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民主主義より“明日のおまんま”か ハリス氏惨敗の決定的要因とは? 米大統領選 #専門家のまとめ

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 米大統領選でトランプ氏に敗れたカマラ・ハリス氏が、11月6日、ハワード大学で敗北宣言をした。民主主義の下、「我々は敗北を受け入れなければならない。平和的な政権移行を助けるとトランプ氏に伝えた」と述べたハリス氏は、2020年の大統領選で敗北宣言を最後まですることがなかったトランプ氏とは対照的な民主的な姿勢を見せた。また、若者たちに向けて「戦いには時間がかかるが、勝たないということではない。あなた方には素晴らしいことをする力がある。自由と正義のために、あきらめずに戦い続けよう」と民主主義のために戦い続けることの重要性を力説した。

 民主主義を守ることは重要だが、ハリス氏が大敗を喫した最大の要因は、民主主義にフォーカスし過ぎて、米国民の目の前にある経済問題に鈍感になっていたことにあるのではないか? 実際、経済問題を背景に、労働者層の中には、これまで支持していた民主党から共和党へと乗りかえる動きが見られた。そんな状況が示されている記事を紹介したい。

ココがポイント

「労働者層を見捨てた民主党が労働者層に見捨てられたという結果は、さほど大きな驚きではない」と彼は述べた。
出典:Newsweek 11月7日(火)

「ラティーノ・ベルト」と呼ばれるペンシルヴェニア州東部の工業地帯では(中略一番多くあがった要因は経済、とりわけインフレに関するものだった。
出典:BBC NEWS JAPAN 11月7日(火) 

バイデン大統領の働きぶりに対する支持率がかなり低く、人々が、自分をとりまく経済状況が4年前より悪化していると感じている
出典:NHK 2024/11/2(土)

都市部住民」、「農村部住民」のどちらもハリス候補の場合は「状況が悪化」のほうが「状況が改善」を上回っており、トランプ候補はどちらも逆
出典:PRESIDENT Online 2024/11/05(日)

エキスパートの補足・見解

 米大統領選では、インフレが加速する中、経済問題が最大の争点になった。悪化した経済の影響で生活が苦しくなっている状況は、これまでは民主党を支持してきたラティーノやアフリカ系アメリカ人に留まらず、同じく民主党支持者が多い都市部の住民にも及んでいる。彼らは、労働者の味方だと主張してきた民主党が現状維持に甘んじて有効な経済対策を講じず、もはや、労働者の味方ではなくなったことに気づいたのだろう。

 上院議員のバーニー・サンダース氏が、今回の選挙結果について出した声明文の中で「労働者階級の人々を見捨ててきた民主党は、労働者階級の人々から見捨てられたことに気づいただろう。民主党指導部が現状維持を擁護する一方、米国民は怒り、変化を求めている」と述べているが、これはハリス氏大敗の決定的要因を端的に示している言葉だと思う。

 一方、トランプ氏は現状維持に甘んじてきた民主党から出馬したハリス氏を4年間何もしてこなかったと断罪し、有権者にとって目の前の死活問題であるインフレを終わらせると強調した。同氏の経済問題にフォーカスした主張が有権者の心に刺さったのではないか。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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