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西村憲の復調は敗戦の中の光明。滋賀ユナイテッド・上園啓史監督、我慢のとき

土井麻由実フリーアナウンサー、フリーライター
開幕して1勝3敗1分け。踏ん張りどころだ。(撮影:城 裕一郎)

■ホームで2敗目

打撃投手にノッカーと忙しい上園監督 (撮影:城 裕一郎)
打撃投手にノッカーと忙しい上園監督 (撮影:城 裕一郎)

「ホームで2試合目。なんとか勝ちたかった…」。試合後、滋賀ユナイテッドBC上園啓史監督は悔しそうに口を開いた。

4月20日、滋賀県は湖東スタジアムで行われた滋賀ユナイテッド対信濃グランセローズの2回戦は4―9で敗れた。ホームで2連敗、そして対信濃も2連敗となった。

■諦めない姿勢は見せたが・・・

完璧な立ち上がりを見せた西村憲投手 (撮影:城 裕一郎】
完璧な立ち上がりを見せた西村憲投手 (撮影:城 裕一郎】

先発・西村憲投手の立ち上がりは完璧だった。なんとか先に得点したい攻撃陣だったが、初回、二回とランナーをスコアリングポジションに進めながらもホームには還せなかった。

好機を逸した三回表。先頭から2連打を許し、野選や失策も絡んで3点先制された。さらに五回には長打も浴びて2点を追加されてしまった。

しかし滋賀も反攻を見せた。五回裏、先頭の桑田真樹選手が四球で出塁すると、代打・松田裕司泉祐介北本亘の3選手連続安打で3点を奪って追い上げた。八回にも1点追加し、「ワンサイドでは終わらない」という諦めない姿勢はアピールした。

ただ、七回にも失策や暴投が絡んでの失点もあり、結果的には大差で決してしまった。

■打線に活路を見い出す

キャッチャーとの共同作業 (撮影:城 裕一郎)
キャッチャーとの共同作業 (撮影:城 裕一郎)

上園監督の口から何度も発せられた「ミス」「未熟」という言葉。エラーの数こそ3つだが、その数以上に細かい部分での未熟さを露呈した。

「1点、2点で防げるところを、ミスでムダな点を取られた。この前(皇子山球場での開幕戦)も逆転負けをしてしまったし、なんとかホームのナイターで勝ちたかったんだけど…思った展開ではなかった」。

五回裏、2点タイムリー二塁打を放つ北本亘選手 (撮影:城 裕一郎)
五回裏、2点タイムリー二塁打を放つ北本亘選手 (撮影:城 裕一郎)

ただ、そんな中でも光明は見い出せた。まず打線だ。もうひと押しは足りなかったが、「ここってときに3点取れたし、ワンサイドにならず追い上げることができた」とし、今後に向けて一定の手応えは得られた。

ある程度、野手の見極めもできてきた。これまで練習試合9試合と開幕して5試合。各選手のポテンシャルや実戦での対応力など、使う側としても手探りな部分もあったが、今後はそれぞれをより生かせる戦法がとれそうだ。

■復調気配の西村憲投手

復調・西村憲投手 (撮影:城 裕一郎)
復調・西村憲投手 (撮影:城 裕一郎)

さらには西村投手の復調だ。結果として残る数字は5回1/3、9安打、6失点(自責は5)だが、前回の富山GRNサンダーバーズ戦で初勝利を挙げたときより格段に状態は上がってきた。(前回の試合⇒西村憲投手の初勝利

上園監督も「西村はよかった。キャッチャーも含め、ちょっと歯車が噛み合わなかったけど。まだまだチームとして未熟なところが失点を重ねた」と西村投手のボール自体には及第点を与えた。

躍動感あふれるピッチング (撮影:城 裕一郎)
躍動感あふれるピッチング (撮影:城 裕一郎)

西村投手本人も手応えを感じ、それだけに開口一番「悔しい」と漏らした。

前回のまったく納得がいかなかった投球から、腕を振るタイミングなどフォームの見直しをして臨んだ。「状態は悪くなかった。初回から全力でと思っていったんで」と万全の立ち上がりだった。

しかし三回の先頭打者に対し「投げる前に迷いがあった」と明かし、「もうちょっと慎重にいけばよかった」と省みた。「同じリズムで単調になって掴まった。今ごろ勉強と言っていてはいけないんだけど…」。

ただ、前回とは違って自分のボールは投げられた。それだけに「状態が悪くなかったからこそ、すごく悔しい」と西村投手は繰り返した。

マメにより降板を余儀なくされた (撮影:城 裕一郎)
マメにより降板を余儀なくされた (撮影:城 裕一郎)

残念なことに右手中指の腹にマメができ、六回途中で交代せざるを得なかった。「全部いけたらよかった。ホームで勝ちたかったし、スタッフやファンに申し訳なかった」。二死一、三塁とランナーを残してマウンドを譲ったことにも頭を下げた。

奇しくもこの日、古巣・阪神タイガース久保田智之氏が見にきていた。「たまたまですよ。来たらニシが投げるって聞いて」と久保田氏は試合前、上園監督や西村投手とも談笑し、今年から就任した「プロスカウト」という自身の仕事に勤しんでいた。

コンディションが上がってきた西村投手 (撮影:城 裕一郎)
コンディションが上がってきた西村投手 (撮影:城 裕一郎)

西村投手のピッチングを見た久保田スカウトも「ニシ、すごくいいですよ。ボールに伸びがある」と目を見張った。「状態がいいからでしょうね、ちょっとストライクゾーンに集めすぎているかな。でも、それだけいいと感じているってことですね」と笑顔で語った。

寺尾元希トレーナーも「身体の動き自体、良くなってきています。筋力の発揮も感覚いいですし、肩肘の動きもよかったです」と西村投手のコンディションの良化を喜び、指のマメについても「指にしっかりかかっている証拠」と頷いていた。

圧倒的なピッチングを!
圧倒的なピッチングを!

今後に向けて、西村投手も自身に与える課題が明確にある。「ウィニングショットも甘かったし、スライダーも高く浮いていた。もっともっと精度を上げていきたい」。

求められるのは圧倒的な力だ。NPBのスカウトの目に留まるよう、“格の違い”を見せていかねばならない。

■次こそホームで初勝利を届ける

上園監督も「このままズルズルいくわけにはいかない。点は取れるんだから、なんとか先行逃げ切りのゲームを作りたい」と、ここが踏ん張りどころだと表情を引き締めた。

そして「まだどんな感じかわからないと思いますが、ぜひ球場に足を運んでもらいたい」と滋賀県民に来場を訴えていた。

次戦は23日、甲賀スタジアムにて富山GRNサンダーバーズを迎え撃つ。まずはホームでの初勝利だ。

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滋賀ユナイテッドのマスコット・ユナ丸
滋賀ユナイテッドのマスコット・ユナ丸
フリーアナウンサー、フリーライター

CS放送「GAORA」「スカイA」の阪神タイガース野球中継番組「Tigersーai」で、ベンチリポーターとして携わったゲームは1000試合近く。2005年の阪神優勝時にはビールかけインタビューも!イベントやパーティーでのプロ野球選手、OBとのトークショーは数100本。サンケイスポーツで阪神タイガース関連のコラム「SMILE♡TIGERS」を連載中。かつては阪神タイガースの公式ホームページや公式携帯サイト、阪神電鉄の機関紙でも執筆。マイクでペンで、硬軟織り交ぜた熱い熱い情報を伝えています!!

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