石狩レッドフェニックスの首脳陣は阪神OB 坪井智哉監督を支える的場寛一コーチは高いレベルを求める
■首脳陣に元虎戦士の3人
北の大地に阪神タイガースOBが集結するチームがある。
坪井智哉監督に的場寛一野手総合コーチ、そして金村曉投手コーチが在籍する独立リーグ・北海道フロンティアリーグの石狩レッドフェニックスだ。3氏とも、かつてはタテジマに袖を通した虎戦士たちである。
開幕を目前に控え、関西の地でキャンプを行ったレッドフェニックス。熱い思いで選手たちと向き合う3年目の坪井監督を支える的場コーチ、金村コーチに話を聞いた。今回は的場コーチの話を伝える。
(坪井監督について前回の記事⇒阪神OBたちが関西に里帰り! 坪井智哉監督が率いる石狩レッドフェニックスはグラチャン初勝利を目指す)
■的場寛一 野手総合コーチ
的場コーチは1999年ドラフトの1位(逆指名)で九州共立大学からタイガースに入団した。中日ドラゴンズ、西武ライオンズ、大阪近鉄バファローズも逆指名枠を争ったほどの高評価で、ルーキーイヤーから1軍で活躍した。しかし複数回の手術を受けるなど、そのプロ野球人生は常にケガと隣り合わせだった。
2005年シーズン限りでプロに区切りをつけ、2006年からは社会人野球のトヨタ自動車に入ると、そこで再び花を咲かせた。数々のJAVA大会で優勝に貢献し、MVPを獲得。2009年の都市対抗、2010年の日本選手権で大会優秀選手に輝き、社会人ベストナインにも選ばれた。2011年には日本代表にも選出され、翌年のシーズン後に引退した。
引退後はさまざまな仕事を経験し、現在はプロテインやサプリメントを扱う「DNS」の個人代理店や、エステサロンのオーナーなどの事業を展開するかたわら、ラジオ出演やイベントMCなど多方面で活躍している。
■常駐ではないからこそ気づく変化
坪井監督が就任したとき、「野手コーチおらへん。ちょっとでもいいから手伝って」と監督直々に頼まれた。自身の仕事もあったが、「仕事の邪魔にならないような程度でいいから」との気遣いもあり、時間の許せる範囲でコーチ業を引き受けた。坪井監督と同じく3年目になる。
「僕がゲームにいられないときでも、『内野手がこうやった』とか『こういう事例が起きたとき、どうしたらええ?』とか報告や相談があるので、意見を言ったりしてコミュニケーションをとっています」。
監督が頼りにしてくれていることを意気に感じている。
コーチ業は常駐ではなく月に1度、1週間くらいというペースだが、離れている3週間の間の選手の成長が楽しみだ。
「『お!なんかうまくなってるな』とか、そういう姿を見ると嬉しくなりますね。でも、選手によって差がある。前月に『これをやってほしい』って取り組む課題を出すんやけど、コツコツやってるやつとやってないやつの差が大きい。見たらすぐわかります。全然変わっていないやつもいるから」。
継続することの重要性を、自身もあらためて実感するという。
■野球とビジネスの相関関係
忙しい仕事の合間を縫ってのコーチ業だが、得ることも多いという。
「まず、元気をもらえますね。あと、選手たちは夢を追っている。それを見て、自分自身も夢に向かってどういうふうに取り組んでいったらいいのかっていうのを考えさせられるし、仕事に活かすことができている。その場で一喜一憂するんじゃなくて、長い目で見て年間で取り組んだほうがいいなとか、ゴールを作って、そこに向かっていくことが大切だなとか、その確認作業ができたりしています。野球もビジネスも通じるものがある。そこは自分自身の勉強にもなっていますね」。
若い選手たちとのやり取りも、活力源になっているという。
さらに、訊かれたことに的確に答えるために自身も野球を深く勉強し、それをどう伝えるかを思案する。
「選手時代は自分ができたらよかったけど、教えるとなると相手のあること。自分とは違う人間にどう伝えたらわかるのかなとか、自分の感覚だけじゃ伝わらないことも多いので、アプローチの仕方はいくつか持ってなあかんなと思います」。
これまた、そういった若い世代への伝え方は自身のビジネスにもつながっていると語る。
■野手に求めるのは高いレベル
坪井監督の下で3年目となるが、どんな監督なのだろうか。
「めちゃめちゃ負けず嫌い(笑)。選手時代と一緒(笑)。もう、練習試合でもリードされてたら、そういう雰囲気が出てくるから、僕とキャプテンが察して選手たちに『元気出せよー!』とか言って、雰囲気を変えるようにしています(笑)」。
坪井監督は「常にNPBとして考えている」と高いレベルを追求しているのだという。
「だから厳しいし、走塁とかも細かい。NPB同様にやっている。僕もそう。NPBで練習してきた意識というか、そんな感じで彼らに向き合っていますね」。
NPB出身の自分たちが指導する意味は、そこにあるのだとうなずく。
独立リーグの日本一決定戦であるグランドチャンピオンシップには昨年、的場コーチも帯同し、他リーグのレベルを肌で感じた。
「とくに投手力が高かった。どれだけバッター陣があのときの球速や球筋を頭に置いて、今年取り組めるか。もう一つステージを上げていかないと」。
そのレベルを知ったことで、野手陣にはより一層の成長を促している。
■ドラフトにかかる選手を
4月の関西遠征では、充実した笑顔を見せていた的場コーチ。
「毎朝5時半、6時に起きてね、夕方5時ごろまでやっている。久々にキャンプっていうのを感じながら(笑)。こんなに一日中まるまる体を動かすことないから、もう肩がバリバリ(笑)」。
そう言いながらも、実に楽しそうだった。やはり野球が大好きなのだ。
「今年も全国(グラチャン)に行って、そこでNPBのスカウトの目に留まるようなプレーヤーに育てたい。ドラフトにかかるような、ね。育成でもなんでもいいから。それが次のステージというか目標」。
自身も輝いた日本球界最高峰の舞台を、教え子たちも味わってほしい。そのために、今季も坪井監督支えながら尽力する。
今年もマストであるリーグ優勝、そして初のグラチャン勝利に向けて5月4日、2024年シーズンの幕を開ける。
NPBへの輩出も併せて、坪井監督や的場コーチ、金村コーチら元虎戦士たちの手腕を楽しみにしたい。
*次回は金村曉コーチの話を届ける。
(写真撮影はすべて筆者)
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