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振り切れた『Re:リベンジ』のわかりやすいおもしろさ 『アンチヒーロー』と対照的な主人公

武井保之ライター, 編集者
フジテレビ木曜劇場『Re:リベンジ-欲望の果てに-』公式サイトより

フジテレビ木曜劇場『Re:リベンジ-欲望の果てに-』の第10話が放送された。後半に入って主要登場人物に悲劇が相次ぐ急展開が続き、サスペンスドラマが渋滞した春ドラマのなかでも異彩を放っている。

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ゴールデンタイム連続ドラマの定石に縛られない

とくに後半の医療過誤の章に入ってからは、怒涛のような悲劇が続く。

巨大病院の権力争いに勝ち、理事長の座を射止めた主人公・天堂海斗(赤楚衛二)は、元恋人であり、よりを戻しそうに見えた朝比奈陽月(芳根京子)の妹の医療過誤による死のもみ消しを図る。

また、かつて主人公が陥れられたときに唯一の味方になり、理事長に就くための協力者でもあった出版社時代の後輩記者・木下紗耶(見上愛)が、医療過誤隠蔽の事実に気づき、それを暴こうとすると、見切りをつける。そして、木下も不審な死を遂げる。

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『Re:リベンジ』のおもしろさは、主人公がクズな悪人に振り切れている意外性と主要登場人物の悲劇が連鎖するストーリー展開だろう。一般的なゴールデンタイム連続ドラマの定石に縛られず、それを軽々と飛び越えている。

韓国ドラマのドロドロ愛憎劇と最終話でどう差別化するか

加えて、今期はオリジナルのサスペンスドラマが多いが、そのなかでも正義と悪の対立軸がわかりやすいこともある。

たとえば、『アンチヒーロー』は主人公をダークヒーローのように見せているが、実は検事と判事が悪であり、彼は正義を貫く弁護士。時代を超えた事件のつながりや登場人物の関係性が複雑でわかりにくいわりに、1つひとつを結ぶ謎は深くもない。

『Destiny』は主人公の元彼とその父を敵に見せておいてラストでは正義の側であったことが明かされるが、そこに意外性はなく、都合のいいストーリーに見えてしまう奥行きの浅さがあった。

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そうしたなか、主人公がとくに後半において権力のために正義のかけらもない悪に染まっている『Re:リベンジ』は、わかりやすさがそのまま見やすさとおもしろさにつながっている。

ただ、登場人物たちがどんどん死んでいくドロドロの愛憎劇は、韓国ドラマのサスペンスでありがちな展開だ。ドラマファンにとっては既視感のあるストーリーでもあるだろう。

第10話までの流れは、まさに韓国サスペンスドラマそのものを思わせる裏切りと悲劇の連鎖が続いてきた。それを最終話でどこに落とし込むのか。韓国ドラマとは異なる日本の連続ドラマらしいラストを見せてくれるのか、注目される。

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ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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