続く戦闘
シリア北東部のハサカ市では1月27日、クルド民族主義勢力の民主統一党(PYD)の民兵組織である人民防衛隊(YPG)を主体とするシリア民主軍が1月26日にイスラーム国のメンバーによって占拠されていた刑務所の完全制圧を宣言したものの、両者の散発的な戦闘は続いた。
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英国を拠点に活動する反体制系NGOのシリア人権監視団によると、刑務所内およびその周辺では、シリア民主軍は、北・東シリア自治局の治安部隊である内務治安部隊(アサーイシュ)とともに捜索・掃討を継続し、刑務所内でイスラーム国のメンバー12人を新たに殺害、また5人が刑務所前で遺体で発見された。
これにより、1月20日以降の死者数は235人となった。内訳はイスラーム国メンバーが173人、シリア民主軍、アサーイシュ、刑務所守衛が55人、住民が7人。
同監視団によると、イスラーム国メンバーは依然として数十人が刑務所内に立て籠もっており、自爆攻撃を行う可能性のある彼らに対する制圧作戦は慎重を期して行われているという。
避難住民への慰問合戦
PYDに近いハーワール・ニュース(ANHA)によると、北・東シリア自治局の社会問題委員会(社会問題労働省に相当)のハンダリーン・スィーヌー共同議長、避難民問題局のシャイフムース・アフマド局長、ハサカ地区評議会のファールーク・トゥーズー共同副議長、児童保護局のハーリド・ジャブル共同局長らからなる使節団が、同自治局の支配地内に設置されている収容センターで避難生活を送るグワイラーン地区とズフール地区の住民を慰問した。使節団は、慰問に合わせて198世帯以上の避難住民に対して支援物資を配給した。
一方、国営のシリア・アラブ通信(SANA)によると、ハサカ県のガッサーン・ハリール県知事が、政府の支配下にあるハサカ市内の治安厳戒地区に設置された仮設収容センターを訪問し、住民を慰問した。SANAによると、治安厳戒地区に避難した住民の数は4,000人を越え、県社会問題労働局が関係当局とともに設置した7つの収容センターに収容されている。
シリア民主軍はトルコの事件への関与を改めて強調
シリア民主軍の広報センターは声明を出し、グワイラーン刑務所襲撃・脱獄事件にトルコが関与していたと改めて断じるとともに、制圧作戦で戦死した兵士の氏名などを公表した。声明の内容は以下の通り。
シリア民主軍は「カリフ国の幼獣」を拘留してきたことに釈明
シリア民主軍の広報センターはまた別の声明で、「カリフ国の幼獣」として知られるイスラーム国の児童戦闘員を拘置してきたことについて以下の通り釈明した。
声明は1月25日のUNICEFシリア代表のヴィクトル・ニランド氏の報道声明を受けたものである。
ニランド氏は25日の声明のなかで、グワイラーン刑務所内に収容されている子供850人の安全が深刻な危険に晒されており、12歳に満たない子供もいるとして懸念を表明していた。