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「私はカマラよりずっといいルックスだ」トランプ氏が容姿でハリス氏を個人攻撃 米大統領選はミス・コンか

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
トランプ氏はハリス氏よりルックスがいい?(写真:ロイター/アフロ)

 米大統領選はまるでミス・コンのような様相を見せ始めている。

 ハリス氏に対する個人攻撃を続けているトランプ氏が、8月17日、激戦州の一つであるペンシルベニア州で行われた選挙集会で、容姿にフォーカスして、ハリス氏を個人攻撃した。

「私の方がずっといいルックスだ。私はカマラよりルックスがいい人間だ」

カマラよりずっとルックスがいい

 この発言は、ハリス氏のイラストがタイム誌の表紙に掲載されたことに端を発している。トランプ氏は同誌にハリス氏のイラストが掲載されていたことについて、「タイム誌は彼女の写真を持っていないのだ。彼らには彼女の絵を描く素晴らしいアーティストがいるのだ」と皮肉り、ハリス氏のイラストについて、女優のソフィア・ローレンかエリザベス・テイラーかと思ったとけなした。

「あれはソフィア・ローレンか?  誰だろう?  エリザベス・テイラーか? ああ、彼らは素晴らしく美しいソフィア・ローレンの偉大な人生と時代を祝っているに違いない」

 そして、あるコラムニストが「カマラには大きなアドバンテージがある。彼女はとても美しい女性だということだ」と書いたことについて、「私はカマラよりずっとルックスがいい」と得意の自画自賛を展開したのである。ハリス氏に対する個人攻撃もここまで来たか!

変わらなかったトランプ氏

 暗殺未遂事件後、トランプ氏は変わるのではないかという見方もされたが、全然変わることなどなく、トランプ氏は個人攻撃に徹している。ハリス氏のことを「嘘つきカマラ」「笑うカマラ」などと呼び、7月に、全米黒人ジャーナリスト協会の会議で行われたインタビューでは、ハリス氏の人種的アイデンティティーに疑問を呈し、ハリス氏はつい最近「黒人になった」と述べて批判された。

 なりふり構わず個人攻撃を続けているトランプ氏に対しては、専門家からは「ルックスや話し方で相手を侮辱してはいけない。女性はそれに耐えられない」とトランプ氏の個人攻撃は女性有権者を遠ざけるという見方や「トランプ氏はハリス氏との政策の違いにフォーカスすべきだ」などの声があがっている。

 しかし、トランプ氏は、そんな批判をものともせず、「私には彼女を個人攻撃する権利がある」と反論、「彼女の知性をあまり尊敬していないし、ひどい大統領になると思う」と言及した。

ハリス氏への個人攻撃の影にトランプ氏の焦り

 激化するハリス氏の個人攻撃への背景には、トランプ氏の焦りがあると思われる。ハリス氏が激戦州で追い上げているからだ。ニューヨーク・タイムズとシエナ大学が8月8日から15日に実施した世論調査の結果は、ハリス氏とトランプ氏が、サンベルト(カリフォルニア州からノースカロライナ州に至る、北緯37度線以南の温暖な地域にある州のこと)に位置するアリゾナ州、ジョージア州、ネバダ州、ノースカロライナ州の激戦州4州で接戦を繰り広げている状況を示している。

 この世論調査によると、アリ​​ゾナ州とノースカロライナ州では、ハリス氏がそれぞれ、5ポイント、2ポイントリードしている。一方、ジョージア州とネバダ州では、トランプ氏がそれぞれ、4ポイント、1ポイントリードしているものの、ハリス氏がトランプ氏との差を縮めている状況だ。その結果、これら4州の支持率の平均は、トランプ氏とハリス氏は同率の48%と互角となっている。

 大統領候補はこれら4州のうち少なくとも1州で勝利し、ウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルベニア州の3つの激戦州を制すれば当選すると見られているが、8月初めに、同じニューヨーク・タイムズとシエナ大学が行った世論調査によると、これらの3州では、ハリス氏がトランプ氏を4ポイントリードしていた。

 もっとも、この世論調査はリベラル寄りとの見方もあるので、様々な世論調査サイトの結果をもとに総合的に支持率を割り出しているリアル・クリア・ポリティクスの8月18日時点での支持率を見てみると、前述のアリゾナ州、ジョージア州、ネバダ州、ノースカロライナ州のサンベルト4州とペンシルベニア州の5州でトランプ氏がリードしており、ハリス氏がリードしているのはミシガン州とウィスコンシン州の2州に留まっている。それでも、今本選で両者が一騎打ちした場合にどちらが勝つかについては、ハリス氏が1.4ポイントリードしている状況だ。

 トランプ氏が銃撃された際には、同氏はヒーロー視され、「トランプ氏は大統領選に勝った」との見方もあがったが、結局のところ、暗殺未遂事件はバイデン氏を大統領選から撤退させてハリス氏が民主党指名候補になるという流れを生み出し、トランプ氏には吉とは出なかったようだ。何より、ネット時代、時が流れるのは早い。暗殺未遂事件はもはや遠い過去の出来事になってしまった感も受ける。

 大統領選の投票日まで3ヶ月を切った。ハリス氏はこのまま快進撃を続けていくのか? トランプ氏は以前と変わらぬ個人攻撃作戦で勝てるのか? 今後も両候補の動きから目が離せない。 

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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