エア・ホッケー台の上で視線を浴びながら性交か 司法長官指名を辞退したゲーツ氏“少女売春疑惑”の詳細
トランプ次期政権の主要閣僚の指名が続くアメリカ。
指名の中では、特に、未成年の17歳の少女とセックスパーティーで性交をして金銭を支払った少女売春疑惑や薬物使用疑惑で下院倫理委員会の調査を受けていたマット・ゲーツ氏が司法長官に指名されたことが問題視されていたが、そのゲーツ氏が21日、指名を辞退すると“X”で発表した。
両党の上院議員からはゲーツ氏を司法長官として承認するか決める前に下院倫理委員会の調査報告書を見たいとの声があがったり、ゲーツ氏と性交したと証言した少女たちの弁護士も同委員会に調査報告書を開示したりするよう求めていた。調査報告書が開示されたら、ゲーツ氏の司法長官就任は難しくなると言われていた矢先の指名辞退である。
ゲーツ氏に対する少女売春疑惑の始まり
未成年の少女との性交も金銭の支払いも否定していたゲーツ氏だが、いったい、どんなことが起きていたのか?
事の始まりは、ゲーツ氏の腹心で友人のジョエル・グリーンバーグ氏が、2021年に、未成年者の性的人身売買を犯した罪で有罪になったことに遡る。同氏は11年の禁固刑を受けて現在服役中だ。そのグリーンバーグ氏を捜査する過程で、ゲーツ氏の未成年者との性交疑惑が浮上したのだ。
グリーンバーグ氏はトランプ氏の友人のロジャー・ストーン氏に手紙を送って、トランプ大統領(当時)から恩赦を得るのを助けてほしいと懇願していたが、その手紙の中で、自身とゲーツ氏が17歳の少女と性交をしたと認めていた。
グリーンバーグ氏はその手紙に「私が解雇した弁護士たちは、MG(マット・ゲーツ氏のイニシャル)が(性的人身売買に)関与したことを知っている。彼が少女に金を払うために私に金を払い、彼と私が未成年の少女と性交したことを知っている」と記していたという。
(参考:https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.flmd.414007/gov.uscourts.flmd.414007.62.0.pdf)
司法省は起訴せず、捜査を打ち切り
疑惑が浮上したゲーツ氏について、当時、トランプ政権下で司法長官を務めていたビル・マー氏は捜査を開始した。司法省は、ゲーツ氏が未成年の少女と性交したかどうか、また、人身売買防止法に違反したかどうかについて捜査に乗り出した。その一環として、司法省はゲーツ氏の元恋人やグリーンバーグ氏の協力を得たものの、証人の信頼性に問題を見出し、2022年9月、ゲーツ氏を起訴せず、捜査に終止符を打った。
ゲーツ氏との性交を証言
一方、下院倫理委員会も2021年4月に、ゲーツ氏の調査を開始していたのだが、司法省の要請に応じて調査を延期していた。そして、2023年2月に司法省がゲーツ氏の性的人身売買の捜査を終了したと発表した後、独自に調査を再開した。
調査の過程で、ゲーツ氏が性交したとされる現在20代の女性は、下院倫理委員会に対し、ゲーツ氏は確かに自分が17歳の時に自分と性交したと証言。もっとも、この女性は、ゲーツ氏はその時自分の年齢は知らなかったと思うとも話したという。
女性2人に1万ドル以上支払う
下院倫理委員会はまた、グリーンバーグ氏やゲーツ氏が参加したとされる「セックスパーティー」に参加したという女性たちからの証言も得た。
ゲーツ氏と性交したと主張する2人の女性の代理人を務めるジョエル・レパード弁護士は、ABCニュースに対し「依頼人の1人が、下院倫理委員会に対し、ゲーツ氏が未成年者と性交しているのを目撃したと証言した。彼女は、2017年7月に行われたパーティーでプールに向かって歩いていた時、右を見ると、ゲーツ氏が17歳の友人と性交していたと証言した」と述べている。
レパード弁護士はまた、この2人の女性は性交の対価として、Venmoを通じて金銭を受け取ったと証言したと話している。また、性交はAirbnbや個人宅でのイベント、ニューヨーク旅行やバハマ旅行に同行した際など、2017年7月から2019年1月初めにかけて、10回以上行われたという。
下院倫理委員会が入手したVenmoやPayPalの記録によると、ゲーツ氏は、2017年7月から2019年1月下旬にかけて、女性2人に27回、総額1万ドル以上を支払ったとABCニュースが送金記録とともに報じている。
