“ラストオーディション”でアピールしたBCリーガー~ドラフト候補の投手陣~

最終戦が行われた舞洲サブ球場にて集合写真

■ラストオーディションでアピール

試合開始前の選手たち
試合開始前の選手たち

 “ラストオーディション”は幕を下ろした。

 東京ヤクルトスワローズ横浜DeNAベイスターズ阪神タイガースオリックス・バファローズのそれぞれファームを相手に開催された、ルートインBCリーグの選抜メンバーによる試合。福井ミラクルエレファンツ田中雅彦監督の言葉を借りて“ラストオーディション”と名付けたが、ドラフトを前にまさに最後の最後のアピールの場となった。

アップ中の投手陣
アップ中の投手陣

 残念ながら初戦のスワローズ戦は七回までで降雨コールド、翌日のベイスターズ戦は雨天中止となったが、限られたイニングの中でBCリーガーたちは存分に暴れまわった。

 150キロ超えを連発する投手もいれば、バックスクリーンに放り込む打者、またガッツあふれる好守を見せる野手もいて、それぞれに持ち味を発揮した。いずれもスカウトたちを唸らせ、スタンドに駆けつけた野球ファンを沸かせた。

話し込むコーチと選手(左から片山捕手、片山コーチ、長谷川投手)
話し込むコーチと選手(左から片山捕手、片山コーチ、長谷川投手)

 この中から投手陣にスポットを当てよう。今回、参考にしたいのがブルペン捕手の“手応え”だ。昨年に続いて選抜試合すべてに帯同し、全投手の投球を受けたTブルペン捕手(ご本人の希望により、名前と顔は伏せる)は稀有な存在だ。

 「ボールを捕ることが好きだから。プロに入る前のすごい球を受けたい」と戸田球場、ベイスターズ球場、鳴尾浜球場、舞洲サブ球場すべてに自費で駆けつけてくれたのだ。BCリーグはこういう人に支えられているのである。

 ではTブルペン捕手の感想を交えながら、何人かの投手をピックアップする。

(注1:登板結果の表記は⇒1.…9/20・スワローズ戦、2.…10/2・タイガース戦、3.…10/3・バファローズ戦)

(注2:年齢表記は2018年の満年齢)

■新潟の豪腕・長谷川凌汰

長谷川凌汰
長谷川凌汰

長谷川 凌汰(はせがわ りょうた)》新潟アルビレックス/福井商高⇒龍谷大

1995年11月8日(23歳)/福井県

188cm 98kg/右投左打/A型

2.2回 2安打(1本塁打) 1三振 0四球 1失点(自責1) *先発

3.1回 0安打 1三振 0四球 0失点

*選抜試合 最速⇒153キロ

長谷川凌汰
長谷川凌汰

 1軍経験者がズラリと並んだタイガース打線に対し、初回から飛ばしていった長谷川投手。スコアボードに何度も表示される「150」の数字にスタンドはどよめいた。

 二回はやや甘く入ったストレートをウィリン・ロサリオ選手に特大ホームランにされ意気消沈したのか、その後はややスピードダウン。それでも最後は山崎憲晴選手を併殺に仕留めた。

 翌日はバファローズ打線を三者凡退に。ラストバッター・根本薫選手には力を込め、自己最速となる153キロで空振り三振に斬った。

長谷川凌汰投手

 「NPBに入っている自分よりレベルの高い選手との対戦、力比べが純粋に楽しかった。

 タイガース戦は、ロサリオ選手には激しいの打たれましたね(笑)。中途半端なボールを運ばれてしまって…。そういうボールを投げたことが反省。今後の課題として持っておきたい。

 1イニング目はシーズン中にもなかったくらいよかった。2イニング目に行く前のキャッチボールでバランスが崩れてしまって、バランスがわからないまま投げてしまった。

 ああいうことをすると『自分のフォームを見つけられていない。いいときと悪いときと差がある』と見られてしまう。そこはやってはいけないことをやってしまったなと。通そうとしすぎたというか、ボールでもいいかなと思ったのが弱くなって中に入ってしまった。

 バファローズ戦での自己最速153キロは狙いました。最後のバッターにはフォークで決めたかったけど、その前に当てられてファウルになったので、まっすぐの状態もよかったし、ちょっと力を入れた。151キロ出て、今日は出るなと思った。

