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「中国はロシアに“殺人的な支援”を検討している」米国務長官が懸念 ウクライナ侵攻1年

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
王毅氏と会談したブリンケン米国務長官が中国からロシアへの武器供与の可能性を懸念。(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 ロシアがウクライナに侵攻してまもなく1年となるなか、ブリンケン米国務長官がロシアに対する中国の動向に深い懸念を示している。

中国からロシアに供与される可能性がある“殺人的な支援”とは?

 ミュンヘン安全保障会議で、気球偵察事件後初めて中国の王毅政治局員と会談したブリンケン米国務長官が、会談後に行われた米NBCテレビの“Meet The Press”のインタビューで、米領空に偵察気球を飛ばしたことについて王毅氏から「謝罪がなかった」と述べ、さらに、バイデン政権は「中国がロシアに“殺人的な支援”の供与を検討している可能性があることに深い懸念を示している」と話している。

「この数ヶ月、我々は、ロシアの戦争努力を援助する非軍事的支援が供与されるのをみてきた。今日シェアする情報はすぐに出ると思われるが、それは、彼らがロシアに“殺人的な支援”を供与することを強く検討していることを示している」

 ブリンケン氏は、中国は“殺人的な支援”の供与をまだ行ってはいないとしつつも、そのような支援を行わないことが米中関係には重要であると明確にしたとこう続けている。

「中国は(“殺人的な支援”の供与を)検討していると我々はみている。我々は彼らがその線を越えたのをまだ目にしてはいない。だから、これ(“殺人的な支援”をすること)は深く懸念されることなのだと明確にすることが重要だと思う。私が王毅氏との会談で明確にしたように。私は、その線を越えないことが重要であり、中国が行った気球事件に加え、それ(“殺人的な支援”の供与)は我々の関係に必要のない、重大な影響を及ぼす事実であることを明確にした」

 “殺人的な支援”とは何を指すのか?

 ブリンケン氏は、米CBSテレビの“Face The Nation”のインタビューでそれについて問われ、「兵器、主に兵器だ。そのカテゴリーには、弾薬から兵器自体に至るまで、ありとあらゆるものが入る」と具体化している。

 また、バイデン政権の懸念は所持している情報に基づいていることも明らかにしている。

「今日まで、中国企業、そして、もちろん中国では、実際、私企業と国営企業の違いがない。我々は、彼らがロシアに、ウクライナで使う非軍事品の支援をするのをみてきた。今ある懸念は、彼らが“殺人的な支援”を供与することを検討しているという、我々が所持している情報に基づいている」

ウクライナ戦争はいつまで続く?

 ブリンケン国務長官が深い懸念を示すなか、侵攻からまもなく1年を迎えようとする今、ウクライナ戦争がいつまで続くのかも気になるところだ。

 ウクライナが闘い続けられるのは西側諸国からの軍事支援が背景にあることを考えると、ウクライナ戦争がいつまで続くかは、西側諸国がいつまで物理的な軍事支援を続けられるのかにもかかっているだろう。

 武器製造の研究をしている専門家は、ディフェンス・ニュースでウクライナ軍は砲弾を脅威的な速さで使用しているとし、「アメリカの在庫は非常に少ない。製造量を大きく増やそうとしているが、それでも、ウクライナ軍の使用量よりもはるかに少ない」と製造量が使用量に追いついていない状況に言及している。

 西側諸国の識者らからは「戦争は通常、人が思っているより長く続く傾向がある。特にこのように長引いている国家間の争いはそうだ。歴史的に、このように長く続いている戦争は数年は続く可能性がある」「この戦争は限りなく続くだろう、長い停戦を挟みながら」「戦争が終わるのは、ウクライナかロシアかあるいはその両方が崩壊した時だけだ。両サイドにとって、生きるか死ぬかの問題だからだ」などの声があがっている。

 長引くことが予想されるウクライナ戦争。

 中国がロシアに兵器供与という“殺人的な支援”を始めたら、民主主義国家vs権威主義国家の戦いであることがより鮮明になるとともに、戦闘はいっそう長引くことになるのではないか。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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