BCリーグ、前期終了。滋賀ユナイテッド・上園啓史監督(もと阪神タイガース)の自己採点
独立リーグのルートインBCリーグは前期日程を終了し、後期に入った。今年、ADVANCE-West(西地区)に新規参入した滋賀ユナイテッドBCは11勝22敗2分け(ホーム8勝9敗1分け、ビジター3勝13敗1分け)で前期を4位で終えた。
新人監督として指揮を執った上園啓史監督(阪神タイガース―東北楽天ゴールデンイーグルス―オースターハウト・ツインズ)に、前期を振り返ってもらった。
■前期の反省と収穫
――初めての監督として過ごした2ヶ月強はいかがでしたか。
「徐々に大変さがわかってきました。ボクもそうなんですけど、選手も含めてまだまだ成長しないといけない。ボクらからしたら当たり前のことも、まったくできないようなことが多々あった。
まず、頭で理解できていない。それを行動に移せない。そういった面の難しさをすごく感じました」
――たとえば、どういうことでしょうか。
「具体的にというと難しいけど、本当に小さなこと。たとえばピッチャーなら投内連係や守備に関してまったくできない選手がたくさんいるとか。投げたあと9人目の野手として普通にアウト取ることもできないということが多々あるので。若い子は特に」
――これまでずっと野球をやってきた選手ばかりなのに。
「たぶん言われなかったんでしょうね、強豪校でなければ。投げたあと、どう守るとか。ピッチャーはもう投げる練習だけしていればいいといか。そういう指導しか受けてきてないんだと思うんで。フィールディングができたらそれだけで(自分も)助かるし、全然違いますからね」
――そういった面で苦労しながらも、得られた収穫はありますか。
「『これぐらいかな』と思った選手が期待以上に活躍してくれたこともあったし、期待しているのに実戦になるとこんなものかとか、逆もありましたけど。バッティング練習では誰よりも遠くに飛ばせる、外国人よりも飛ばせる可能性も秘めているのに、試合になると…とか。それを我慢してでも使うのかが難しい。それらも含めて練習と試合の違いなど、選手個々の特性をこちらが把握できるようになったことが収穫ですかね」
――ゲームに関しては、完封負けが一度もなかった。(注:1)
「何度かされかけましたけど、結果、されなかった。完封負けがないのはいいことですが、けどやはり同じピッチャー…特に左のそんなに特徴があるわけでもないようなピッチャーに抑えられるケースがすごく多かった。
左投手のときは特に右バッターに期待してるんですけど、なかなか結果が残せる選手が少なかった」
――チーム打率が・269というのは、低くはない数字ですね。
「チーム打率は悪くないように見えるが、リーグ全体的に高いんで。トップ3くらいのときもあったけど、変動してちょっと落ちたんで今は5位くらい。チーム防御率は下から2番目くらいで5・36。これじゃ勝てない。やはり下位にいるチームは防御率がよくないですよね」
■苦しい投手の台所事情
――投手に関して頭数が少ない。かなり苦しかったのでは。(注:2)
「頭数は少ないからしんどいですけど、逆を言うとピッチャーはチャンスなんで。たくさん抱えて投げられないよりはいいのかなと、ボクは思います。ボクは『投げたい、投げたい』できましたから、アマチュア時代から。現に試合に出ないと覚えられない」
(続けて)
「それと若い子が多い中で、試合だけしかできていない。ブルペンとかでプロ野球選手かのように調整されても成長できないので、このクラスの選手は両方やっていかないと、とは思います」
――そういったことを教えるためでしょうか。前期の最終戦で17歳の渡辺明貴投手に16失点しても5回を投げ切らせました。(注:3)
「今のレベルを知ってほしいのと、スキ見せたらラグビーかのように点を取られるよと言いたかった。野球なので抑えたり打たれたりは当然あるし、相手のあることなので勝ったりするときもあるんだけど、高いレベルにいくには全然物足りないよ、と。現状に満足してもらったら困る。
『上(NPB)目指す』と口では言ってるのに、独立リーグ相手に16点も取られたらいけるわけないやん、というのをわからせたかった。
でもいい経験になっていると思う。17歳も18、19歳もそうだけど、なかなか運や縁がないと独立リーグにも入りたくても入れない。そういう運は持っていると思うんで。まぁまだまだ鍛えないといけない選手が多い。特にピッチャーは」
――監督の立場としてはひとつでも勝ちが欲しい中で、貴重な1試合を彼にあげた。
「前期はもう勝負は決まっていたから。後期は少しずつ(自身のさい配も)変わっていかないといけないと思います。勝たないかん。全員を出したところで、来年その全員がいるとも限らない。前期に関しては初めてでこちらもわからない。把握しきれていない選手も中にはいましたから」