 菅谷さん(富山)に触発されて、より速い球を投げたいって前日から安河内さん(武蔵)ともLINEで言ってたんで。普段から安河内さんにはLINEで質問したりしている。すごいまっすぐを投げる人なんで、いろいろ教わってます」

Tブルペン捕手

 「『いいぞ、いいぞ』と聞いていたので、かなり期待を持っていた。

 タイガース戦では内山(栃木)が捕りにきたので隣で見ていたが、横から見た感じでも期待どおりやなと。

 体つきもいいし、お尻もごっつい。これくらいのボールは放るやろうと思った。

 バファローズ戦で実際に受けて、ボールの回転がえぐかった。ボールが重い!!評価されるだけあるなと思っていたら153キロ。やっぱ違いましたわ」

■富山のクローザー・菅谷潤哉

菅谷潤哉
菅谷潤哉

菅谷 潤哉(すがや じゅんや)》富山GRNサンダーバーズ/福井工大福井高⇒帝塚山大⇒武蔵

1994年11月1日(24歳)/福井県

180cm 85kg/右投右打/B型

1.1回 0安打 1三振 0四球 0失点

2.1回 0安打 0三振 0四球 0失点

3.1回 1安打 1三振 0四球 0失点

*選抜試合 最速⇒152キロ

菅谷潤哉
菅谷潤哉

 雨の中のスワローズ戦では、スピードガン表示が辛めの戸田球場ながらチーム最速の147キロを計測。1軍クラスの西田明央奥村展征鵜久森敦志の3選手をピシャリ!

 タイガース戦では自己最速を更新する152キロを叩き出し、降板後は満足そうな笑顔を見せた。

 バファローズ戦ではいきなり味方の失策によって得点圏にランナーを背負ったが、むしろセットでの投球、クイックを披露できるとばかりに落ち着いたマウンドさばきを見せた。

菅谷潤哉投手

 「スワローズ戦はまっすぐが指にかかってよかったので、まっすぐ主体で押せた。

 タイガース戦はいつもより下と上のバランスを意識して投げた。意図したところに投げられたし、ブルペンから感触よくて150以上投げられるんじゃないかというのがあった。初戦よりまっすぐの質はよかった。

 今年は2連投目がよくなかったので、翌日もこのピッチングができるか。1球しか投げなかった変化球も引っかかってしまったので、変化球の精度も上げたいと思った。

 バファローズ戦は、前日あまり使えなかった変化球がゾーンへいってくれた。違う組み立てもできたのがよかった。まっすぐもいいところに投げられたし、早めに追い込めたことで試したかった縦スラで振らせることもできた。

 苦手だった2連投目でもしっかり投げられて、一番よかった」

Tブルペン捕手

 「スワローズ戦は立ち投げだけ捕ったが、雨の中でもよかった。

 タイガース戦も立ち投げだけ捕って、座ってからは柴田(滋賀)が捕っているのを横から見ていたがドスンと重い感じで、ブルペンがものすごくよかったので150は出るなと思った。

 バファローズ戦でのブルペンは最悪だった。まずストライクがこなかった。左打者の死球になるところよりひどいところにきた。ストライク入るのかなと心配していたが、マウンドではすごくよかったのでホッとした(笑)」

■超強気の注目株・安河内駿介

安河内駿介
安河内駿介

安河内 駿介(やすこうち しゅんすけ)》武蔵ヒートベアーズ

1994年2月8日(24歳)/福岡県

174cm 79kg/右投両打/O型

1.1回 0安打 1三振 0四球 0失点

2.1回 1安打(1本塁打) 0三振 0四球 1失点(自責1)

3.1回 1安打 0三振 0四球 0失点

*選抜試合 最速⇒147キロ

安河内駿介
安河内駿介

 スワローズ戦では自慢のストレートだけでなく103キロのカーブで見逃し三振を奪うなど、硬軟織り交ぜたピッチングで魅せた。

 タイガース戦では江越大賀選手に144キロを弾き返され左翼ネットの上部を揺らされたが、それ以外は3人で抑えた。この日の最速は146キロ。(ちなみにシーズン中の被本塁打は0である)

