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「男の未婚の多い東日本、女の未婚の多い西日本」生涯未婚率の男女地域差

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:yamasan/イメージマート)

男女都道府県別生涯未婚率ランキング

2020年の男女生涯未婚率の全国値(男25.7%、女16.4%)東京値(男26.4%、女20.1%)については以下の記事ですでにご紹介した。

【速報】2020年国勢調査確定報より、男女の生涯未婚率は何%になったのか?

あがり続ける東京の女性生涯未婚率、遂に20%の大台を突破

ほぼ同時期に、私が連載している東洋経済オンライン「ソロモンの時代」でも、都道府県別の生涯未婚率を掲載した記事を公開した。おかげさまで、各テレビ局から取材と転載依頼をたくさんいただき、テレビ朝日「グッドモーニング」、日本テレビ「news zero」、フジテレビ「めざまし8」などで取り上げていただいた。

本記事では、再度都道府県別の生涯未婚率ランキングを小数点2位までの詳細な数字で掲出するとともに、問い合わせの多い内容について補足したいと思う。

ランキング表は以下の通りである。

まずは男性から見ると、1位は岩手県の28.9%、2位は青森県の28.4%、3位は秋田県28.1%と、北東北勢がトップ3を独占した。東京は前回2015年時の3位から大きく順位を落とし(改善され?)15位だった。

続いて、女性。5年前の前回1位東京よりも高い生涯未婚率を打ち立てたのは高知県だった。わずか0.2ポイント差だが東京を上回った。高知は、これまでの推移でも決して下位にいたわけではないが、とはいえ東京を抜き去るとは個人的にも予想外であった。ニュースでは、この「高知が1位になった理由は何?」が主に取り上げられた。今でも取材ではこの高知のことをよく聞かれる。

女性の1位が高知の理由

テレビ番組では、独自に高知の人たちへのインタビューなども実施したようである。そこでは、「男の結婚年齢が若いため」「高知の女は勝ち気で怖がられる」などという意見のほか、「高知県は女性の管理職の割合が高く、経済的に自立しているから」という意見も出ていたようだ。

しかし、高知の女性管理職割合が高いのは地方公務員の話であり、就業構造基本調査(2017年)にある民間も含めた管理的職業従事者の数から割り出すと17%弱で、徳島、愛媛などと同等で特別高いというわけではない。また、高知の管理職の女性が全員未婚であるわけでもない。よってこの推測は当てはまらないだろう。

写真:アフロ

実際これといって高知が1位となった明確な理由はなく、あえてあげるとすれば、コーホート別未婚率を見ると、高知では40歳以降ほぼ女性の未婚率が下がらないということが影響していると思われる。

東京の場合は、晩婚化ということもあり、それでも40歳すぎての初婚は一定数ある。東京にくらべて、高知の場合は生涯未婚率対象年齢一歩手前のアラフォーでの初婚が厳しいということが、今回東京を抜いた要因のひとつではないかと考える。

男性のトップ3が北東北の要因

同じことが、男性における岩手県にもいえる。東京などの大都市では40歳以降での晩婚に可能性を見いだすこともできるかもしれないが、地方での中年婚活は厳しいということだろう。

特に、男性の場合、東京の生涯未婚率の上昇カーブがこの5年間で鈍化した。岩手など東北の未婚率が上昇したというより、東京が頭打ちになったことでの順位の入れ替わりと考えたほうがよいかもしれない。

いずれにせよ、東京の生涯未婚率の順位が下がったとはいえ、男女合わせて、全国の45~54歳未婚者のうち約13%が東京の未婚者で占められており、それは総数の人口構成比を上回る。絶対数でいえば、東京をはじめとする大都市の未婚問題はやはり大きい。

東日本と西日本で男女正反対

男女生涯未婚率のそれぞれの平均比にて日本地図にマップ化したものが以下である。男性と女性、上下で見比べてみると、その違いが明確になる。

ご覧の通り、男性は東北を中心に東日本に平均比を上回る赤のゾーンが集中しているが、女性の方は、反対に関東から中部にかけては平均比を下回る青一色である。むしろ四国・九州地方を中心として西日本に赤が集まっている。男の未婚の多い東日本、女の未婚の多い西日本という構図は前回同様踏襲されている。

地方の未婚化は、圧倒的に若者の流出問題が大きい。東日本は10代後半から20代前半の女性の流出が激しい。男余りで、そもそも相手がいないという物理的な問題でもある。生まれた子どもが20歳時点で生まれ故郷を離れているデータについては以下の記事を参照いただきたい。

新成人の数が減ったという話より、もっと深刻な「若者に見放される生まれ故郷問題」

「地方の結婚難は東京など都会への人口流出だというが、その流出先の東京でも未婚率は高いではないか」 という指摘もあるかもしれないが、物理的に「相手がいない」ことによる「結婚できない」と、頭数が揃っていたとしても「私の相手がいない」ことによる「結婚しない」とは別である。

東京は未婚率も高いが婚姻率も高いという話はこちらで書いた。改めてこちらの婚姻率経年推移を見れば、地方の結婚難の深刻さがわかると思う。

意外と知られていない。東京が、20年も連続で「婚姻率ランキング全国1位」を続けている事実

結婚への価値観が変化したわけではない

社人研の推計通り、2040年には全国の生涯未婚率は、男30%、女20%までは上昇するだろう。現に、東京の数字はすでに男が26%、女も20%を超えている。東京の数字が先行指標となって、地方に波及する。

生涯未婚率の上昇を若者の恋愛や結婚への価値観の変化と論じる人もいるが、それは的外れである。

そもそも生涯未婚率は若者の未婚率ではない。50歳の未婚率である。2020年段階で50歳の男女の若者期である20代は1990年代の話である。

バブル崩壊したとはいえ、まだ世間はうわついていた時代だ。当時は、雑誌やトレンディドラマの影響を受けて、恋愛至上主義といわれた最後の時代でもある。1990年代前半は、ジュリアナ東京がまさに絶頂期、六本木ヴェルファーレも続いた時代でもある。お立ち台で扇子を振り回して踊っていた人たちの20%がいまだに未婚だという話なのだ(勿論、当時の女性が全員お立ち台にのぼったわけではないが…)。

写真:Fujifotos/アフロ

価値観が変わったというならもう30年前に変わっている。結婚に対する意欲が薄れてきたという指摘も間違いだ。1980年代から終始一貫して男女とも結婚に前向きなのは男4割、女5割で不変である。

個人の価値観は何も変化していない。変わったのは、社会環境及び経済環境のほうである。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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