■NPBへ―
――勝つことと同じくらい選手の育成も重要ですね。
「17歳、18歳、19歳がいる以上、いろんな練習法を模索しながらやらないと、ここの選手たちはこの先なんか、正直ないわけですから。なんとかするという気持ちでもっと全力でやらないと」
――独立リーグの目的のひとつとして、選手をNPBに送り込むというということがあると思いますが。
「はじめは(NPBにいければ)面白いのかなぁとか思いましたけど、やはりゲームでのプレーを見ているとそんな甘くないなと。運よくボクもプロにいけたんですけど、並大抵ではいけないと思いますし。
ましてや独立リーグから育成枠だと…。プロで活躍するということになると、さらにその上なんで。育成枠でもいけるに越したことはないけど、いって2〜3年後にクビってなると一緒やと思うんで。まぁいけたら頑張れた証しにはなるけど。
やはりそんな甘くないですね。難しいもんだと。誰でもいけるもんじゃないと思いますね。今でこそ門戸が広がってきて、いろいろなところからいけてますけど、それなら最低でもこのリーグの中でトップクラスじゃないといけない。それを考えるとまだまだ。ウチのピッチャーもリーグの平均より落ちますし」
――後期、そのレベルに少しでも近づけるには。
「短期的に選手の育成をするのは簡単なことじゃないんで、難しいとは思う。でも1年目から何人かの選手は(NPBに)送り出せるようにしたい。チャンスがある選手はね。でも、ほんと難しいですよ」
■後期に向けて
――後期に向けて、監督ご自身の課題は。
「野球という流れがあるスポーツで、前期はさい配に迷うときもあったし、思いきったことができないこともあった。まだまだそういうところですね。
あと、厳しさを持ってというか自分の優しさを捨てて戦わないと、やっぱり勝負になってくると戦えない。前期だと『コイツずっと出てないから出してやろう』とかいうのがありました。まんべんなく使ってたんで」
――前期はあえてそうしていた。
「もちろん。いきなり優勝争いに食い込めるとか思ってなかったし、チームが発足してすぐだった。はじめはやはり手探りな状態で、そんな簡単ではなかったので」
――それが後期は違う。
「そうです。後期はそうじゃないというところも見せていかないと。自分で這い上がってこないと試合なんて出られるわけないよ、というような。どこまでできるかわかんないですけど、そういう面も必要。またゼロから始まれるんで」
――それぞれの力も把握できている今、後期はどういう戦いをしたいですか。
「やはりピッチャーですね。ピッチャーが頑張ればなんとでもなるのかなと思うので。特に十代のピッチャーには気持ちを前面に出してやってほしいし、試合に対する準備とか、まだまだわかっていない選手もいるので、そのへんきっちりさせていきたい。
結果ももちろん大事なんですけど、一試合に対する取り組み方とか、1週間の過ごし方とか、ただの登板に終わらせないように意識をつけさせていきたい。誰がどこで見ているかわかんないですし。一回の登板にしっかり準備してほしい。まだまだそのへんが未熟なので」
■後期の「ピッチャー、オレ」は?
――ところで、前期は一度だけご自身の登板機会がありました。(注:4)
「どうという気持ちもなく、落ち着いていました。『打たれるなぁ。そりゃ打たれてしゃあないな』とか思いながら」
――しかし1イニング投げて2安打、無失点。感慨などは。
「感慨はなかったですよ。楽しいなとは思いましたけどね。抑える、抑えないは別として」
――後期も「ピッチャー、オレ」は見られますか。(注:5)
「今後はあまり…。新しい外国人も来ますしね。できる限り、ボクが出ない方がいい」
――最後に選手たちへのメッセージを。
「思いきってやってほしい。来年もまた全員でというわけにはいかないので」
自軍の戦力を十分に把握した新人監督が、前期を踏まえて後期はどんな戦いを見せるのか。滋賀ユナイテッドに注目だ。
(注:1)35試合で完封負けは0。1得点での敗戦は6試合。完封勝ちも0。
(注:2)登録している投手は上園監督を含めて9人(練習生1人)。
(注:3)6月17日、対富山戦で先発の渡辺明貴投手は5回を121球、4本塁打を含む13安打、4四球、16失点。
(注:4)6月3日、対福井戦。3番手で登板し、内野安打を含む2安打、1併殺、無失点。
(注:5)投手の数が足りず、「登板過多による故障を避けるために」と5月12日、選手登録をして兼任監督となっている。
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