 バファローズ戦では先頭打者にヒットを許すも攻めのピッチングで後続を抑え、片山雄哉捕手(福井)の肩にも助けられ無失点に。

安河内駿介投手

 「スワローズ戦は、もっとまっすぐで押したかったけど、調子がよくなくてブルペンでもまっすぐの手応えがなかったので、キャッチャーに任せた。

 雨は気にならなかった。雨より抑えないとという気持ちだった。

 タイガース戦はブルペンから力んでいて、長谷川の150キロ連発を見て意識してしまった。

 バファローズ戦も力み倒しましたね(笑)。先頭を出したけど、ランナーが二塁にいても三塁にいてもバッターを打ち取ったらいい。ただ、首の使い方や間の取り方は考えてやっている。

 1年と決めて、今年のドラフトでダメだったら引退というつもりでやってきたので、ビシッと終わりたかった。まさかのまったく(自分のよさを)出せないで終わったBC選抜…!悔しいです!!」

Tブルペン捕手

 「スワローズ戦で印象に残っているのは、『足長に高めに構えてください』と言われたこと。普通は低めにピタッと構えるものだけど、自分の中で何かあるのだろう。

 フォームがきれいで、ヤクルトにいた川島亮みたいなしなやかな感じ。横から見てたら腕がしなっているのがわかる。菅谷や長谷川とはタイプが違う。

 まだまだお尻が小さいように思うし、もっと体ができたらもっといい球を投げられるのではないか。伸びしろを感じる。

 性格的に強気な感じがしたので、『ドSやろ?』と訊いたら『ボクはニュートラルですよ』と言っていた(笑)。

 タイガース戦はブルペンではそんなに投げなかった。あまり全力で投げず、軽くキャッチボール程度だった。

 バファローズ戦はけっこう投げたね。自分もわかってきていい感じで捕ってあげられるようになったので、ビュンビュン放ってくれた。速いからといってガチガチに構えるとうまく捕れない。リラックスして捕らないと。特に彼には腰高に構えて、ね。そしたらいい感じで放ってくれた。

 いいフォームだからケガしにくいんやろうという話はした。ほんとうにきれいなフォーム」

■BC5年目の苦労人・藤岡雅俊

藤岡雅俊
藤岡雅俊

藤岡 雅俊(ふじおか まさとし)》石川ミリオンスターズ/桐蔭学園高⇒福井

1994年1月26日(24歳)/神奈川県

176cm 80kg/右投右打/A型

1.1回 0安打 0三振 0四球 0失点

2.1回 0安打 2三振 0四球 0失点

*選抜試合 最速⇒145キロ

藤岡雅俊
藤岡雅俊

 スワローズ戦、タイガース戦ともに貫禄を感じさせるピッチングで、いずれも三者凡退で終えた。

 自己最速の149キロには及ばなかったが、表示される数字がすべてではないことは本人もわかっている。しっかりと相手との勝負ができた。

藤岡雅俊投手

 「シーズン中よりスピードが出なかったので手応えはよくないけど、結果としてはよかった。

今年のドラフトで名前を呼ばれなかったら辞めようと、自分の持っているものは全部出したいと思って臨んだ。年齢も高いので150キロ出してっていうより、それなりの安定した形は出せたかな。

 NPBと対戦して怖いという感じはなかった。普通にやっていけそうだなと思った。BCも長いし、これまでもNPBの選手とは対戦してきたので」

武田勝監督石川ミリオンスターズ

 「彼らしさが出ていて、攻める気持ちがボールに顕れていたし、いつもどおりのピッチングができていた。すべてやりきったね。

 石川にきた今年は、福井にいたときより気持ちも安定してマウンドさばきもできていた。成長を見せてくれた。

 彼がNPBにいけるよう今後もサポートしながら練習にも付き合いますよ」

Tブルペン捕手

 「スワローズ戦は普通やったね。落ち着いていた。

 タイガース戦は初戦よりよかった。特別すごい球というより、場馴れしてるというか場数を踏んでるという感じやね。若くてビュンビュンいくというより、落ち着いたマウンドさばき。若いピッチャーに言わせると、『完成されている。完成度が違う』とのことだった。

 降板後に本人と話したら、『まっすぐで空振りがとれたのでよかった』と言っていた」

■セーブ王・齋藤英輔

齋藤英輔
齋藤英輔

齋藤 英輔(さいとう えいすけ)》信濃グランセローズ/青森山田高⇒青山学院大⇒鷺宮製作所

1991年8月19日(27歳)/福岡県

180cm 82kg/右投両打/O型

1.2回 5安打 1三振 0四球 3失点(自責3) *先発

2.1回 0安打 1三振 2四球 1死球 0失点

*選抜試合 最速⇒148キロ

齋藤英輔
齋藤英輔

 先発したスワローズ戦では力みがあったのか、いきなりのヒットと盗塁で立て直す間もないまま5安打で3失点したが、次のイニングでは力のある球を投げ込んでクローザーの面目躍如はできた。

