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ドラフト会議に向けて“ラストオーディション”ーBC選抜チーム対NPBファーム

土井麻由実フリーアナウンサー、フリーライター
選抜試合を経てドラフト指名されたヤクルト・沼田拓巳投手(左)と楽天・寺岡寛治投手

■ラストオーディション

福井ミラクルエレファンツ・田中雅彦監督
福井ミラクルエレファンツ・田中雅彦監督

 「BCリーグの試合は、オーディションの場だ」ー。

 こう表現するのはルートインBCリーグ福井ミラクルエレファンツ田中雅彦監督だ。いつ、どこで、誰に見られているかわからない。いかなるときも全力でアピールすることを忘れるな、と説く。明日のプロ野球選手を夢見て奮闘するBCリーガーにとっては、もっとも重要なことだ。

 10月25日のドラフト会議に向けて、その“ラストオーディション”の幕がまもなく上がる。昨年からはじまったBCリーグ選抜チーム対NPB日本プロ野球機構)のファームチームとの対戦だ。

 昨年は千葉ロッテマリーンズ横浜DeNAベイスターズ読売ジャイアンツオリックス・バファローズ、それぞれのファームと計6試合組まれた。

 今年も東京ヤクルトスワローズ横浜DeNAベイスターズ阪神タイガースオリックス・バファローズ、それぞれのファームとの計4試合の実施が予定されている。

 NPBを目指すBCリーガーにとっては最後のアピールの場、ラストオーディションとなる。

 BCリーグは独立リーグだ。選手にはシーズン中、給料も支払われている。つまり「プロ野球選手」なのだ。しかしBCリーガーたちは常々「プロに行きたい」と口にする。彼らにとっての「プロ」とはNPBのことで、そのトップステージを目指すためにBCリーグで牙を研いでいる。この選抜試合は彼らにとって、人生を賭けた戦いになる。

■選抜試合の意義と手応え

昨年の選抜試合のベンチ
昨年の選抜試合のベンチ

 昨年、BCリーグからNPBにドラフトで指名されたのは支配下選手4人育成選手2人だ。この6人も選抜試合に出場し、NPBのスカウト陣の前で大いにアピールした。

 この選抜試合の実施意義、手応えをBCリーグの村山哲二代表はこう語る。

 「スカウトにとっては最終チェックになるし、こちらとしては最後の最後、指名順位を上げたい、育成指名なら本指名になるように…という思いです。

 さらにシーズン中にジャイアンツ3軍との試合はやっていますが、そこで成績を出している選手たちが、はたして2軍とやったときにはどうか。真の実力を見極める実戦の場にもなります」。

 「また、こちらからこういう働きかけをすることで、NPB各球団スカウトのトップが来てくださる。普段の試合ではなかなかスカウト部長までは来ていただけない。

 それが昨年のベイスターズ戦では60人ものスカウト陣が来てくださったし、なんと高田GM(ベイスターズ)まで来てくださった。こんなことはなかなかないことです。

 もちろん各球団さん、普段からビデオも撮って報告は上げてくださっているんですが、“最終決裁者”に目の前で見ていただくというのは、非常に大きなことです」。

 実際に昨年、この選抜試合で評価を上げた選手もいる。

■プロ入りした選手

 では選抜試合を経てプロ入りした選手は、どのようにとらえているのだろうか。

東北楽天ゴールデンイーグルス・寺岡寛治投手
東北楽天ゴールデンイーグルス・寺岡寛治投手
東京ヤクルトスワローズ・沼田拓巳投手
東京ヤクルトスワローズ・沼田拓巳投手

東北楽天ゴールデンイーグルスに7位指名された寺岡寛治投手

 「僕としてはあってよかったと思います。確実にスカウトの方が来てくださいますし、アピールにはもってこいの場。

 なにより高いレベルを経験できたことで、いい刺激になりました」

東京ヤクルトスワローズに8位指名された沼田拓巳投手

 「スカウトの方に最終チェックをしてもらえますね。プロ相手にして打者なら打てるか、投手なら抑えられるか。そういうのを見てもらえる。

 この試合で印象を残せるチャンスはたくさんありますね」

 いずれもこの選抜試合をプラスだったととらえている。

■今年の選抜試合に懸ける選手

昨年の選抜試合での福井ミラクルエレファンツ・片山雄哉捕手
昨年の選抜試合での福井ミラクルエレファンツ・片山雄哉捕手

 一方、選抜試合には出たが指名漏れした選手もいる。しかしこの試合でさまざまなことに気づかされたことによって、今季の成績をグンと伸ばした。福井ミラクルエレファンツの片山雄哉捕手だ。

 昨年の選抜試合での片山選手の出番は1試合。それも代打で登場して三振、そのあとマスクをかぶったが2イニングだけだった。

 試合後もメディアに話を聞かれたが、内容は受けたピッチャーのことだった。自分個人への取材はなかったことに落胆もした。

 「自分がそんなに注目されてないんだなというのが悔しかったし、プロ行きそうっていう若い子たちが取材を受けてる姿を見るだけで刺激になりました」。

今年に懸けている片山雄哉捕手
今年に懸けている片山雄哉捕手

 このことが着火剤になって片山選手に火を点け、生まれ変わらせた。「プロに行くんだ」という思いがより強固になり、プレーはもちろん、生活、態度、すべてを変貌させた。そしてもちろん成績も伴って、今年は押しも押されもせぬ“プロ注”になった。

 「選抜試合がきっかけになったんだね。ひとりでもそういう選手がいたってことは、あの試合の意味は大きいよね」。福井の田中監督も目を細め、片山選手のドラフト指名を後押しする。

 今年もBCリーグ選抜選手から何人がドラフト指名されるか。要注目だ。

(撮影はすべて筆者)

【選抜試合の日程】

*9月20日 東京ヤクルトスワローズ(戸田球場)13:00

*9月21日 横浜DeNAベイスターズ(ベイスターズ球場)13:30

*10月2日 阪神タイガース(鳴尾浜球場)12:30

*10月3日 オリックス・バファローズ(舞洲サブ球場)13:00

【選抜メンバー】

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フリーアナウンサー、フリーライター

CS放送「GAORA」「スカイA」の阪神タイガース野球中継番組「Tigersーai」で、ベンチリポーターとして携わったゲームは1000試合近く。2005年の阪神優勝時にはビールかけインタビューも!イベントやパーティーでのプロ野球選手、OBとのトークショーは数100本。サンケイスポーツで阪神タイガース関連のコラム「SMILE♡TIGERS」を連載中。かつては阪神タイガースの公式ホームページや公式携帯サイト、阪神電鉄の機関紙でも執筆。マイクでペンで、硬軟織り交ぜた熱い熱い情報を伝えています!!

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