イギリス国防省、自律型戦闘用UAV「ロイヤル・ウイングマン」の技術実証機「モスキート」計画中止を発表
イギリス国防省はこのほど、有人戦闘機と連携して任務を遂行する無人戦闘機の技術実証機「モスキート」の計画中止を発表した。
イギリス国防省は発表文の中で、イギリス空軍で戦闘機の新技術開発などを担当する緊急能力局(RCO)と国防科学技術研究所がモスキートの評価分析を行った結果、より小型で安価な代替機を通じて、「より有益な能力と高い費用対効果の達成が可能であると結論付けた」と述べた。
モスキートは、各国が研究開発を活発化させている自律型戦闘用UAV(無人航空機)「ロイヤル・ウイングマン」(忠実な僚機)のイギリス版のプロトタイプとなるはずだった。
RCOと国防科学技術研究所は、戦闘機を支援して攻撃に参加する軽量で安価なUAVの有用性と実現性を探るため、プロジェクト「LANCA(Lightweight Affordable Novel Combat Aircraft)」を進めてきた。
LANCAプロジェクトには、モスキートの開発が含まれてきた。イギリス国防省は2021年1月、アメリカのスピリット・エアロシステムズを主契約社として、ノースロップ・グラマンなどが加わった「チーム・モスキート」に3000万ポンド(当時4100万ドル)の試作機の製造契約を与えていた。
モスキートは、現行のイギリスの主力戦闘機「ユーロファイター・タイフーン」の後継機となるテンペストが中核となる「将来航空戦闘システム(FCAS)」の一環として開発されてきた。ユーロファイターとF35とも協働させる目的で、2023年中に初飛行が予定されていた。しかし、それは今では叶わぬこととなった。
イギリスの軍事週刊誌ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーは27日、イギリスはモスキートの代わりに、オーストラリアとボーイングが共同開発したUAV「MQ-28A Ghost Bat(ゴーストバット)」がイギリスの今後のロイヤル・ウイングマンの基盤になり得ると報じた。イギリスはかつてMQ-28A開発にオブザーバー参加した経緯がある。MQ-28Aは2021年2月に初飛行を終え、モスキートよりも計画が進んできた。
なお、イギリスはテンペストの2035年までの実戦配備を目指している。航空自衛隊のF2戦闘機の後継となる次期戦闘機と同じスケジュールでもあり、日英の連携が強まっている。このため、FCASやテンペスト開発計画の動向は、日本にとっても目が離せないものとなっている。また、日本も、次期戦闘機との連携を目指す無人機の開発を始めており、アメリカと協力の可能性を探っていくことで合意している。
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