Yahoo!ニュース

三菱重工、ドローンを撃墜する高出力レーザー装置の実物初公開 #DSEI2023

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
三菱重工業が公開した高出力レーザー装置(左)と撃墜されたドローン(高橋浩祐撮影)

三菱重工業は、15日に開幕した日本最大の防衛装備品の見本市「DSEI JAPAN」で1.2キロ先のドローンを迎撃できる高出力レーザー装置の実物を初めて公開した。ウクライナ戦争で様々なドローンが実戦投入され、戦場のあり方を大きく変えている中、「DSEI JAPAN」ではこのレーザー装置を含め、無人機関連の展示が注目を集めている。

三菱重工業の担当者によると、この高出力レーザー装置は車両搭載型で社内で研究が重ねられてきた。過去2年ほど鹿児島県の種子島で実証試験を繰り返してきたという。10kW(キロワット)の出力で1.2キロ先のドローンを撃ち落とすシーンが映像に収められている。

レーザーのようなエネルギーを目標に照射して破壊する「指向性エネルギー兵器」(DEW)は軍事防衛上、コスト面で大きなメリットがあるとされる。例えば、イージス艦に搭載する迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」は1発あたり約40億円かかる。これに対し、レーザー兵器が1回照射するのには電気代の数百円程度とされる。電力が続く限りミサイルや弾薬の心配もない。

三菱重工業は社内研究を踏まえ、2021年11月に防衛装備庁と「車両搭載高出力レーザ実証装置の研究試作」の受注を契約した。契約額は8億2500万円だった。

装輪装甲車に搭載された三菱重工業の高出力レーザー装置の試作品(高橋浩祐撮影)
装輪装甲車に搭載された三菱重工業の高出力レーザー装置の試作品(高橋浩祐撮影)

防衛省は2021年度予算で、車載レーザーシステムの実証費用として28億円を計上した。同省は「将来の経空脅威への効率的な対処が見込まれる高出力レーザーについて、現在継続中の高出力レーザーシステムの研究の成果を活用し、レーザーシステムの車載化を実証」すると説明している。

(関連記事)

高出力レーザーシステムの課題と今後のロードマップとは? 防衛装備庁が明かす

日本の極超音速巡航ミサイルの模型が公開(動画付き)

日英伊共同開発の次期戦闘機の模型が初公開(動画付き)

ウクライナ戦争で注目浴びるトルコ製無人機、クウェートが28カ国目の契約 日本も試験導入へ

イージス・アショアが事実上の白紙撤回――「ミサイル迎撃は常に不利」米軍幹部が警告

中国、初の「ドローン母艦」就役

米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

高橋浩祐の最近の記事