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共和党員の期日前投票率が上昇、民主党員では低下 トランプ氏勝利の予兆か? 米大統領選

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 11月5日の大統領選の投票日を前に、期日前投票が行われているアメリカ。

 期日前投票では、一般的に、民主党が優位に立つ傾向がある。2020年の大統領選は、特にコロナ禍だったことから、期日前に郵便投票する民主党支持者が多かった。

 一方、共和党支持者は歴史的に選挙日当日に投票する傾向がある。2020年の大統領選では、特に、トランプ氏が郵便投票は不正が行われる可能性があると非難したことから、多くの共和党支持者が選挙日当日に投票した。

民主党のリードは2020年時の半分以下に

 しかし、今回の選挙は、ちょっと様相が違うようだ。

 フロリダ大学選挙研究所の追跡調査によると、米国時間10月25日時点での期日前投票者数は3,500万人を超えている。うち、政党登録をしている党員では、民主党員が約710万人、共和党員は約620万人が期日前投票しており、民主党員の方が共和党員よりも数多く期日前投票している状況はこれまでと変わりがない。しかし、2020年時と比べて、今年は、共和党員の期日前投票率が上昇し、反対に、民主党員の期日前投票率が低下しているのだ。

 同研究所によると、2020年時は、政党登録ができる州で期日前投票された票の31%が共和党員による票だったが、2024年では36%へと増加。一方、2020年時は45%だった民主党員による票が、2024年では41%へと減少している。つまり、2020年時の党員による期日前投票では、民主党は共和党を14ポイントリードしていたものの、2024年は5ポイントのリードと2020年時の半分以下に留まっているのである。

激戦州での共和党員の期日前投票率も上昇

 激戦州でも同様の状況が見られる。政党登録ができる4つの激戦州における両党の党員による期日前投票率を2020年と2024年の同時点で比較した場合、共和党員票の占める割合は4年前と比べて増加し、逆に、民主党員票の占める割合は減少している。

 ペンシルベニア州では、共和党員票の割合は19%から29%に増加、一方、民主党員票の割合は72%から61%に減少し、無党派層票は両年とも変わらず9%を占めている。

 ノースカロライナ州では、共和党員票の割合が28%から34%に増加、民主党員票の割合は43%から35%に減少。無党派層票は29%から31%に増加。

 ネバダ州では、共和党員票の割合は33%から40%に増加、民主党員票の割合は45%から37%に減少。

 アリゾナ州では、共和党員票の割合は34%から42%に増加、民主党票の割合は44%から36%に減少。

 共和党員の期日前投票率が上昇した背景には、4年前は郵便投票を非難していたトランプ氏が、今回は郵便投票を奨励したということがあると考えられている。

 また、民主党員の期日前投票率が低下したことは、コロナ禍の2020年に期日前投票した民主党員が今年は選挙日当日に投票することを示唆しているのではないか、反対に、共和党員は選挙日当日の投票から期日前投票にシフトしているのではないかという見方もある。

トランプ陣営にとっては良いこと

 共和党はジョージア州でも記録的な期日前得票数を出しているが、期日前投票率が上昇している状況について、トランプ陣営のスポークスマンは「すべての激戦州において、2、4年前と比べて、獲得した期日前投票の割合ははるかにいい。トランプ氏は11月5日の勝利に向けて好位置にいる」と自信を見せている。

 一方、ハリス陣営のスポークスマンは「期日前投票の結果は、共和党の投票率の上昇を示すことにはならない。トランプ氏は2020年時のように期日前投票を非難しなくなったため、コアなトランプ支持者が期日前投票しているのだ」との見方を示している。

 フロリダ大学選挙研究所のマイケル・マクドナルド教授は、USA Today紙で、2020年時には選挙日当日に投票したトランプ支持者が今年は期日前投票している状況について、確定的な結論を出すには時期尚早であり、歴史的に強い選挙日当日の共和党の得票を食いつぶす要因になりかねないとしつつも、「トランプ陣営を支持する有権者の多くが期日前に投票していることはトランプ陣営にとっては良いことだ」と述べている。

 4年前と比べて党員の期日前投票率が上昇した共和党だが、果たして選挙日当日にどれだけ得票できるのか? 期日前投票率が上昇した分、選挙日当日の得票は減るのか? 党員の期日前投票率が低下した民主党は、投票日当日はどれだけ得票できるのか? 大統領選の投票日まで残すところあと10日である。


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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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