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日本の極超音速巡航ミサイルの模型が公開(動画付き)#DSEI2023

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
防衛装備庁担当者が模型を使って説明した「極超音速巡航ミサイル」の模型(筆者撮影)

防衛装備庁が開発する極超音速巡航ミサイル(HCM)の模型が、千葉・幕張メッセで開催中の日本最大の防衛装備品の見本市「DSEI JAPAN」で公開された。防衛装備庁担当者が模型を使って会場で説明した。防衛装備庁担当者がこうした対面式の展示会会場で極超音速ミサイルについて模型で直接説明するのは珍しい。

極超音速ミサイルとは音速の5倍以上の速さで飛ぶミサイルのことだ。エンジンがある極超音速巡航ミサイル(HCM)と、打ち上げられた後に滑空するだけの極超音速滑空体(HGV)の2種類がある。日本は両者の開発を目指す。いずれも変則的軌道で、近づいてくるまではレーダーで捉えにくい高度数十キロの低空を飛行する。

「DSEI JAPAN」で公開されているのは前者の極超音速巡航ミサイルの模型だ。2030年の配備を目指す。一方、後者の極超音速滑空体は、防衛省が「島嶼(とうしょ)防衛用高速滑空弾」との名称で、島嶼防衛を目的に2018年度から研究に着手した地対地ミサイルだ。ロケットモーターで飛び、高速で滑空しながら目標を狙う。島嶼防衛用とうたうが、事実上の極超音速滑空飛翔体(HVGP)であり、反撃能力(敵基地攻撃能力)にもなりうる。この極超音速滑空飛翔体の初期型は2026年度の早期装備化を目指している。

防衛省は2022年7月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の内之浦宇宙空間観測所で、JAXAとタッグを組んで極超音速に到達可能な「スクラムジェットエンジン」の燃焼飛行試験を実施し、成功した。開発に必要なデータを取得した。この試験は、防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」による受託研究の一環で、同庁が研究費約18億円を提供した。

核弾頭を搭載でき、迎撃がより難しい極超音速ミサイルの新型兵器の開発は、中露朝が先行する。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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