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「結婚しやすくて離婚も少ない」「結婚しにくいのに離婚は多い」都道府県でこんなに違う婚姻環境の違い

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

結婚しやすいエリアとは?

都道府県別にみたときに、「結婚しやすいエリア・結婚しにくいエリア」及び「離婚しやすいエリア・離婚しにくいエリア」があるのだろうか。

今回はそれを探ってみたい。

そもそも「東京は未婚率が高い都市」といわれる。それは事実であるが、未婚率が高いからといって、結婚しにくいエリアではない。むしろ逆で、日本の中で全国一婚姻率が高いのは東京でもある。しかも、2000年以降、20年に渡って。

意外と知られていない。東京が、20年も連続で「婚姻率ランキング全国1位」を続けている事実

上の過去記事に書いた通り、その要因は東京には20代の若者が集中するからだ。

コロナ禍において、「東京から人口流出」「東京23区が人口転出超過」などという報道がたまに出るが、実際において東京(正確には東京圏)の人口集中は変わっていない。

東京23区から引っ越ししたとしても、それは埼玉、千葉、神奈川の通勤圏内への移動であって、別に地方の移住が促進されたわけではない。加えて、東京から転出しているのは、ほぼ30代の子育て世代である。20代の若者に限れば、大袈裟ではなく「全国の若者が集中して転入しているのが東京」である事実は揺るがない。

東京は結婚しやすい?

なぜ、若者が東京に集中するかといえば、大学などの進学もあるか、基本的には東京に仕事があるからである。

人口移動はほぼ若者によって決まる。30代以上はあまり県をまたいだ移動をしない。そして、若者が移動をする最大の理由は仕事を求めての移動であり、これは総務省統計局の人口推計統計のある1920年から一貫して変わらない。

それどころか、明治時代の都道府県人口動態を見ても、人口が増えるところはその時代仕事のある場所である。同じことは江戸時代にもいえる。江戸や大坂に人口が集中したのは、「そこに仕事があったから」なのだ。

仕事を求めて都会に流入した若者が、仕事の職場などで知り合った相手と結婚するのはごく自然なことだった。皆婚時代の結婚はそういう仕組みで作られていた。

単純に、若者が大勢いれば、それだけ出会いの機会も増えるわけで、婚姻率が1位なのもうなずける話だろう。

写真:アフロ

では、東京以外はどうだろうか。

結婚と離婚の「エリア特性」

最新の2020年の人口動態調査から、都道府県別の婚姻率と離婚率とを全国平均比でマッピングした図表が以下である。バブルの大きさは婚姻数とした。

見てお分かりの通り、エリア毎の特徴が如実に表れた。

東京は、婚姻率が高い割に離婚率は平均より下に位置する。

つまり東京は「結婚が多く、離婚が少ない」夫婦として理想的なエリアということになる。同様に、神奈川、千葉、埼玉のいわゆる首都圏エリアの3県も婚姻率、離婚率ともにほぼ全国平均レベルである。

実際、一都三県の婚姻数は、全国の婚姻数の32%を占めている。日本の婚姻の3割はこの一都三県で作られているわけだ。

一方で、黄色く塗った「北海道・東北」エリアは、青森・岩手・秋田・山形の4県が「結婚も少ないが離婚も少ない」エリアに集中する。離婚が少ないのは、そもそも結婚数が少ないからであり、婚姻活動全体が停滞しているといえる。これは、そのまま若者の人口流出と関係する話である。

結婚が作られず壊れていく地方

反対に、赤く塗った「九州・沖縄」は、佐賀と長崎をのぞけば、離婚の多いエリアに位置する。福岡と沖縄の「結婚も多いが離婚も多い」のは物理的にありえるとして(とはいえ、沖縄の離婚率の高さは異常値だが)、他の「結婚は少ないが離婚は多い」というのは、「ただでさえ結婚が作られないのに、せっかく作られた婚姻関係が壊されていく」ということであって問題の根が深い。

この「結婚が作られないのに壊されていく」都道府県とは全部で14道県。九州では宮崎、熊本、大分、鹿児島。北では北海道福島。四国では、高知香川。関東では、栃木、山梨、茨城。その他、和歌山、三重、岡山が入っている。九州はやはり多いし、西日本が多い。

九州ではないが、高知は、2020年の女性の生涯未婚率が東京を抜いて全国1位となった県である。結婚数が少ないのに離婚が多いとなれば、未婚者が結婚をする気もなくなるのかもしれない。

写真:イメージマート

ちなみに、高知は江戸時代の土佐藩時代「離婚は7回してはいけない」という離婚禁止令があったといわれる。逆にいえば、6回までは許された。高知の離婚が多い特性は筋金入りなのかもしれない。

都道府県別の生涯未婚率ランキングはこちら

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結婚は環境の影響が大きい

単に、未婚率の高低だけではなく、婚姻率と離婚率とあわせて見てみると、エリアごとの置かれた環境がわかるというものである。結婚は個人の意志の力以上に、環境に左右されるものだからである。

このように見ていくと、全国都道府県別に「結婚しやすいところ」と「離婚しやすいところ」は割と明確に分かれているところが興味深い。

全体的に言えるのは、首都圏や大阪、愛知、福岡など、概して若者の人口移動の多いところが婚姻率は高い。

「どうしても結婚したい」と希望する地方在住未婚者は、こうしたデータも参考にしてもらいたい。ただし、東京に引っ越したからと言って結婚できる保証はない。結婚できる絶対数も多いが、未婚の絶対数も多いので。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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