日英、次期戦闘機の高性能センサーシステムを共同開発
日英両政府は2月15日、協定書を結び、次期戦闘機向けの高性能センサーシステムを共同開発すると発表した。
日英が共同開発するのは、両国双方の次期戦闘機用の次世代RF(電波)センサーシステム「ジャガー(JAGUAR:Japan and Great Britain Universal Advanced RF system)」。次期戦闘機が陸海空から出現する将来的な脅威を発見したり、素早く正確に標的を特定したり、敵の監視技術を無効にしたりする能力を向上させるため、ジャガーレーダー技術の共同開発を推し進める。次期戦闘機には、より広範囲で長距離のサーチ能力が求められている。
防衛装備庁は「本共同研究は、多数の受信ビームを同時に形成することで広範囲を瞬時に探索することを可能とするもの」と強調、このような航空機搭載用レーダーシステム技術は他国でも実用例がなく、将来的に戦闘機の索敵能力を大幅に向上させることが期待されると述べている。
イギリス国防省によると、このジャガーシステムを設計、構築、評価するのに約5年がかかる見込みで、イタリア防衛大手レオナルドの英国法人と日本企業が参加する。2つの実証機が両国それぞれで造られ、両国の専門技術を最大限に高めるよう共有作業を実施する方針。このプロジェクトは4月に始まる。
イギリス国防省は「ジャガーは英国全体で75人の雇用を生み、そのうち40人はレオナルド社エディンバラ工場での高度な技術を要するエンジニアリングの職となる」と雇用創出効果を強調している。
日英両政府とも、このジャガー計画にどれほどの予算を充てるかについては明らかにしていない。また、イギリス国防省はレオナルドの英国法人が参加することを明らかにしたが、日本の防衛省はどの日本企業が参画するかを明らかにしていない。
日本は、航空自衛隊が保有するF2戦闘機の後継機を国産主導で開発し、F2退役が見込まれる2035年頃からの配備開始を目指している。防衛省は2020年10月、開発主体のプライム企業として三菱重工業と契約。同年12月には同社が全体を統括し、共同でエンジン、機体、レーダーなどの開発を進める国内8社の共同開発体制を構築した。具体的には三菱重工業に加え、IHI、川崎重工業、SUBARU、東芝、NEC、富士通、三菱電機が開発チームに加わった。
また、防衛省は米軍とのインターオペラビリティ(相互運用性)の重要性を強調し、2020年12月には米ロッキード・マーチンをインテグレーション(統合)支援の候補企業に選定した。
一方、英国は現行の主力戦闘機「ユーロファイター・タイフーン」の後継として、次期戦闘機「テンペスト」の2035年までの実戦配備を目指している。これは日本の次期戦闘機と同じスケジュールでもあり、日本は英国との連携を進めてきた。事実上、日本主導の日米共同開発に英国が加わった格好だ。
昨年12月22日には、日英両政府が次期戦闘機用エンジン実証機を日本のIHIと英ロールス・ロイスが共同開発すると発表した。また、防衛省は2021年度にも予算41億円を投じ、次期戦闘機用の高機能レーダー技術についての日英共同研究を新規事業として実施した。このほか、日英両国は、F35戦闘機に搭載する新たな中距離空対空ミサイル「JNAAM」の共同研究も進めてきた。2022年度防衛予算では、このJNAAM試作品の空中発射試験の準備費用として3億5000万円を計上する。
次世代RFセンサーシステム「ジャガー」については、2018年3月に防衛省とイギリス国防省がその実現可能性にかかわる共同研究に関する取り決めを締結した。そして、2021年2月に行われた日英外務・防衛閣僚会合「2プラス2」の第4回会合で、4大臣がジャガーの共同研究の進捗を歓迎した。
この「2プラス2」会合では、4大臣はさらにJNAAMの実証に関連する共同研究についての重要性を強調したほか、人員脆弱性評価にかかわる共同研究も2020年に成功裏に完了したと発表している。
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