ロシアのメディア:米国はシリアのグワイラーン刑務所からのイスラーム国司令官ら750人の脱獄を支援
シリア北東部のハサカ市では1月29日、北・東シリア自治局の武装部隊であるシリア民主軍と治安部隊である内務治安部隊(アサーイシュ)が、グワイラーン刑務所襲撃・脱獄事件(1月20日発生)に関与したイスラーム国のメンバーの追跡・掃討作戦を継続した。
北・東シリア自治局は、トルコが「分離主義テロリスト」とみなすクルド民族主義組織の民主統一党(PYD)が主導する自治政体。シリア民主軍は、PYDが結成した民兵の人民防衛隊(YPG)が主力をなし、イスラーム国に対する「テロとの戦い」の支援部隊として米国の全面支援を受けている。
シリア民主軍は1月26日にグワイラーン刑務所を完全制圧したと発表したが、刑務所内を含むグワイラーン地区では今も戦闘が続いている。
刑務所内外で続く戦闘
PYDに近いハーワール・ニュース(ANHA)によると、シリア民主軍とアサーイシュは、グワイラーン地区のファーティマ・ザフラー高校近くでイスラーム国のスリーパーセルと交戦した。スリーパーセルは5人組で、シリア民主軍は戦闘で1人が死亡した。
シリア民主軍とアサーイシュはまた、グワイラーン地区のパン製造所近くでイスラーム国のメンバー3人を拘束した。
一方、英国を拠点に活動する反体制系NGOのシリア人権監視団によると、グワイラーン刑務所内ではシリア民主軍のテロ撲滅部隊(YAT)が米軍の監督のもとに、施設内に立て籠もるイスラーム国のメンバー5人が人質にしていた刑務所職員らの救出作戦を敢行した。
人質をとっていたメンバー5人のうち3人は、シリア民主軍によって殺害され、2人は着用していた自爆ベルトを爆発させて死亡した。人質の消息はいまだ不明だという。
また、刑務所内に立て籠もり、抵抗を続けてきたアブー・ウバイダを名乗る司令官(アミール)と彼に忠誠(バイア)を誓った20人のメンバーが投降し、YATがこれを拘束し、所持していた武器を押収した。
イスラーム国も抵抗を続けた。グワイラーン地区では、自爆戦闘員少なくとも4人からなるスリーパーセルが、アガワート通りのコミューン(北・東シリア自治局における最小の自治政体)長と住民3人を要撃し、拘束した。
シリア人権監視団によると、1月20日以降の戦闘での死者は270人、内訳はイスラーム国のメンバーが189人、シリア民主軍、アサーイシュ、刑務所守衛が74人、住民7人。
米国が脱獄を支援か?
シリア民主軍はグワイラーン刑務所襲撃・脱獄事件は、トルコが直接に関与していると疑っている。これに対して、ロシアの通信社スプートニクは、トルコ以外の国が関与しているとする記事を配信した。
その国とは、ウクライナ情勢をめぐって対立を深めている米国だ。
スプートニク(アラビア語版)は1月29日、複数の消息筋の話として、イスラーム国の司令官多数が、グワイラーン刑務所からダイル・ザウル県の砂漠地帯に移送されたと伝えた。
移送された司令官は、アラブ諸国、ベルギー、オランダの出身者約750人で、そのなかには多数の幹部司令官も含まれていたという。
移送は、米軍がグワイラーン刑務所襲撃・脱獄事件に伴う混乱に乗じて行ったもの。同消息筋によると、イスラーム国のスリーパーセルが刑務所を襲撃・掌握し、シリア民主軍との間で戦闘が始まった最初の数時間で、収監されていた司令官らは、シリアとイラクの国境に近いダイル・ザウル県ユーフラテス川西岸のブーカマール市一帯の砂漠地帯、ビシュリー山東部への逃走経路を確保し、米主導の有志連合の偵察機複数機が、彼らを捕捉・監視し、迂回路に誘導し、逃走を支援した。
逃走先のダイル・ザウル県の砂漠地帯は、米国が違法に駐留を続けるヒムス県タンフ国境通行所一帯地域(55キロ地帯)へと通じている。
同消息筋によると、司令官らの移送は四輪駆動車やバスを使って数回に分けて行われた。この間、シリア民主軍は、注意を逸らすため、刑務所やその周辺地域を攪乱する行動をとる一方、刑務所周辺の拠点3カ所から撤退し、有志連合が設定した逃走ルートに至る抜け道を確保した。
また、これと並行して、シリア民主軍は、司令官らが投降したと主張して、彼らを計画的に刑務所の外から刑務所に近い2カ所に移動させた。そして、司令官らはここから四輪駆動車やバスに乗せられ、ダイル・ザウル県の砂漠地帯に移送されたという。
司令官らを四輪駆動車やバスは、シリア民主軍の特殊部隊が護衛するとともに、有志連合の偵察機複数機がこれを監視・誘導した。
同消息筋は、司令官らの脱獄支援の狙いについて、イスラーム国がシリア東部で再生し、同地が混乱することは、シリア東部への米軍や有志連合の違法駐留継続の根拠を与えると指摘している。
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