『Destiny』壮大な悲劇の原点がチープな罠だった“肩透かし”感
スタートから1ヶ月が過ぎた春ドラマ。開始当初と比較して、SNSなどネットの盛り上がりが徐々に失速しているように感じる。なかでも気になるのが、第1話がいろいろと話題になった『Destiny』(テレビ朝日系)だ。
中盤に差し掛かったところで、20年前の「父の死の真相」の原点が偽メールだったことが明らかになると、その後の20年にわたる悲劇とのギャップから、物語そのものが一気にチープに見えてしまった感がある。しかし、第6話から新たな展開に入った。この先がまた見えなくなっている。
(関連記事:石原さとみ『Destiny』大学キャンパスの30代集団の違和感 ベタなインパクトは後へつながるフリか)
明らかになった20年前の汚職事件での検事の死の真相
ドラマの最大の謎になっていた、20年前の汚職事件の検事だった奏(石原さとみ)の父・英介(佐々木蔵之介)の死の真相。奏の大学時代の恋人・真樹(亀梨和也)の父であり弁護士の浩一郎(仲村トオル)が、その汚職事件と英介の死に関わっていることがほのめかされてきた。
英介の死をめぐっては、その秘密を知ったカオリ(田中みな実)が12年前に事故で亡くなり、事故の当事者だった真樹は行方をくらます。しかし、カオリの13回忌の日に真樹が突然姿を現し、それぞれの人生を歩んでいた大学時代の仲間に大きな影響を与えた当時の事件の謎が、長い空白を経て動き出す。
自身も検事になり、父の死の謎を執念で追う奏は、ついに父のボイスレコーダーを見つけ、「父の死の真相」の原点が仕組まれた偽メールであることを知る。陥れられた父・英介は自宅で自死したのだ。
もう一階層深い謎が仕込まれているのか
大学時代に恋人同士だった奏と真樹それぞれの父が、20年前に検事と弁護士の立場で、政治絡みの大規模な汚職事件で対峙していた。そして、その過程で検事だった奏の父は亡くなっている。さらにその死をめぐって、その後に死者が生まれ、家族や周囲の仲間たちの人生を大きく狂わせた。
そんな一大汚職事件に絡んだ20年にわたる大きな謎の原点が、偽メールという安っぽい罠であり、それに簡単に引っかかっていたことには、事件の大きさとそこから始まった凄絶な悲劇の痛ましさとのギャップが大きすぎて肩透かし感があった。さらに、陥れられた検事は自死をしてしまう。動機としても理屈としてもいまひとつしっくりこない。
一方、当時の英介の部下・新里龍一(杉本哲太)は、英介の死を「辻(英介)さんは死をもって真実を封じ込めた」と奏に話す。なぜ陥れられた側が真実を封じ込める必要があったのか。スッキリしないことが多い。「父の死の真相」にはもう一階層深い謎があるのかもしれない。
第6話からは、浩一郎の家が火事になり、浩一郎は意識不明、真樹は放火で自首する新たな展開に入った。5月21日放送の第7話では、病で余命短い真樹と奏が2人で姿を消す。
予定調和では終わらないであろう、先の見えない展開への期待感をもう一度湧き立たせてくれた。ラストへ向けた物語の行方が注目される。
【関連記事】
石原さとみ、スタイルは崩れ肌は荒れ…「自分が崩壊するほど苦しかった」 出産を経た復帰作で悲劇の母親役
春ドラマで気になる若手女優2人 『Re:リベンジ』後輩記者役・見上愛、『366日』遥斗妹役・中田青渚)
前代未聞の“穴”ドラマ『滅相も無い』がすごい 深夜ドラマならではの奇抜な撮影で攻める、春ドラの大穴