大絶賛されている「ドタキャン防止システム」を運営する全日本飲食店協会への拭いきれぬ4つの疑念
ドタキャン防止システム
<賞賛されている「ドタキャン防止システム」に、残念ながら異を唱えなければならない5つの理由>という記事で、全日本飲食店協会が運営する「ドタキャン防止システム」を取り上げました。
「ドタキャン防止システム」は2月19日に開始してから僅か2週間で参加店が300を突破し、大きな注目を浴びています。
私は外食産業にとって、ノーショー(無断キャンセル)やドタキャンは大きな問題であると考えていくつも記事を書いてきました。
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しかし、ノーショーやドタキャンの撲滅を願う私からしても、「ドタキャン防止システム」には以下の疑問点や問題点があると考え、先の記事で指摘しました。
- 情報管理
- 規模効果
- 訪日外国人客
- 客からの同意
- なりますしや番号変更
「客からの同意」をとることになった
これらのうち、<客からの同意>に関しては、<同業者の仕業も!? 飲食店「ドタキャン」予防策で判明? なんと常習客に......>で紹介されているように、政府の独立機関「個人情報保護委員会」からの指摘によってガイドラインを修正し、改善しました。
「ドタキャン防止システム」に参加している飲食店に対して、予約時に客へ、ドタキャンするとシステムに登録されることを説明するように促すようになったのです。
この改善は素晴らしいことであると思います。しかし、他の点に関しては何も変わった様子はないので残念です。
なりすましや番号変更に対しては全く無防備ですし、何がドタキャンであるかを定義および明示しておらず、恣意的な登録を放置しているのは飲食店と客の信頼関係に悪い影響を与えます。
新たな疑念
そして、既存の疑問点や問題点に加えて、新しい疑念も浮かび上がってきました。
以下の通り、順を追って説明していきます。
- 不明な資金の出所
- 飲食店コンサルタントとの関わり
- セミナーへの誘導
- 一般社団法人であるのか
不明な資金の出所
前の記事でも触れていますが、「ドタキャン防止システム」を運営する費用の出所が全く不明です。
個人につながる電話番号を管理するので、情報流出に対しては気を遣うべきであり、セキュリティはしっかり担保しなければなりません。
しかし、堅固な仕組みをゼロから開発し、日々運営していくとなると、当然のことながら、お金がかかります。しかし、全日本飲食店協会は昨年設立されたばかりの一般社団法人であり、理事会が設置されていない基本的な機構です。加えて、会員(一般社団法人で定めるところの社員であるかどうかは不明。後で詳しく触れます)は入会費、年会費および月会費が無料となっています。
これでは開発費用や運営資金を捻出できるとはとても思えません。さらには「ドタキャン防止システム」を利用するのも、今のところ無料となっています。
知り合いのITエンジニアにほぼ無料で開発してもらっているのかも知れませんが、開発すれば終わりではなく、そこからシステム運用が永続的に続きます。
収入源のない全日本飲食店協会が、「ドタキャン防止システム」をゼロから開発して日々運用していき、なおかつ、無料で使えるのは、普通に考えてみれば、実に不可思議です。
また、全日本飲食店協会が本社としている住所は、事務所として法人登記できるホテル&レジデンス六本木となっていますが、収入のない全日本飲食店協会はどこから賃料を捻出しているのでしょうか。
飲食店コンサルタントとの関わり
役員ページ(ウェブ魚拓)と会員ページ(ウェブ魚拓)を確認すると、全日本飲食店に関わりのある方は、以下の通りになります。
役員
- 関良祐氏/理事長 / 洋食グリル天平(兵庫県姫路市)
- 櫻木憲征氏/副理事 / 中国料理ハナチャイナ(福岡県糟屋郡)
会員
- 可児太一氏/KA NEEDS KITCHENかにきち
