来年度防衛予算、いずも型護衛艦の軽空母化改修に18億円 「いずも」と「かが」の改造にいくら費やした?
政府は12月27日、8兆7005億円に及ぶ2025年度防衛予算案を閣議決定した。前年比では9.4%も増えた。11年連続で過去最高となった。
●いずも型護衛艦の改修に18億円
このうち、海上自衛隊史上最大の艦艇であるいずも型ヘリコプター搭載護衛艦が短距離離陸と垂直着陸が可能なステルス戦闘機F35Bを搭載できるようにするための改修費用として、来年度予算では約18億円が計上された。具体的には、いずも型護衛艦1番艦「いずも」の改修が終わるまでに必要な電源監視制御盤などの工事費用が確保された。また、今年3月末に艦首を矩形(くけい)に改修する1回目の大規模工事を終えたばかりの2番艦「かが」の2回目の改修に向け、艦船用慣性航法装置(INS)も約18億円の中に盛り込まれた。
防衛省によると、F35B搭載に向けたいずも型護衛艦改修費としては、これまでに2020年度に31億円、2021年度に203億円、2022年度に61億円、2023年度に52億円、2024年度に424億円がそれぞれ計上され、2025年度の18億円を合算すれば総額で約789億円に及ぶ。
「いずも」と「かが」の改修は、5年に一度実施される大規模な定期検査を利用して、それぞれ2回にわたって行われている。防衛省と海上自衛隊はこの改修工事を「特別改造工事」と名付けている。一方、筆者はいずも型護衛艦の大きさなどに照らし、「軽空母化改修」と呼んでいる。満載排水量約2万6000トンのいずも型は、イタリア海軍の軽空母カヴール(2万7000トン)と同じクラスだ。また、全長248メートルのいずも型は甲板の長さでは、アメリカ海軍のワスプ級強襲揚陸艦(全長257メートル)と同じサイズだ。
●「いずも」は今年度から艦首改造に着手
海自横須賀基地を母港とする「いずも」の1回目の改修は2021年6月にジャパンマリンユナイテッド横浜事業所磯子工場で終了した。具体的には、特殊な塗装などによる飛行甲板の耐熱処理工事や誘導灯の設置などが行われた。飛行甲板には艦首から艦尾まで1本の黄色い標示線(トラムライン)も引かれた。
2回目の改修が始まる今年度予算では約421億円を計上した。内訳は艦首を矩形に変更するための本体改造費に409億円、着艦誘導装置に6億円などとなっている。
いずも型護衛艦のもともとの艦首は台形。海上幕僚監部によると、細い先端部分での乱気流を抑えてF35Bを安全に運用するために、甲板を横に付け足して矩形にすることが必要となっている。
前述の通り、来年度予算では電源監視制御盤など工事費用を要求したが、これは「いずも」の2回目改修が終わるまでに必要なものになるという。
●「かが」の2回目改修は2026年度から実施
海自呉基地を母港とする「かが」は2021年度末から広島県呉市のJMU呉事業所で1回目の改修が始まった。そして、「いずも」に先駆けて艦首が矩形に改修され、前甲板部分が以前と大きく変わった姿で昨年4月20日に初めてドックを出た。
●「いずも」は2027年度、「かが」は2028年度に改修完了
「いずも」の軽空母化改修は2027(令和9)年度中にすべて終了する予定だ。それまでの今後3年間は同工場でドック入りしたままになる。
一方、「かが」の2回目の改修は2026年度から実施され、2028年度にすべての改修が終わる予定だ。
つまり、2026、2027両年度は海上自衛隊最大の艦艇であるいずも型護衛艦2隻が改修のため、ともにドック入りしていることになる。日本の海上防衛は大丈夫か。
この点について、海上幕僚監部広報室は「その間は海上自衛隊が保有する他の艦艇等の運用を調整することで、海上防衛への影響を極限させることとしている」などと回答した。
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●2025年度は3機のF35Bを取得へ
防衛省は来年度予算で、「いずも」と「かが」に搭載するF35Bの3機の取得費665億円を計上した。航空自衛隊はこれまでにF35Bの取得費として2020年度に6機793億円、2021年度に2機259億円、2022年度に4機510億円、2023年度に8機1435億円、2024年度に7機1282億円をそれぞれ計上した。空自は計42機のF35Bを導入する計画で、初号機は2024年度末までに配備される予定だ。
防衛省は、F35Bの国内配備先としては宮崎県新富町にある空自新田原基地を計画している。当初は2024年12月に同基地に「臨時F35B飛行隊」(仮称)が新設される予定だったが、それが遅延して今年度中の新編が見込まれている。
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