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韓国野党提出の尹大統領の弾劾訴追案には、日本にとって決して見逃せない内容が含まれている

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
韓国大統領、非常戒厳を宣言し解除 尹氏への退陣圧力強まる(写真:ロイター/アフロ)

韓国の「共に民主党」など野党6党は12月4日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾訴追案を国会に提出し、7日の採決を目指している。与党「国民の力」の韓東勲(ハン・ドンフン)代表は6日、尹大統領が3日夜に戒厳令を宣布した後、主要政治家を逮捕しようとしたことが新たに明らかになったとし、野党提出の訴追案に賛成する可能性が高まっている。

日本メディアでは詳しく報じられていないが、日本にとって気がかりで決して見逃せないのは、その弾劾訴追案の内容だ。その結論部分には、次のような記述がある。

(尹政権は)いわゆる価値外交という美名の下で、地政学的バランスを度外視したまま北朝鮮と中国、ロシアを敵対視し、日本中心の奇妙な外交政策にこだわり、日本に傾倒した人物を政府の主要職位に任命するなどの政策を展開することによって北東アジアで孤立を招き、戦争の危機を誘発させ、国家安全保障と国民保護義務を放棄してきた。

韓国の政治動乱を受け、尹政権の外交・安保政策は機能不全となり、事実上終焉したとみられる。アメリカのオースティン国防長官も韓国への訪問を取りやめたと報じられたばかりだ。

弾劾訴追案は、尹大統領が政権を追われた後、かりに「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表が次期大統領になり、革新・進歩政権が誕生した場合、どのような外交・安保政策を目指すのかを示唆している。

北朝鮮とロシアの「包括的戦略パートナーシップ条約」が4日に発効し、朝ロの関係が事実上の軍事同盟に格上げされるなど世界の分断と緊張対立が高まる中、韓国の外交・安全保障政策が今後いったいどこに向かうのか、日米をはじめ、各国が注目せざるを得ない状況がしばらく続きそうだ。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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