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職業別生涯未婚対象年齢人口/残ってしまうのは「製造業の男」と「事務の女」

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

職業別男女の生涯未婚率

前回の記事(男女の生涯未婚率は10%も「男>女」だが、産業別に正規雇用で比較すると男女が完全に逆転)で産業別の男女の生涯未婚率について書いたが、今回は職業別(大分類)で見ていきたい。

職業別には、分類A~Lまで12つあるが、それぞれの生涯未婚率(45-54歳の平均未婚率)は以下の通りである。

男女での比較をわかりやすくするために折れ線グラフにしてある。ちなみに、これは対象が有業者であり、正規・非正規の雇用者だけではなく、自営業や家族従事者も含む。

まず、全体の生涯未婚率は男24%、女18%である。これは、2020年の国勢調査におけるもの(男28%、女18%)と比較すると、女は一致するが、男は有業者の方が未婚率は低くなっている。つまり、男の生涯未婚率を引き上げているのは無業者であることがわかる。

全体的に、女性は職業によって未婚率が大きく変化しないが、男性の場合は、A~Dまでの頭脳系仕事に対して、E以降の肉体系仕事の場合で大きく未婚率が変わる。

特に「農林漁業」「サービス職業」男の未婚率は30%を超え、「運搬・清掃・包装業」にいたっては40%超である。

「サービス職業」とは、家庭生活支援や介護、保健医療(医師・看護師などの技術職は除く)、美容師・理容師・クリーニングなどの生活衛生サービス業、飲食・宿泊業などである。

生涯未婚率が職業別で「男<女」になるのは、「管理的職業」「事務」「販売」の3つ。「専門的・技術的職業」「保安」は男女ほぼ一緒だが、それ以外は男の方が高い。

生涯未婚率対象未婚人口

続いて、未婚率ではなく、この未婚率計算対象である45-54歳の未婚人口を男女で比較したのが以下である。率の場合とはまた違った景色になる。

男では、圧倒的に未婚人口が多いのは「生産工程業」、つまり「製造業」で約43万人である。製造業における女の未婚人口は約12万人に過ぎず、この職業における未婚男女比は完全に「男余り」となっている。

対して、女の場合は「事務」で約54万人。同職業の男は約30万人で、こちらは「女余り」となっている。

結果として「製造業」の男と「事務」の女が生涯未婚者として残ってしまっているのは、それぞれが従事する環境における男女人口バランスが偏っているからだろう。

机上の空論としては、「製造業」の男と「事務」の女とをマッチングさせればいいようにも思えるが、事はそんなに単純ではない。両者の勤務地が同一エリアとも限らない。

そもそも20-24歳での最初の就職時に、「製造業」では男が女より2.3倍も多く、逆に「事務」では、女の方が男より1.7倍も多い。

「予期せぬ偶然」の異類縁

だからって、製造業の女性比率、事務の男性比率を高め、なんでもかんでも男女平等の人数にすればいいというものではない。それぞれの希望や適した働き場があるわけで、むしろ1980年代の皆婚時代までも、職業による男女人口差はあった。

ある意味では、当人同士では知り合えない異類縁をお見合いや地域・職場のお節介おじさんとおばさんが取り持っていたという面はあるだろう。

写真:アフロ

若者が若者自身の行動範囲の中で知り合うには、年齢や学歴、育ってきた環境、現在の収入、それらが培ってきた価値観などが似通っている同類縁になりがちである。

それ自体を否定しないが、そうした若者の自助による同類縁だけで放置していたこの30年の結果が、「同じ年齢で、ある程度高年収同士の同類婚」だけが発生して、中間層の婚姻が激減している状況を招いたと言えやしないだろうか。

特に、東京23区では直近に子を産んだ夫婦の世帯年収中央値は1000万円超である。

参照→東京23区で子を出生した世帯の半分以上が年収1000万円「子を産める・産めない経済格差」が進行

自分と同類を検索して探すのも結構だが、「予期せぬ偶然の出会い」は必要なのだと思う。結果それが結婚に結び付くかどうかは別として。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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