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石狩レッドフェニックスの首脳陣は阪神OB タイガースで最強の投手王国を築いた金村曉コーチが新加入

土井麻由実フリーアナウンサー、フリーライター
石狩レッドフェニックス・金村曉コーチ

■新加入のタテジマ戦士とは

 かつてタテジマに袖を通した虎戦士たちが、北国のチームに集結した。独立リーグ・北海道フロンティアリーグ石狩レッドフェニックスである。2021年の発足時は監督不在だったが、翌2022年から坪井智哉氏が監督を務める。

 坪井監督の懐刀は3年目の野手総合コーチ・的場寛一氏だ。そして、新たに今年から投手コーチとして金村曉氏が加わった。3氏とも阪神タイガースで選手として、コーチとして活躍した。

 開幕目前の4月は、なじみある関西の地でキャンプを張った。どんな思いで今季に臨むのか。今回は金村コーチの話を伝える。

(的場寛一コーチの前回記事⇒石狩レッドフェニックスの首脳陣は阪神OB 坪井智哉監督を支える的場寛一コーチは高いレベルを求める

石狩レッドフェニックスの坪井智哉監督
石狩レッドフェニックスの坪井智哉監督

■金村曉 投手コーチ

 金村コーチは仙台育英高校から1994年ドラフトの1位で日本ハムファイターズ(のちに北海道日本ハムファイターズ)に入団すると、高卒1年目から1軍で登板。1998年には先発として5完投を記録し、最優秀防御率のタイトルにも輝いた。初のオールスターゲームにも選ばれている。

 2002年から4年連続2ケタ勝利を達成するなど、ファイターズのエースとして君臨。2007年オフにタイガースにトレード移籍すると、その2年目に初勝利を挙げたが、ケガなどもあって3年間で31試合の登板にとどまった。

 2010年限りでタテジマに別れを告げると、翌年はBCリーグ信濃グランセローズでプレーしたが、右肩の状態が安定せず、現役を引退した。

 2012年から2015年までテレビやラジオ、新聞で野球解説者、評論家としてネット裏から野球を見たのち、2016年から金本知憲監督に招聘されてタイガースの投手コーチを務めた。矢野燿大監督に代わっても続投し、12球団随一の投手王国を築き上げた。2022年のチーム防御率は2.67で12球団トップ、中継ぎに限ると同2.39でリーグトップだった。

 ユニフォームを脱いだ昨年からはまた、テレビやラジオ、新聞、そしてYouTubeでも活躍している。

選手の話をじっくり聞く金村曉コーチ
選手の話をじっくり聞く金村曉コーチ

■始まりは偶然の出会い

 縁というのは不思議なものだ。「普通にプライベートで食事をしていたら、たまたま隣の席に球団代表と副代表がいて…(笑)」。レッドフェニックスとのつながりができたのは、必然だったのかもしれない。

 「『コーチをやってもらえませんか』みたいな話で。解説の仕事があったんだけど、『それでも全然いいです。仕事を優先してもらって、空いている時間にお願いします』と。聞けば、ずっとピッチングコーチがいないチームで、投手陣のモチベーションを心配されていた。僕も中途半端は嫌だしなって思って坪井さんに連絡したら、『おぉ、頼むわ』って言われて(笑)」。

 チーム自体の存在は知っていたが、どの程度のレベルかも知らなかった。しかし興味がわき、引き受けることにした。

しっかりと選手の目を見て話す
しっかりと選手の目を見て話す

■選手を思う熱い気持ち

 指導者として独立リーグに携わるのは初めてだ。

 「正直、レベルは高いとは言えない。本州(の独立リーグ)と比べても、北海道はまだまだ。でも、やっぱこうやって関わった以上は、なんとかレベルアップさせたいし、NPBに入れる選手が出てきてほしいという思いでやっています」。

