2025年度防衛予算案、海自艦載型UAVとして米シールドAI社の「V-BAT」6機を40億円で取得へ
政府は12月27日、過去最大の8兆7005億円に及ぶ2025年度防衛予算案を閣議決定した。このうち、海上自衛隊水上艦艇の警戒監視と情報収集能力を向上させるため、艦載型無人航空機(UAV)として米航空宇宙・防衛技術企業シールドAIの「V-BAT」6機を40億円で取得する。2022年12月に閣議決定された「防衛力整備計画」に基づき、今後約10年で12隻を取得する予定の海自哨戒艦に搭載される。
V-BATは、艦艇の飛行甲板からも垂直離着陸(VTOL)ができる無人航空システム(UAS)だ。同社ホームページによると、全長9フィート(2.7メートル)、翼幅9.7フィート(3メートル)、燃料と積載量を合わせた総重量は125ポンド(56.7キロ)、航続時間10時間などとなっている。
同社は「独自の設計と制御により、強風下、混雑した飛行甲板で着陸ゾーンが12フィート x 12フィート(3.7メートル x 3.7メートル)ほどの動いている船舶でも離着陸が可能」と説明する。
10月31日付のウォール・ストリート・ジャーナルの記事によると、V-BATには、AIソフトウエアやセンサー、米エヌビディア製の半導体が搭載されている。この技術により、遠隔操縦者や全地球測位システム(GPS)がなくても自律的に動き、戦場を偵察し、標的を特定できる。12時間または約970キロメートル飛行でき、約11キログラムの爆薬を運んで標的に向けて投下できるとされる。
V-BATは、2023年5月に米国防総省から正式に「MQ-35A」と指定された。もともとはシールドAIが2021年7月に買収したマーティンUAVが開発していた。
シールドAIは2015年に、社長で元米海軍特殊部隊シールズ(SEALs)隊員のブランドン・ツェン氏と、兄で最高経営責任者(CEO)のライアン氏らが米カリフォルニア州サンディエゴで創業したスタートアップ企業だ。会社名にAI(人工知能)が入っているように、AIと自律飛行システムを組み合わせた次世代の防衛技術を開発している。AIパイロットも開発している。
同社はV-BATをウクライナでもテストした。当初は主に米海軍で使用されてきたが、徐々に米国の防衛分野に食い込み始め、陸軍や海兵隊、沿岸警備隊でも使用されている。
WSJの記事によると、シールドAIの2023年の売上高は1億6300万ドル(約248億円)と、前年の約2倍に増加した。この大半を米国をはじめとする北大西洋条約機構(NATO)各国との契約が占めた。
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