空自F2後継機となる次期戦闘機の開発計画案が明らかに――防衛省の文書を入手
防衛省は7月7日、航空自衛隊F2戦闘機の後継となる次期戦闘機の大まかな開発計画案を自民党の国防議員連盟(衛藤征士郎会長)に提示した。新たな戦闘機開発は、総予算が数兆円となることが見込まれる大規模な国家プロジェクトだ。国民の理解を十分に得て進めていく必要があるだろう。その一助となるよう、この拙稿では、筆者が入手した防衛省の文書を中心にして、次期戦闘機をめぐる防衛省の検討状況を紹介したい。
●次期戦闘機のコンセプト
次期戦闘機について、防衛省は国産主導で開発を推進し、F2の退役が見込まれる2035年からの配備開始を目指している。現在保有するF2と同数の約90機の導入を想定している。
必要な性能や能力として、2018年12月に閣議決定された「中期防衛力整備計画」(中期防)でも記されているように、将来の航空優勢を確保・維持するため、ネットワーク化した戦闘の中核となる役割を果たすことが求められている。
15~30年後の将来の脅威に対し、統合運用のもと、航空自衛隊の戦闘機や早期警戒管制機のみならず、他の陸上自衛隊や海上自衛隊のアセット(装備)とネットワーク上で連接し、連携した戦闘において、その中核となり得る能力を保持することが要求されている。
こうしたネットワーク戦闘能力のほか、高いステルス性や探知性能に優れたセンサー、さまざまな妨害環境下でも作戦を継続できる電子戦能力、十分なミサイル搭載数、米軍とのインターオペラビリティ(相互運用性)が必要とされている。
●全体スケジュール
2024年度から試作機の製造を始め、2028年度開始の飛行試験などを経て、2031年度から量産初号機を製造する。
●当面のスケジュール
2020年12月末までに、開発パートナーに関する基本的枠組みを決定するとともに、2020年度中に全体インテグレーションを担う機体担当企業の選定と契約を行うとしている。これまでの実績を踏まえ、順当に決まるならば、三菱重工業が機体インテグレーションを契約、そして、IHIがエンジンの機体へのインテグレーションについて技術支援をする形になるだろう。
●日本の総力を結集した体制の構築を目指す
防衛省は、国産主導の国際共同開発路線に向かう中、開発途中や完成後であっても、日本が「改修の自由度」を確保することを目指している。国産のミサイルやレーダーが搭載できるかということにとどまらず、日本が独自のニーズに基づき、自らの判断によって、能力向上や装備品搭載を容易に実施できる体制の確立を図ろうとしている。
防衛省は、日本の「改修の自由度」を確保する上で、国内企業の関与が必要不可欠と考えている。
日本がこれまで蓄積してきた関連技術の活用、さらには自国での維持・整備・改修といった視点を含め、将来にわたって空自が能力を発揮するために必要な基盤を構築することを目指している。
●国際協力を視野
次期戦闘機については、中期防にもあるとおり、国際協力を視野に我が国主導の開発に早期に着手することになっている。防衛省は現在、インターオペラビリティの確保や費用対効果、技術的信頼性の観点から、米国と英国との間で協議を進めている。米国のパートナー企業としてはロッキード・マーティンやノースロップ・グラマン、ボーイングの名前が挙がっている。
●英国との国際協力も探る
防衛省は米軍とのインターオペラビリティの重要性を強調する一方、英国との国際協力を探っている。英国は現行の主力戦闘機「ユーロファイター・タイフーン」の後継として、次期戦闘機「テンペスト」の2035年までの実戦配備を目指している。日本のF2後継機と同じスケジュールでもあり、日英の連携が視野に入っている。英国のパートナー企業としては、BAEシステムズなど数社の名前が挙がっている。
●これまでに2277億円を投じる
防衛省は次期戦闘機については、2009年度に「将来戦闘機に関する研究開発ビジョン」を公表して以降、これまでに2277億円の経費を投じ、戦闘機開発に必要な機体、エンジン、アビオニクス(航空電子機器)など一連の戦闘機関連技術の蓄積・高度化を図ってきた。防衛装備庁は「戦闘機の開発に移行可能な技術を国内に蓄積できたものと認識している」と述べている。
(参考記事)
●Japan aiming to start production of new fighter aircraft in FY 2031