男女の生涯未婚率は10%も「男>女」だが、産業別に正規雇用で比較すると男女が完全に逆転
産業別に男女未婚率を比較
2020年国勢調査における男女の生涯未婚率(50歳時未婚率)は、不詳補完値で男性28.3%、女性17.8%だった。女性より男性のほうが約10%高いのは、2005年以降ほぼ同様の傾向である。
参照→【国勢調査】不詳補完値の正式採用により、2020年の生涯未婚率は男28.3%、女17.8%へ
しかし、この数字は、有業者も無業者も含め全数を対象としたものである。有業者のみ、かつ、産業別で男女の生涯未婚率を算出すると、産業ごとにいろいろと差が見えてくる。産業によっては、男性よりも女性の方が生涯未婚率が高い場合もある。
2022年就業構造基本調査より、産業大分類別に男女の生涯未婚率を計算してグラフ化したものが以下である。ちなみに、生涯未婚率とは45-49歳と50-54歳のそれぞれの未婚率を平均したもの。
生涯未婚率で「男<女」となる産業は、「電気・ガス・水道業」「金融・保険業」「情報通信業」「学術研究・専門・技術サービス業」「公務」の19分類中5つある。特に、女性の生涯未婚率が高いのが、「情報通信業」である。
情報通信業には、電気通信業の他、放送業、新聞・出版業、映像やゲーム制作、インターネット不随業が含まれるが、こうした制作業務関連に従事している女性の未婚率が高くなるようだ。
そして、男女差がもっとも大きくなるのは「金融・保険業」である。
正規雇用だけに絞ると…
これだけでも男女差が見られるのだが、さらに正規雇用社員だけに絞って、産業別の生涯未婚率を男女で比較したものが以下である。
正規だけに限定すれば、19分類中16個が「男<女」となる。逆に、男の方が女を上回るのは、「農業・林業」「電気・ガス・水道業」「医療・福祉業」の3つだけとなる。
ここでも「情報通信業」の女性生涯未婚率は35%を超え、男女全産業を通じてもっとも生涯未婚率が高い。そして、正規に限っても男女差がもっとも大きいのは「金融・保険業」で、男性の生涯未婚率8%に対し、女性のそれは28%と20%ポイントも高い。
勘違いしないでもらいたいのは、「情報通信業」や「金融・保険業」の産業に就職すると生涯未婚になりやすいということではない。それらの産業従事者の女性が結婚したことでその職を退職しているケースもあるからだ。
とはいえ、「情報通信業」に含まれる、映像やゲームなどの制作業務や、新聞・出版業などは激務であるとともに、個人として業務にやりがいを感じている場合もあるだろう。そうした仕事に邁進し、没頭しているうちに、気が付いたら生涯未婚対象年齢となっていたというケースもないとは言えない。
産業と年収と未婚率の相関
男女の生涯未婚率は年収によって左右される傾向については過去記事でも書いた通りである。年収が低い男性ほど未婚率が高く、逆に、年収が高い女性ほど未婚率が高くなるという傾向だ。
参照→2022年版「男女年収別生涯未婚率」公開/率だけではわからない生涯未婚人口のボリューム層
結婚しないで一人で生きるからこそ自分で稼ぐようになるのか、ある程度の稼ぎを確保し、経済的自立を果たしたがゆえに「結婚する必要性を感じなくなる」のか、その因果はわからないが、従事する産業によって未婚率は大きく差があることは確かである。
最後に、男性側について簡単に触れておくと、男性の生涯未婚率が高い産業は「農業・林業」「他に分類されないサービス業」である。「他に分類されないサービス業」とは、具体的には、産業廃棄物処理業、自動車整備業、警備業、職業紹介・労働者派遣業などである。
農業などの未婚化の問題は特に地方において深刻なのだろう。
今回は大分類での紹介までとするが、別記事で細かい中分類まで落とした形での比較まで深掘りしていきたいと思う。
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