長は後悔したが、3人の課長どころかアシスタントたち、そして同期入社の他の新入社員たちもその言い方を賞賛した。

「部長、よくぞ言ってくれました」

「あれぐらい言わないと、本人のためになりませんよ」

いったい何があったのか?

昨今は極端にまでラクしようとする若者が増えている。そこには「働き方改革」「ワークライフバランス」といった言葉が世間に浸透してきた背景がある。そのせいで「効率」の意味を理解できていない若者が増えているのだ。

そこで今回は、「効果」と「効率」の言葉の違いを解説していこう。効率化を進め過ぎて本来の仕事の成果が出なくなった、部下の成長が止まってしまったと悩んでいるマネジャーに向けて書いた。ぜひ最後まで読んでいただきたい。

■「効果」と「効率」の違いが分からない人たち

近年やたらと「生産性向上」「効率化」という言葉を耳にするようになった。新年の挨拶でも、

「今年はもっと生産性の高い仕事をしよう」

といった話をする経営者、マネジャーは多いことだろう。残業を減らし、ワークライフバランスを重視する時代になったからだ。しかしその結果、本来達成すべき目標を見失い、単に時間短縮のみを追求する傾向が目立つようになったことも事実だ。

もちろん効率化は大切。しかし、それ以前に効果を出さなければならない。それが前提だ。

私どもコンサルタントはよく「効果効率的に~」と表現するが、その理由は明白だ。まずは効果を出すことが先だからである。「効率効果的に~」とは決して言わない。

効率を先に考えると、仕事がメチャクチャになるからだ。

■効果とは何か?

まず効果について説明しよう。

効果とは、期待した成果が実際に得られることを指す。たとえば営業の場合、目標の売上が500万円で、その売上目標を達成するために【100】の営業活動をしたとしよう。それで達成できたのであれば、その【100】の営業活動は効果があった、と言える。

反対に、【100】の営業活動ではなく、もっと短時間の営業活動でも目標が達成できると考え、【80】の営業活動をしたとしても、売上が目標の500万に達することなく、480万で終わったのなら、その【80】の営業活動は効果がなかった、ということになる。

あと20万で達成だったから、惜しかったとか、そういう問題ではない。期待した成果が出なかったことは明らかなのだから、ダメなものはダメである。

資格試験でたとえれば、分かりやすいか。合格基準に1点でも足りなければ、不合格だ。だから、どんなに努力をしようとも、それまでに費やした勉強は効果的でなかった、と判断すべきである。

■効率とは何か?

次に効率について説明しよう。

効率とは、投入したリソース(時間や労力、お金等)に対してどれだけの成果が得られたかを示す。先ほどの例で言えば、【100】時間かけて500万円の売上を達成するよりも、【80】の時間で500万円を達成したほうが効率的だ。

ただし、この場合の効率は、効果が大前提。投入した営業活動の時間が【100】よりも【80】と減らしておいて、450万円とか480万円しか売上が出なければ、効率的とは言えない。目標を達成していないからだ。

製造工程で考えたら、分かりやすいか。【9】の工程を経て製品が完成するパターンがあったとしよう。しかしその工程を効率化したいと考え、工程の数を【8】に減らしたとする。しかし、それで製品が完成しなかったら、「効率化した」と呼ばない。それと同じだ。

■効率の中には効果が含まれている

重要なポイントは、効率の中には効果が含まれているという点だ。つまり効率を語る前に、まず効果を出さなければならない。

効果的でなければよい、というのであれば、いくらでも投入リソースを減らせばいい。

資格試験を合格しなくてもいいのなら、どれだけでも勉強時間を減らせる。製造工程のケースでもそうだ。【9】の工程を【1】に減らしたっていい。製品が完成しなくてもいいのなら、いくらでも工程を減らせる。

売上目標の達成も一緒だ。目標を達成しなくてもいいのなら、極端な話、営業時間を【100】から【10】に減らしてもいいだろう。実際、ひとりの営業が会社を辞めても、それほど売上実績が変わらない会社はいくらでもある。

したがって、単に時間や労力といったリソースを減らすだけでは意味がない。

冒頭の新入社員は、極端にリソースを減らして「効率化した」と言い続けた社員だった。

売上目標を達成させるための営業活動は、同期の新入社員と比べても半分以下。お客様から問合せがあっても放っておき、平気で定時に帰宅。クレームがあっても「労働時間を減らしたい」「そんなに労力をかけても、やりがいを覚えない」と言って対応しないので、結局はアシスタントや他の新入社員たちが対応に追われるはめになった。

直属の上司である課長が手をこまねいている間に、職場内に不満が噴出していた。だから50代の部長が「やることやれ!」と迫ったのである。

この新入社員はしばらく抵抗していたが、粘り強く「効果」と「効率」の違いを説明したところ、少しずつ態度を改善しはじめた。

■まとめ

効果なくして効率化なし、である。

効率化は重要だが、それは効果が大前提。単なる時間短縮や省力化だけを追求しても意味はない。まずは期待される成果を出すことに注力し、その上で効率を考えるという順序を守るべきだ。効率を語る前に、効果を出すことが先決だ。

<参考になる動画>

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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