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「オーラルセックスがハリス氏のキャリアに影響を与えた」 トランプ氏がシェアしたヤバい投稿 米大統領選

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
トランプ氏のハリス氏に対する個人攻撃は、セクシュアルな攻撃に発展している。(写真:ロイター/アフロ)

 9月10日、いよいよ、カマラ・ハリス氏とドナルド・トランプ氏による初のテレビ討論会が開催される。開催直前の世論調査によると、両者の支持率は拮抗している。リアル・クリア・ポリティクスの9月8日時点での支持率によると、ハリス氏が48.4%、トランプ氏は47.2%とハリス氏が1.2ポイントリード。激戦州7州を見ると、ハリス氏はミシガン州、ネバダ州、ウィスコンシン州でリードする一方、トランプ氏はジョージア州、アリゾナ州、ノースカロライナ州でリードし、ペンシルベニア州では両者は引き分けという状況だ。

45歳未満の女性層は中絶問題が最重要課題

 もっとも、ABCニュース/イプソスが9月に発表した調査によると、女性の支持率においては、ハリス氏がトランプ氏を54%対41%で上回っており、先月末の民主党全国大会以来7ポイント上昇している。アメリカの有権者が投票する上で重視している国内的な問題としては、大きく、経済・インフレ問題、移民問題、中絶問題に分けられるが、NYタイムズとシエナカレッジが8月に行った世論調査によると、45歳未満の女性層においては、中絶問題が経済問題を上回る最重要課題となっている。これは、郊外に住む女性の大多数が中絶する権利へのアクセスを支持していることを示唆しているが、トランプ氏が勝利した2016年の大統領選では、郊外に住む女性層の支持が勝利の鍵の一つとなったことを考えると、トランプ氏としては今回の選挙でも彼女たちの支持を獲得したいところだろう。トランプ氏が体外受精の費用を政府か保険会社が負担すると息巻いたのはその表れだ。

“オーラルセックス投稿”をシェア

 しかし、トランプ氏が本当に女性たちをリスペクトしているのかというと、そこはやはり疑問だ。トランプ氏は、8月28日、非常に性差別的な投稿を、自身のウェブサイト「トゥルース・ソーシャル」でシェアしていたことがそれを示している。トランプ氏がシェアした問題の投稿とは、ハリス氏とヒラリー・クリントン氏の2ショット画像だが、それに添えられているコメントがこれ。

「オーラルセックス(blowjobs)が、2人のキャリアに異なる影響を与えたのは面白い」

トランプ氏がシェアした性差別的な問題の投稿。
トランプ氏がシェアした性差別的な問題の投稿。

 ハリス氏は、1990年代半ば、サンフランシスコ元市長のウィリー・ブラウン氏と不倫関係にあったと言われており、右派は、その関係がハリス氏の政界進出を後押ししたと批判している。また、ヒラリー氏の場合、夫ビル・クリントン氏が大統領時代、ホワイトハウスでインターンとして働いていたモニカ・ルインスキーさんと不適切な関係を持ち、オーラルセックスをしていたことも弾劾裁判で明らかにされた。つまり、問題の投稿は、ハリス氏もヒラリー氏も背後にセックス絡みのスキャンダルがあったことを示唆している。

 CNNのニュースキャスター、アンダーソン・クーパー氏は、この投稿について「下品で性差別的で女性蔑視的だ」としながらも「しかし、トランプ氏らしい」と評している。確かに、性差別で知られるトランプ氏なので、トランプ氏がこのような投稿をシェアしたとしても驚くことではないが、女性にとっては気持ちのいいものではない。女性有権者にもネガティブな影響を与えるだろう。

トランプ氏による性差別的なハリス氏攻撃

トランプ氏がハリス氏を性的に攻撃するのはこれが初めてではない。ニューヨーク・タイムズによると、8月18日には、右系のインターネットコンテンツ制作集団が作った性的な動画をシェアしていた。その動画は、ハリス氏を「モロニック(愚か)」と批判するために、アラニス・モリセットの「アイロニック」という曲をパロディ化しており、動画の中では、シンガーがハリス氏は「一生ひざまずいて過ごした」と言及し、ブラウン氏の写真が映し出されているというが、これもオーラルセックスを示唆しているようだ。

 また、ニューヨーク・タイムズは、トランプ氏がハリス氏のことを、1度ならず、“ビッチ(性悪女)”と呼んだと報じている。さらに、同紙は、右派のラジオ司会者ラッシュ・リンボー氏が保守系ウェブサイトの発言を引用しつつ、「ハリス氏は寝て、出世した」と示唆し、トランプ氏の支持者たちは「ジョーと売春婦」というスローガンが書かれたTシャツを着るようになったとも指摘している。

 FOXテレビのインタビューでも、トランプ氏は、ハリス氏はその容姿のせいで世界の指導者たちにオモチャにされるという性的な攻撃もしている。

「ハリス氏はオモチャにされるだろう。彼らはハリス氏を見て『自分たちがこんなにラッキーだなんて信じられない』と言うだろう。彼らはハリス氏をいいようにするだろう」

ハリス氏は“大人の対応”

 勢いをつけたハリス氏に対する個人攻撃が、遂には、性的な攻撃にまで発展してしまったのは、トランプ氏の焦りの表れだろう。もっとも、ハリス陣営は個人攻撃を無視する“大人の対応”を取っている。子供っぽい大統領候補には好き勝手に言わせておけ、といったスタンスなのだろう。

 実際、先日行われたCNNのインタビューでも、ハリス氏は、トランプ氏が同氏の人種的アイデンティティーについて言及したことを問われた際、「いつもの陳腐な手法です。次の質問をお願いします」とだけ言って一蹴している。

 テレビ討論会では、トランプ氏は得意の個人攻撃を行うのか? そして、個人攻撃に出た場合、ハリス氏は検査官時代に培ったディベート力でどのように切り返すのか? そんな点も注目したいところだ。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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