米原子力潜水艦、アラビア海に続きインド洋や沖縄にも出現 米軍の異例の公表続く ロシアや北への警告か?
10月、米中央軍がツイッターで、通常は航行中の動きがほとんど明かされることがない米原子力潜水艦がアラビア海に出現したことを伝える“異例の公表”をしたが、その後も、米軍は、米原子力潜水艦の寄港地の公表を続けている。
11月1日、米軍は、アラビア海に出現した潜水艦と同じクラスの米海軍オハイオ級弾道ミサイル搭載原子力潜水艦「USS・ロード・アイランド」が、地中海西端のイギリスのジブラルタル海軍基地に寄港したと公表した。
スコットランドのクライド海軍基地でのアメリカの潜水艦の目撃数も増加している。米海軍は、7月に潜水艦が同基地に寄港したことを公表したが、同基地では、米原子力潜水艦が、今年はこれまでに23回と、昨年の13回の2倍近い数で目撃されていると言う。
増えているのはアメリカの潜水艦の目撃だけではない。スコットランドでは、NATO加盟国の潜水艦の目撃数も、2021年の43回から今年は85回に増加している。ウクライナ戦争が長引く中、アメリカとNATOが連携を強化している状況がうかがえる。
USSミシガンが沖縄に寄港
米軍はまた、11月22日、米海軍第7艦隊のパトロール地域を航行している、154機のトマホーク・クルーズ・ミサイルが搭載可能なオハイオ級誘導ミサイル原子力潜水艦「USSミシガン」が、11月10日に沖縄に寄港したことも公表した。
オハイオ級誘導ミサイル潜水艦は、秘密のプラットフォームにより、空前の攻撃力と特殊作戦能力を海軍に提供している。戦術ミサイルと優れた通信機能を有し、戦闘指揮官の攻撃と特殊作戦部隊の要求を直接下支えしている。
振り返ると、11月上旬は、北朝鮮による弾道ミサイルの発射が相次いだ。沖縄での寄港を公表したことには、北朝鮮に警告する意味合いも含まれていたのだろうか?
インド洋の米軍最大の拠点にも寄港
さらに、11月28日には、米戦略軍が、10月にアラビア海に出現していた「USSウエスト・ヴァージニア」がインド洋のディエゴ・ガルシア島に、10月25日〜31日、寄港したことを公表した。ディエゴ・ガルシア島はイギリス領だが、インド洋における米軍最大の拠点となっている。
米戦略軍の指揮官であるチャールズ・リチャード提督は、「あらゆる作戦計画は、核抑止があるという仮定に基づいている。ウエスト・ヴァージニアのようなSSBNは、アメリカと同盟国にとって、信頼性がある核抑止のために不可欠だ」と
話している。
また、海軍潜水艦部隊司令官である副提督ウィリアム・ヒューストン氏も「ウエスト・ヴァージニアは、巡航ミサイル潜水艦のように、特に、広範囲の抑止パトロールを行う目的で作られている。潜水艦が搭載しているステルス兵器とレスポンス能力、トレーニングされたクルーにより、SSBNは世界で最も強力な戦艦となつている」とその高い戦闘能力を誇示した。
次々と、原子力潜水艦のロケーションを公表する米軍。どんな意図を持って公表しているかは明らかにはしていないが、防衛情報を掲載しているThe War Zoneは、ディエゴ・ガルシア島にウエスト・ヴァージニアが寄港したことについては意味を見出している。
ディエゴ・ガルシア島はインド洋に位置することから、ヨーロッパにもアジアにも対応できるロケーションだからだ。同サイトは、「ウエスト・ヴァージニアのディエゴ・ガルシアへの寄港は、ヨーロッパとアジアの両地域の出来事がアメリカとその同盟国やパートナーの安全保障に重要な問題を提供している時、ヨーロッパとアジアに同じくらい関わるロケーションに原子力潜水艦が存在することを確かに強調している」としている。
高まる地政学的摩擦
ヨーロッパでの出来事というと、いうまでもなく、ウクライナ戦争だ。エキスパートはプーチン大統領の核兵器使用の可能性は少ないと分析してはいるものの、それでも、ロシアの苦戦が続く中、その懸念がゼロになったかは疑問だ。
また、アジアでの出来事というと、北朝鮮が、11月18日、米国全土が射程に入りうる大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射するという挑発的な動きをしたことから、エキスパートからは、北朝鮮は次には核実験を行うのではないかと懸念する指摘も出ている。
しかも、北朝鮮の国営メディアKCNAは11月25日、金正恩氏が世界最強の核戦力を構築する計画をしていると発言したと報じた。また、金氏がICBM発射の際に、娘と思しき少女をお披露目したことも注目されている。
台湾をめぐって、米中の摩擦も高まっている。中国では各地でゼロコロナ政策に反対する抗議デモも起きた。
不安定な情勢が続くヨーロッパとアジア。The War Zoneは「原子力潜水艦に関するこれらの公表は、世界各地で地政学的な摩擦が高まる中、敵対国に対するシグナルか戦闘力の誇示と考えられる」という見方をしているが、プーチン氏や金正恩氏、習近平氏など敵対国の指導者たちへのメッセージということか?
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