夏休み映画興行に立ち込める暗雲 『キングダム』勢いに陰り オリンピックも不安要素か 期待はディズニー
好調なスタートを切ったかに見えた夏休み映画興行だが、7月末の段階で暗雲が立ち込めてきているようだ。
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『キングダム 大将軍の帰還』興行に実写の難しさ
6月28日公開のアニメ『ルックバック』が、作品形態や公開規模に対して想定外のスマッシュヒットとなり、夏休み興行の幸先良い出足になっていた。すでに興収10億円を突破。アニメ特有のリピーターが多い興行となり、夏休み中の興収の積み上げが期待できるだろう。
一方、爆発的な大ヒットスタートを切ったものの3週目にして息切れが見られるのが『キングダム 大将軍の帰還』。7月12日の公開から2週連続で週末動員ランキング1位。邦画実写歴代No.1のオープニングとなり、2週目ですでに興収36億円を超える破格のヒットになっている。
しかし、3週目に入ってこれまでの勢いに陰りが出ているようだ。実写興行の定形パターンではあるが、公開初週、2週目がピークになり、そこからいかに落ちを抑えるかがポイントになる。もともとリピーターが多いうえ、劇場特典を繰り返して興行の盛り上がりを維持していくアニメのような息の長い興行にはなりにくい。
『キングダム 大将軍の帰還』は、宣伝のテコ入れが必要な状況になりつつあるようだ。現時点の最終興収予測は60〜70億円前後だろうか。ここからいかに話題を盛り上げ、興行を維持していくか。宣伝の腕の見せどころになる。
夏休み興行の命運がかかる『インサイド・ヘッド2』
ほか実写大作では、東映の『逃走中 THE MOVIE』が初週5位と不発に終わったなか、続く今週末(7月26日)公開の東宝の『もしも徳川家康が総理大臣になったら』がほとんど話題になっていない。大手2社の実写大作が連続して不発に終われば、夏休み興行への影響も大きいだろう。
また、夏休み映画の目玉の1作として期待値の高かったファミリー層向けの『怪盗グルーのミニオン超変身』は、初週興収6.8億円。突き抜けるヒットにはならなかった。
そんな状況のいま、今年の夏休み興行の命運がかかるのは、ディズニー/ピクサーの『インサイド・ヘッド2』(8月1日公開)になりそうだ。北米では6月14日に公開され、ピクサー史上最高興収を記録。世界中で大ヒットしている。
ただ、気になるのはコロナ禍以降、日本でのディズニー映画の動員が極端に落ちていること。また、近年のピクサー作品のストーリーが一定のパターン化したマンネリになっていることも、目の肥えた日本のアニメファンにどう映るかは未知数だ。
前作『インサイド・ヘッド』(2015年)は興収40.4億円。今作は世界的評価が高いことから、前作を超えてどこまで興収を伸ばすかが注目される。
そのほか『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』(8月2日公開)や、『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』(8月9日公開)といったアニメの定番も一定の興収が期待できる。
今年の上半期興収は前年比10%ほどマイナスになったが、夏休み興行の前半はそれを盛り返すまでの勢いにはなっていないようだ。さらに今年はオリンピックもある。余暇時間の奪い合いは例年以上に厳しいだろう。まずは8月前半のファミリー層向けアニメの動向が注目される。
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