三菱重工、AI搭載の戦闘支援無人機の模型初公開 2025年中に実機の飛行試験を初実施へ
日本の防衛最大手企業の三菱重工業は10月16日に東京・有明の東京ビッグサイトで開会した「2024国際航空宇宙展」で、人工知能(AI)を搭載する戦闘支援無人機の模型を初公開した。AI活用によるこの自律型無人機は、日英伊が2035年度までの共同開発完了を目指している有人の次期戦闘機と連携する。
その一環として、三菱重工業担当者は筆者の取材に対し、防衛装備庁の契約に基づき、AI搭載の無人機の飛行試験を2025年中に初めて実施する方針を明らかにした。
三菱重工業が今回公開したのは、以下の2種類の戦闘支援無人機の模型だ。いずれも現在はコンセプト段階にある。
●戦闘型の戦闘支援無人機
1つ目は戦闘型の戦闘支援無人機の模型だ。三菱重工業担当者によると、模型は全長1メートルほどで、実物の10分の1サイズになるという。この模型は今回初めて公開された。この無人機は陸上から離陸し、相手を攻撃して帰還するコンセプトとなっている。ウエポン(兵器)を内装化したり、レーダーを搭載したりと運用に合わせて様々な使い方ができるよう設計されている。
●ミサイル技術を転用した戦闘支援無人機
2つ目はミサイルの形状をした戦闘支援無人機だ。模型は全長6メートル弱で実物大になる。この模型は、これまでSNSのXなどに投稿された写真の中に写り込んでいたことがあった。模型で示されているように機体前方下部にはカメラが設置される。この無人機はミサイルと同じように、使い捨てタイプのコンセプトとなっている。機体に記された「ARMDC-20X」のARMDCはAffordable Rapid Prototype Missile Drone Conceptの頭文字略語を意味し、日本語直訳は「低価格の迅速プロトタイプ(試作品)ミサイルドローンコンセプト」になる。数字の20はタイプ(種類)を示し、Xはこの無人機が今も開発中であることを意味する。
三菱重工業担当者は筆者の動画撮影インタビューに応じ、上記の2種類の戦闘支援無人機について、この他にも一般向けにより詳しい丁寧な説明を尽くしてくれました。ぜひ以下の動画をご覧いただきたい。
●戦闘支援無人機コンセプトの4つの特徴
三菱重工業は、戦闘支援無人機コンセプトの特徴として、①高度なAI技術の利用、②コストなどの負担が低く損耗しても許容されるアトリタブル(損耗許容性)、③様々なミッション(任務)に対応、④ステルス設計の4点を挙げている。
日本は、中国を念頭に数的に劣勢で不利な空対空戦闘を前提にして、有人戦闘機と無人機が連携して任務を行う「チーミング」の技術の獲得を急いでいる。無人機が戦闘機のミッションの一部を担うことで、数で勝る相手との戦力の差を補うとともに、無人機が有人戦闘機に随伴し、これまで有人機が担っていた役割を請け負うことで、パイロットの生存性をより高めることもできる。無人機の方が有人戦闘機よりも安く生産・運用でき、コスト面でもメリットがある。
三菱重工業は2022年度から防衛装備庁が発注した「無人機へのAI搭載技術の研究試作」を開始した。2024年8月2日にも同庁発注の「AIを搭載した戦闘支援無人機等のソフトウェアの安全性確保に関するシミュレーション評価役務」を2億4260万円で落札した。
このほか、川崎重工業が2022年4月に同庁発注の「自律向上型戦闘支援無人機の機能性能及び運用上の効果に関する研究試作」を約39億円で落札。SUBARUも2023年11月に「戦闘支援無人機システムのコスト構造等に係る検討役務」を約4722万円で落札した。日本エヤークラフトサプライも同月に「戦闘支援無人機システムの機能・性能に関するミッションレベルの成立性分析手法の検討」を約2億円で落札するなど、各社が戦闘機との連携による戦闘が可能な自律型戦闘支援無人機の研究開発や運用実現に取り組み、しのぎを削っている。
なお、アメリカ空軍は、F35戦闘機やB21爆撃機のような有人軍用機に随伴して偵察機や空の通信ハブとしても機能する、こうした戦闘支援無人機を「Collaborative Combat Aircraft(CCA)」と呼んでいる。日本語では「協調戦闘機」と訳されることが多い。
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