 タイガース戦では最後の1イニングに登板。3四死球を出し、熊谷敬宥選手には二盗、三盗を許しながらも無失点で踏ん張った。

齋藤英輔投手

 「スワローズ戦は先発だからというのはなかったけど、やはり緊張から力みもあった。自分の持ち味であるまっすぐで押す、それができなかったのが残念だった。

 タイガース戦はそれを踏まえてまっすぐで押そうとマウンドに上がった。やはりいいところをアピールしようと力んだ。キャッチャーも普段(のチームメイト)と違うし、首振りましたね。

 死球、四球ではアピールしきれていない。年齢も年齢なので、これでは…」

Tブルペン捕手

 「スワローズ戦は先発だからか、ちょっと抑え気味だったのかな。普段はクローザーだから。そんなにはよくなかった。ボールが高かったね。

 タイガース戦では一転、ボールの勢いが全然違った。ボールのスピンがすごくよかった。148キロまで出たしね。やはり選抜に選ばれるだけの選手なので、修正してきたのかなと」

 以上がドラフト対象投手だ。

■NPB復帰を目指す古村徹

 そしてもうひとり、元横浜DeNAベイスターズ古村徹投手を紹介する。ドラフト対象ではない元NPBの選手が選抜試合にメンバー入りするのは異例だ。それだけBCリーグ側の推す気持ちが強いのだ。(古村投手のこれまでの経緯については、後の記事で)

古村徹
古村徹

古村 徹(こむら とおる)》富山GRNサンダーバーズ/茅ヶ崎西浜高⇒横浜DeNA⇒愛媛(四国IL)

1993年10月20日(25歳)/神奈川県

180cm 78kg/左投左打/B型

3.1回 0安打 2三振 1四球 0失点

*選抜試合 最速⇒145キロ

古村徹
古村徹

 バファローズ戦の1戦のみの参加だったが、さすがは元NPBという格の違いを見せた。

 選抜チームが勝ち越したあとの九回裏、1点リードの場面でもまったく動じず、ストレートと変化球の秀逸なコンビネーションで堂々としたピッチングを見せた。

古村徹投手

 「手応えはよくなかったですね。もっと出せたかなと思った。全体的にコントロールも球速も。でも悪い中で変化球でまとめられた。納得はいってないけど…。

 ブルペンでもよくなかった。実戦が丸1ヶ月空いていたのもあるかもしれないけど。

 NPB復帰を目指す以上、目に見える数字を残さなきゃと思ってやってきた。今年は食事なども試行錯誤したし、全部を野球に捧げたシーズンでした」

Tブルペン捕手

 「めちゃくちゃよかった。事前に元NPBって小耳にはさんで、その先入観で捕ったけど、4日間に捕った中で一番ボールの回転が効いててよかった。軽く投げてビュッとくる。

 こっちもだいぶ目が慣れてきた中で捕ったけど、それでも素晴らしいと感じた。めちゃくちゃ速いわけじゃないけど、いい回転のボールがくる。ボールが勝手にミットに入ってくる感じ。いいボールってそう。

 こっちも捕る感覚がよくて、それを感じてくれたのかビュンビュン放ってくれて嬉しかったね。スライダーが一番曲がっていた。

 あとからネットで調べて事情を知ったけど、体もできてるし、プロテスト受けられるくらいに回復してスカウトに評価されるくらいになってるんやとわかった。

 最後、抑えて試合後に握手してくれたのが嬉しかったね」

 運命のNPBドラフト会議は10月25日。はたして何人のBCリーガーの名前が呼ばれるか、要注目だ。

(撮影はすべて筆者)

【2018年シーズン成績】

長谷川 凌汰  防御率3.09 32試合 87.1回 6勝5敗4S  

菅谷 潤哉   防御率4.54 37試合 37.2回 2勝1敗11S

安河内 駿介  防御率2.37 38試合 38回  1勝0敗6S

藤岡 雅俊   防御率3.06 30試合 32.1回 3勝0敗5S

齋藤 英輔   防御率3.12 40試合 40.1回 3勝0敗13S

古村 徹    防御率2.60 33試合 34.2回 1勝1敗1S 

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