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きょうから大麻の使用が犯罪に…何がどう変わる? #専門家のまとめ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:イメージマート)

きょうから大麻の使用が「麻薬施用罪」として処罰の対象になります。学生ら若年層による濫用が社会問題化する中、改正法の施行に基づく措置です。規制緩和の流れに逆行するとしてネット上では賛否両論ありますが、一方で医療用大麻の解禁も併せて行われます。何がどう変わるのか、改正のポイントについて理解の参考となる記事をまとめました。

ココがポイント

「大麻の不正な所持や譲り受け、譲り渡しとともに、使用も麻薬取締法違反で7年以下の懲役となる」
出典:KYODO 2024/12/12(木)

「使用が疑われるグループがいた場合、これまでは所持していた人だけが摘発の対象」「今後は採尿して陽性反応が出た人も摘発の対象に」
出典:毎日新聞 2024/12/11(水)

「特定の疾患に対し、医師指導のもとで大麻を医薬品として使用できるようになり(中略)医療における有効活用の選択肢が広がる」
出典:弁護士JPニュース 2024/12/9(月)

「公衆衛生や青少年保護に無頓着な犯罪者が薬物を管理している」「大麻についても、国は犯罪者から管理を取り上げるべきである」
出典:GLOBE+ 2023/9/19(火)

エキスパートの補足・見解

これまで大麻は栽培や密輸のほか所持罪がメインであり、捜索で現物が発見されるか否かが重要でした。使用を処罰できなかったからです。

もっとも、「物なし」事件が野放しだったわけではありません。規制薬物の蔓延防止のために麻薬特例法に特別な犯罪が設けられているので、これで立件されてきました。大麻の譲り受けや所持といった薬物犯罪を行う意思に基づいて何らかの物品を規制薬物として譲り受けるなどすれば、それが偽物であろうと現物が残ってなかろうと処罰できるというものです。

税関検査で発見された規制薬物を偽物とすり替えて配達させ、受取人を検挙する「泳がせ捜査」のための規定でしたが、「苦肉の策」として「物なし」事件に適用されてきました。例えば、日大アメフト部を巡る薬物事件でも、大麻の現物が残っていなかった部員やOBらはこの麻薬特例法違反で芋づる式に検挙されています。

ただし、現物がない分だけ、刑罰は懲役2年以下と軽くなっています。そこで今後は、尿検査に基づく施用罪での立件が増えるはずです。麻薬特例法違反ではなく麻薬取締法違反となり、最高で懲役7年と格段に罪が重くなるので、注意を要します。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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