人を介してお金を送金
2021年4月には、米ニュースサイト「デイリー・ビースト」も、前述のグリーンバーグ氏やゲーツ氏と彼らと性交した女性たちとの間でなされたVenmoの取引記録を入手していた。
その取引履歴によると、2018年5月、ゲーツ氏はグリーンバーグ氏に900ドルを送金、その翌朝、グリーンバーグ氏は「授業料」や「学校」などの名目で、900ドルを3人の若い女性に送金していたという。
エア・ホッケー台の上で性交か
ところで、ゲーツ氏と未成年の少女の性交については、別の民事訴訟の中でも指摘されていた。それは、2023年、元フロリダ州下院議員でゲーツ氏の友人でもあるクリストファー・ドーワース氏が、前述のグリーンバーグ氏を相手取って起こした名誉毀損訴訟だ。グリーンバーグ氏が、2017年7月に、ゲーツ氏と未成年の少女がドーワース氏の邸宅で行われたパーティーで性交をしたと捜査官に話していたことが、訴訟の背景としてある。未成年の少女が、このパーティーで自分とゲーツ氏がエア・ホッケー台の上で性交している様子をドーワース氏がじっと見ていたと証言しているという。もっとも、ドーワース氏は2人が性交しているのを見なかった、このパーティーの時自身は在宅していなかったと述べている。
このパーティーに参加したという女性たちは、性交するためにドーワース邸の寝室に入れることができたこと、アルコール、コカイン、エクスタシー、マリファナにアクセスできたこと、ドーワース邸に到着するとカウンターの上のボウルに携帯電話を入れるよう求められたことなども証言している。
(参考:https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.flmd.414007/gov.uscourts.flmd.414007.194.23.pdf, https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.flmd.414007/gov.uscourts.flmd.414007.183.2.pdf)
ちなみに、ドーワース氏は、ゲーツ氏が司法長官に指名された後、問題の2017年のパーティーについて書かれている、グリーンバーグ氏に対する訴訟の記録を公開せずに削除するよう求める申し立てをしている。司法長官という政府の重要な閣僚に指名されたゲーツ氏の少女との性交が明るみに出るのを防ぐためだったのだろうか?
ゲーツ氏は議会に戻らない
下院倫理委員会は、ゲーツ氏に関する調査報告書を公表するかどうかについて投票を行う予定となっていたが、同氏が司法長官に指名された当日下院議員を辞職して元議員となったことから、その投票はできなくなった。下院は通常、元議員に関して調査したことは公表しないからだ。それでも、両党の上院議員からはゲーツ氏を司法長官として承認するか決める前に調査報告書を見たいとの声があがったり、ゲーツ氏と性交したと証言した少女たちの弁護士も同委員会に調査報告書を開示したりするよう求めていたのである。
司法長官の指名を辞退したゲーツ氏の今後の身の振り方が注目されたが、もし、同氏が下院議員に復帰した場合、下院倫理委員会は調査報告書を公表する可能性があると見られていた。
しかし、司法長官辞退の翌日の22日、ゲーツ氏は、議会には戻らないと言及。下院議員に復帰して、調査報告書が公表されるのを恐れたのかもしれない。
そもそもトランプ氏の性的暴行も認定されていた
トランプ次期政権の官僚人事では、元FOXテレビの司会者で、国防長官に指名されたピート・ヘグセス氏の性的暴行疑惑も取り沙汰されている。ヘグセス氏自身は否定しているが、2017年、共和党の女性党員の集まりで知り合った女性に性的暴行を加えた容疑で警察の調査を受け、同氏はFOXテレビから解雇されるのを恐れてお金で和解したと報じられている。
そもそも、次期大統領に就任するトランプ氏自身も、本人は否定しているものの、1990年代に、元コラムニストにニューヨークの高級デパートの更衣室で性的暴行を加えたことが2023年5月、民事裁判で認定され、500万ドルの損害賠償金を支払うよう命じられている。
この次期大統領にして、この性的スキャンダルが取り沙汰された閣僚人事あり、といったところだろうか。トランプ次期政権の船出が思いやられる。