- 徳田 秀樹氏/桜鮨
- 西芳史氏/回転寿司 まぐろや
- 加納義仁氏/ラ・パティスリー プレジール
- 岡信行氏/炭火焼鳥もんじ
- 奥野能成氏/ビストロエピス
- 土屋雅史氏/アンズバー
- 緒方宏氏/甲子園テッパンメシ
更新されていないのか、公式サイトには記載されていませんが、奥野氏も理事に就任しています。これについては後述します。
<無料で赤字経営を脱出させるカリキュラムを提供する>と謳う飲食店集客実践協会が運営する「ビンボー病クリニック」(ウェブ魚拓)という飲食店コンサルタントがあります。
リンク先を見ていただければ分かりますが、この飲食店コンサルタントで、関氏は本部長を務めており、卒業生として奥野氏、岡氏、徳田氏、加納氏、西氏、可児氏、櫻木氏といった全日本飲食店協会に関わりの深い面々が名を連ねており、コメントを寄せると共に、ビデオにも出演しています。
何故か現在は全日本飲食店協会の公式サイトから名前が消えている「”酒肴吟味”これから」を経営している黒川義幸氏もコメントを掲載し、ビデオに出演しています。黒川氏についても後で触れます。
飲食店集客実践協会は他にも<たった3ヶ月、月商2倍を実現したい飲食店のあなたへ>(ウェブ魚拓)というページを運営しており、ここでは関氏と櫻木氏と黒川氏が共に講師を務めていることが分かります。
さらには、他の飲食店コンサルタントである<店舗集客マーケティングなら商売人の学校>を謳う「増田塾」では、関氏(ウェブ魚拓)と櫻木氏(ウェブ魚拓)が卒業生として登場しています。
どうして全日本飲食店協会の役員や会員は、特定の飲食店コンサルタントに関わりが深いのでしょうか。
入会費、年会費および月会費が必要ない良心的な全日本飲食店協会が、飲食店を相手に商売する飲食店コンサルタントと浅からぬ関係を持っていることは、違和感があり、不安も感じられます。
セミナーへの誘導
「ドタキャン防止システム」に登録して承認されると、自動的に全日本飲食店協会の会員になると同時にメルマガが定期的に送られてくるようになります。
関氏が2月22日に、これからは関氏が月曜日に、櫻木氏が水曜日に、現在は公式サイトに掲載されていない黒川氏が金曜日に執筆すると述べていました。しかし、黒川氏は2月28日を最後に執筆しなくなります。メルマガのスケジュールはすぐに崩れてしまい、その後は規則性がよく分からなくなりますが、そのことについては何も触れられていません。
メルマガでは、ポジティブな気持ちを持てばうまくいくという精神論や偉人の言葉を紹介したり、料理だけが得意ではダメでマーケティングが重要であると力説したりしています。
全日本飲食店協会のメルマガであるのに、全日本飲食店協会の思想や哲学、今後の予定やアクションについては全く述べられていません。
また、全日本飲食店協会については何も言及されていないこのメルマガを解除してしまうと、全日本飲食店協会を退会したことになり、「ドタキャン防止システム」も使用できなくなるのは不思議です。
どうして、これほどまでにメルマガが重要なのでしょうか。
メルマガの内容をもう少し詳しく紹介します。
当初は関氏と櫻木氏が執筆していましたが、3月7日には理事に就任したという奥野氏が、3月13日には何故か縁あってという加納氏がメルマガを新たに執筆し始めます。
メルマガの中では、奥野氏も加納氏も、自身の店は経営状態がずっと悪かったが、関氏が本部長に就任している飲食店集客実践協会のセミナーに参加したら売上が伸びたと述べ、関氏に感謝し、飲食店集客実践協会に賛辞を送っています。
そして、3月14日には奥野氏が5月16日に開催する予定となっている飲食店集客実践協会の説明会を案内しました。
どうして、全日本飲食店協会が開催するイベントは一度も紹介したことがないのに、全日本飲食店協会と何も関連がないはずの飲食店集客実践協会のイベントは紹介するのでしょうか。
まるで全日本飲食店協会のメルマガは、飲食店集客実践協会を宣伝するために存在しているかのようです。
