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プーチン、巨大津波で都市を壊滅する原子力核魚雷「ポセイドン」の発射試験の準備か? 米報道

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
ポセイドン魚雷の搭載が可能なベルゴロド。写真:polarjournal.ch

 ウクライナ侵攻で苦戦しているロシアが、懸念される動きを見せている。

 米CNN(11月10日付)が、米政府高官の話として、「米国は、ロシアの艦隊がここ数週間にわたり、新型の原子力核魚雷の試験の準備をしていたことを把握した」と報じており、終末兵器とも言われている原子力核魚雷「ポセイドン」を発射試験する準備をしていた可能性がある。

 「ポセイドン」は、最大500メートルもの巨大津波を発生させて沿岸部の都市を壊滅する能力があると言われている核魚雷で、試験の準備に参加した艦隊の中には、この「ポセイドン」を発射する能力がある特殊作戦用に改造された巡航ミサイル潜水艦「ベルゴロド」が含まれていたという。

 先日、中東の軍事作戦を監督しているアメリカ中央軍が、ツイッターで、アラビア海を航行中のオハイオ級原子力潜水艦の画像を公開したが、「ベルゴロド」はその潜水艦よりも巨大な全長約184メートルの世界最大の潜水艦で、「ポセイドン」を6~8隻搭載可能だと言われている。

 「ポセイドン」はヨーロッパやアメリカ東海岸の都市や海軍基地、航空機キャリアーなどのターゲットに向けて進んでいる際にNATOによる水中防衛を阻止するために特殊な設計がされており、時速も最大約200キロと高速で、発射されると止めることが非常に困難だという。プーチン大統領が「ポセイドン」は9600キロ以上離れた沿岸のターゲットを完全に破壊できると豪語したこともあったようだ。

 「ベルゴロド」は2019年に進水、2021年6月にテスト航行し、2022年7月にロシア軍に引き渡された。9月22日、27日には、北極海の一部であるバレンツ海を航行していることが確認されたと米海軍協会が報じている。

 また、10月17日にも、NATOとの国境から約430キロ地点のセヴェロドヴィンスクの港に停泊していることが確認されている。

 もっとも、今回、「ベルゴロド」を含む艦隊による「ポセイドン」の試験は技術的問題に遭遇したため、実施できなかったのではないかとアメリカは見ているようだ。前述のCNNは「先週、艦隊は、試験をすることなく、北極海の試験場を去り、港に戻る様子が確認された。技術的問題に出くわした可能性があると米国は考えている」と伝えている。

 技術的問題の可能性が指摘された「ポセイドン」だが、実際、原子力学者からは「ポセイドン」のような兵器を開発するのは難しく、「運用には程遠い」との声もあがっている。

 それでも、CNNは「アメリカの高官はロシアが再び魚雷の試験を試みる可能性があると警告した」、「魚雷の試験は、アメリカとその同盟国が、ウクライナ戦争で、ロシアが核兵器を使う準備をしている兆候がないかモニタリングしてきた中、アメリカとの緊張をいっそう高めたことだろう。アメリカは行われる可能性があるポセイドン魚雷の試験に特に注意を払ってきた」としており、試験の実施により、米露間の緊張が高まることが懸念される。

 これから、海面が氷で覆われる時期に入ることから魚雷の試験が可能な期間は限られており、試験では核装置が爆発されたことはないと米国は考えているが、プーチン大統領が核兵器使用の可能性をちらつかせてきたことを考えると、魚雷の試験が実施されるのか、その動向が注視されるところだ。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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