 やるからには…と、気合いが入る。それだけに、選手の環境にも心を砕く。

 「選手の食事にしても、そんなにいいとは言えない。過酷な環境の中でね、もう少しいい環境でやらせてあげたいなっていうのもある」。

 しかし、それには“先立つモノ”が必要だ。だから、自身の人脈も活用する。かつてファイターズのエースとして名を馳せた。さらに現在は野球中継の解説で、テレビやラジオでの露出が多い。北海道においての、その知名度を生かしてスポンサー集めにも尽力するなど、グラウンド以外でも“仕事”をしている。

やんちゃかぶりが似合う
やんちゃかぶりが似合う

■最強投手陣を作り上げた指導力とマネジメント力

 タイガースのコーチ時代から、その指導力には定評があった。

 「いや、プロの1軍の選手なんて、別に教えることないから。メンタルケアと体のコンディショニング管理、あと配球をちょっと言ったりくらい。若手が初めて昇格してきたときとかは、ちょっと触ったりするけど、それ以外はほんと運用というか、そっちのほうばかりだった」。

 そうは言うが、常に選手の細かい変化に目を配り、的確なアドバイスを授けてきた。投手たちが落ち着いて登板できるよう、ブルペンの雰囲気づくりにも腐心してきた。そしてその運用の巧みさは、投手をより一層輝かせていた。

 虎の投手陣からは感謝され、今も「さとるさん」と慕われている。最強の投手王国を構築できたのは、ひとえに金村コーチのブルペンマネジメントの手腕によるところが大きかった。

車座になって選手の声に耳を傾ける
車座になって選手の声に耳を傾ける

■教えがいを見出す

 しかし、そこから比較すると、今の環境で感じるギャップは相当なものではないだろうか。

 「やっぱりシンプルにみんな、速い球を投げたがる。いや、そうじゃないよっていうところから、まず話す。いくら速くてもストライクが入らなかったら意味ないし、速いだけじゃ打たれる。いかに質のいいボールを制球できるかが重要。もちろん速い球を投げることも必要だけど、ただ速いだけじゃダメだよっていう、そういった意識改革からやっています」。

 ただ、そんな未熟な選手たちに教えることを、楽しんでいるという。

 「おもしろい。教えがいがあるし、若い子と会話するのが楽しい。チンプンカンプンで、何言ってるのかわからない子もいたりするけど…(笑)。今の子の典型なのか、頑固だったりもするので、こっちも押し付けはしない。まず話を聞いて、その上で考え方を変えてあげるのが重要かな」。

 個々の性質を把握し、プロとしてあるべき心得を説いていく。

 「せっかく関わった以上はね、なにかヒントを一つでもあげられたらいいかなと思っている。あと、やるのは選手だからね」。

 金村コーチの参入で、俄然モチベーションが上がっている投手陣。この中からドラフト候補選手は出てくるのか。金村コーチは期待に胸を高鳴らせている。

笑いを交えることは忘れない
笑いを交えることは忘れない

 北海道フロンティアリーグの開幕は5月4日、石狩レッドフェニックスのホーム開幕は翌5日だ。

 坪井智哉監督、的場寛一コーチ、そして金村曉コーチと、最強の首脳陣が最強のチームを作り上げる2024年シーズン。不死鳥軍団の熱い羽ばたきに期待したい。

(撮影はすべて筆者)

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北海道フロンティアリーグ 2024年シーズン日程(リーグ公式サイトより)
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フリーアナウンサー、フリーライター

CS放送「GAORA」「スカイA」の阪神タイガース野球中継番組「Tigersーai」で、ベンチリポーターとして携わったゲームは1000試合近く。2005年の阪神優勝時にはビールかけインタビューも!イベントやパーティーでのプロ野球選手、OBとのトークショーは数100本。サンケイスポーツで阪神タイガース関連のコラム「SMILE♡TIGERS」を連載中。かつては阪神タイガースの公式ホームページや公式携帯サイト、阪神電鉄の機関紙でも執筆。マイクでペンで、硬軟織り交ぜた熱い熱い情報を伝えています!!

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