一般社団法人であるのか
最後に、一般社団法人としての全日本飲食店協会について疑義を呈します。
「ドタキャン防止システム」に参加すると自動的に全日本飲食店協会の会員となるので、冒頭で紹介したように、参加している飲食店が既に300を突破したということなら、会員数は300以上となるでしょう。
最近になって、奥野氏が新しく理事に加わっていますが、理事を選任するには社員総会の通常決議を行い、総社員の過半数以上が参加し、過半数以上の同意を得る必要があります。
全日本飲食店協会の会員が一般社団法人で定めるところの社員であるとするのであれば、300店以上に案内を送り、過半数以上が参加して決議を行ったのでしょうか。
もしかすると、全日本飲食店協会の会員は、一般社団法人で定めるところの社員ではないのかも知れません。しかしそうなると、先に挙げた会員ページ(ウェブ魚拓)に掲載されている飲食店も社員ではないと考えられます。
一般社団法人が会員を設けるのであれば、どの会員が議決権を持つ社員であるかを明確にする必要があります。会員の種別は定款に記載するのが一般的ですが、記載されているのでしょうか。
色々と気になることがあるので、まずは国税庁法人番号公表サイトで全日本飲食店協会について検索してみました(2018年3月30日9時30分~2018年4月1日21時まではメンテナンスのため使用不可)。
すると、不思議なことに、「全日本飲食店協会」と入力しても見付からないと表示されます。条件を緩めて、部分一致で「全日本飲食店」と検索しても見付かりません。
試しに、私が代表理事を務める一般社団法人日本ブッフェ協会を検索してみると、問題なく見付かります。従って、システムが故障しているわけではありません。
念のため、経済産業省の法人インフォでも同じように検索しますが、結果は同じです。
「ドタキャン防止システム」の紹介ページ(Wayback Machine)やそこからリンクされている<特定商取引法に基づく表記>ページ(Wayback Machine)には、全日本飲食店協会は一般社団法人と明記されています。
本当に一般社団法人であれば、法務局に登記されているはずです。そして、一般社団法人であれば、国税庁法人番号公表サイトや経済産業省の法人インフォの検索結果に表示されるはずです。
全日本飲食店協会は、法務局へ登記されていないのに、2017年の設立からずっと一般社団法人と名乗っていたのでしょうか。
「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」には<一般社団法人でない者は一般社団法人であると誤認させてはならない>と定められていますが、もしも全日本飲食店協会が本当に一般社団法人でないとすれば、どういった意図で一般社団法人を用いているのでしょうか。
個人飲食店オーナーのためになること
全日本飲食店協会は自らを<個人飲食店オーナーによる個人飲食店オーナーのための協会>であると説明していますが、関氏や全日本飲食店協会が深く関与する飲食店集客実践協会のセミナーへ誘うことが、個人飲食店オーナーのためになるとはあまり思えません。
全日本飲食店協会は、「ドタキャン防止システム」を開発したり運営したりする費用の出所を明らかにし、飲食店集客実践協会との深い関わりについて説明を行い、さらには、一般社団法人であるかどうかをはっきりさせる必要があります。
何故ならば、ブラックリストという負の個人情報を扱うためには、全日本飲食店協会は自らの内に暗部を宿してはならならないからです。
追記
当記事における疑念を、全日本飲食店協会にメールして回答を待っているところです。
続報があれば、当記事に追記したり、新しい記事を執筆したりいたします。
続編となる<テレビでも取材殺到の「ドタキャン防止システム」を運営する全日本飲食店協会の回答と新たなる3つの疑念>に、全日本飲食店協会からの回答や新たな疑念が記載されているので、ご覧ください。