Yahoo!ニュース

「ABCフェイクニュース全員と司会者はクビにすべきだ」 討論会で敗北したトランプ氏が“怒りの投稿”

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 全米が、そして世界が注目したドナルド・トランプ氏とカマラ・ハリス氏による初のテレビ討論会。軍配はハリス氏に上がった。

 米ヤフーニュースが、討論会直後に行った世論調査によると、回答者の69%がハリス氏に軍配を上げた。米CNNの世論調査でも、回答者の63%がハリス氏が勝ったと回答している。どの大統領候補を支持するのか注目されていたテイラー・スウィフトさんも、討論会後、ハリス氏支持を表明。ハリス陣営は勢いづき、支持率もリードを広げている。

ABCフェイクニュース全員と司会者はクビにすべき

 討論会では「勝った」と豪語しているトランプ氏だが、討論会を主催したABCテレビに対して激怒しているようだ。トランプ氏はFoxテレビで、討論会で「不正な取引」に直面し、「司会者は自身の発言はすべて訂正したが、ハリス氏の発言は訂正しなかった」と不満を述べた。そして、司会者がなぜハリス氏の発言を訂正しなかったと思うのかと問われると、トランプ氏は「彼らが不誠実だからだ」と答えた。さらに、討論会を主催したABCテレビの放送ライセンスを取り消すよう訴えた。

「彼らは報道機関だ。報道するにはライセンスが必要だ。このようなやり方をしたため、彼らのライセンスを取り消すべきだ」

 また、自身が運営するウェブサイト“トゥルース・ソーシャル”では、討論会の司会をした2人の司会者とABCで働く全員を解雇すべきだと“怒りの投稿”もしている。

「ABCフェイクニュースの全員を解雇すべきだ。2人のつまらない『アンカー』は同社に恥をかかせた」

ABCニュースと司会者をクビにすべきと、トランプ氏が“怒りの投稿”。
ABCニュースと司会者をクビにすべきと、トランプ氏が“怒りの投稿”。

ハリス氏は表情勝ち

 トランプ氏はやはり自身がした「スプリングフィールドでは、移民は犬を食べている。猫を食べている。そこに住む人々のペットを食べている」との発言が嘲笑され、司会者に「そのような事実はない」と正されたことを怒っているのだろう。

 実際、“X”では、トランプ氏のこの発言に対し、ハリス氏が呆れと驚きと憐れみが入り混じった笑いをトランプ氏に投げかけたシーンが注目されている。それは、ハリス氏は「あなた、何言っているの? 冗談でしょ?」とでも言わんばかりの表情だった。

 実際、この討論会では、ハリス氏は検察官時代に培ったディベート力でトランプ氏を弁舌爽やかに攻めたが、表情においても、上手にトランプ氏を攻め立てていたと思う。まさに、顔は口ほどに物を言う、である。感じたことを表情に出したハリス氏は人間らしさを感じさせ、親近感も感じさせた。一方、トランプ氏の方は、終始、険しい表情で笑顔を覗かせなかった。ハリス氏は明らかに“表情勝ち”していた。

「移民が犬を食べている」発言への反応

 “X”では、“They’re eating dogs”というワードがトレンディングになった。この発言に対しては様々なコメントが上がり、中には、トランプ氏のメンタルの衰えを指摘する声もある。

「これは、トランプ氏が、自身のメンタルが急速に衰弱していることを疑いもなく示した瞬間だ」

 トランプ氏はバイデン氏の認知能力を批判してきたが、どうやら、今度は、自身が批判される番になってしまったようだ。

 トランプ氏は今回の討論会で、バイデン氏のことを「史上最悪の大統領」と呼び、ハリス氏のことを「史上最悪の副大統領」と呼んでなじったが、その言葉尻をとってか、「これは史上最悪の討論会の一つとして記録されることだろう」とコメントする者もいる。

 トランプ氏が大統領にふさわしいとは思えないという声もある。

「『スプリングフィールドでは犬が食べられている』と叫ぶ日焼け止めを塗った怒ったおじいさんが、アメリカの大統領だったらいいのになんて思えないね」

 ハリス氏の表情がトランプ氏の嘘を物語っているという指摘もある。

「トランプの『奴らは犬を食べている!』という主張に対するカマラ氏の表情は、“この男を真に受けてはいけない”という完璧な教訓を与えている。トランプの言うことはまったくの嘘っぱちだ」

 ペットを食べていることが議論されている米国を皮肉る声もある。

「ペットを食べていることが、米国の選挙の争点になっているよ。あざ笑ってはダメだよ」

笑ったハリス氏を悪人視する声も

 トランプ氏の発言に対し、笑ったハリス氏を悪人視する向きもある。

「カマラはなぜ、人々のペットが殺されていることを面白いと思うのか? 根っから性悪だ」

 トランプ氏の発言に対して笑いで反応したハリス氏は女性のステレオタイプとする、差別的な声もある。

「勝ちたいなら、ハリスは顔で反応しないように訓練する必要がある。これは女性のステレオタイプを助長するものであり、さらに重要なことに、まだ投票先を決めていない有権者を怒らせる危険性がある」

 大統領選の投票日まで、残すところ、あと2ヶ月足らず。批判を糧にするトランプ氏なので、討論会の敗北で同氏がパワーアップする可能性もある。大統領選の終盤戦から目が離せない。

(米大統領選関連記事)

「オーラルセックスがハリス氏のキャリアに影響を与えた」 トランプ氏がシェアしたヤバい投稿 米大統領選

トランプ氏とハリス氏が指名受諾演説で主張した“同じこと”とは? 米大統領選 #専門家のまとめ

「私はカマラよりずっといいルックスだ」トランプ氏が容姿でハリス氏を個人攻撃 米大統領選はミス・コンか

トランプ氏の命を救ったのは、皮肉にもバイデン氏? 指名受諾演説から見えた本当のところ

「トランプ氏はたった今勝った」との投稿、Xで多数 今やヒーローか トランプ氏暗殺未遂事件

「トランプは独裁者になれる頭ではない。バイデンは中露に平手打ちされた」超タカ派ボルトン元大統領補佐官

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

飯塚真紀子の最近の記事