小学校の教頭によるワインバー貸切25人のドタキャンは他と何が違うのか?
ワインバーで貸切25人予約のノーショー
<店主「教師がドタキャン」と小学校名を拡散も... 連絡に行き違い?学校側は謝罪、支払いの意向>でも取り上げられているように、またノーショー(無断キャンセル)やドタキャンが大きな問題として話題になっています。
小学校の教頭が越谷市のワインバーに貸切で25人の予約を入れていましたが、ノーショーをしたために、店主が悲痛の声をTwitterに投稿しました。予約のために用意していた大量の前菜の写真をアップロードしたり、小学校の名前を出して教頭を批判したりしたのです。
Twitterで大きな話題となって、小学校側にノーショーを起こしたことが伝わりました。すると教頭は、当日別の飲食店で納会を開催したが、このワインバーを予約したつもりはなく、ただ単に確認の電話をかけただけと否定。しかし、ワインバーに迷惑を掛けたということで25人分のキャンセル料10万円を支払い、ワインバーにも直接謝罪に出向くと述べています。
教頭から支払いがあり、謝罪の意志が認められたことから、店主はノーショーの問題は既に解決したとして、Twitterから一連の投稿を削除しました。
特殊なケース
私はノーショーやドタキャンについて、以下のように取り上げてきました。
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これまで様々なノーショーやドタキャンの事件が起こりましたが、今回のケースは少し特殊であると考えています。
それは以下の点で他と異なっているからです。
- 勘違い
- 身元割れ
- 支払い
勘違い
教頭はノーショーについて、予約したのではなく、ただ確認しただけと説明していますが、これは非常に不思議です。
予約を確定するには通常、訪れる年月日、開始する時間、人数に加えて、コースを注文するかしないか、注文するとすればコース内容を決めなければなりません。さらには、予約者の氏名、電話番号が必要となります。この全てが確定された時点で初めて正式に予約が完了したことになり、飲食店も準備することができるのです。
今回ワインバーの店主が前菜をしっかり準備していることから、人数やコース内容が決まっていたと考えてよいでしょう。コース内容が確定していないにも関わらず、前菜を作ってしまうことなどありえないからです。
従って、予約に関する詳細を漏れなく伝えていたのに、ただ確認しただけという教頭の説明を信じることは難しいのではないでしょうか。
小学校の納会が別の飲食店で行われたことを併せて鑑みれば、年度末という飲食店の繁忙期にあって、安全策のために、とりあえず複数の飲食店を予約したのではないかと勘繰ってしまいます。
身元割れ
ノーショーやドタキャンの撲滅が難しい理由のひとつに、客の名前や電話番号は分かっているものの、どこに勤めているのか、どこに住んでいるのか分からないことが挙げられます。
職業や所属する組織といった情報は予約する際に必要な情報ではありませんし、ノーショーやドタキャンの常習者であれば、なおさら自分の情報を伝えたがりません。
そうなると飲食店が客にコンタクトを取るためには、本人に電話をかけるしかありませんが、電話をいくらかけたところで、飲食店からの電話であると分かれば出てもらえないでしょう。
電話がいっこうにつながらないことから、ほとんどの飲食店はキャンセル料の取り立てを諦めてしまいます。
しかし、今回は客の身元が詳しく判明していました。職業が教師であり、務める小学校の名前まで分かっていたのです。
店主がTwitterに小学校を名指しで批判したことから、小学校や教頭まで声が届き、キャンセル料を払ってもらうに至りました。ただ、Twitterに投稿するのではなく小学校に直接連絡していたとしても、きっと本人に連絡が取れたことでしょう。
今回のように訴えがスムーズに届くケースは、非常に稀であると言えます。
支払い
教頭が迅速に誠意ある対応を行ったのは、不特定多数が見るTwitterに投稿されたことが大きいです。
小学校という教育機関の中で、教師の手本となるべき教頭が、多くの人に迷惑をかけ、食品ロスも発生させるノーショーやドタキャンを平気で行う人間であると知れ渡ったのでは大変なことになります。
そのため、すぐにお金を支払い、謝罪の予定も組んだのではないでしょうか。
ノーショーやドタキャンが発生した時に、このようにキャンセル料がスムーズに支払われることは、身元割れと同じように非常に稀です。残念ながら、身元割れしていなければ、自ら進んでキャンセル料を支払う人などほとんどいないのではないでしょうか。
ワインバーに料金が支払われたのは不幸中の幸いですが、これは例外であると捉えるべきです。
気になる点
ここまで、今回のノーショーにおける特異性を説明してきましたが、他とは異なるというだけで紹介したのではありません。
次の2つの点が気になったので記事を書きました。
- 確認の重要性
- キャンセル料の出所
確認の重要性
まず、ワインバーについてです。
ノーショーやドタキャンを行う方が最も悪いのは間違いありませんが、飲食店も防衛策をとることはできます。
店主はTwitterで「死にたい」「具合が悪くなって、立っていられない」と投稿していますが、それほどキャンセルされると困る予約であれば、最低でも数日前に1度は電話で確認しておくべきだったでしょう。
店主を責めているのではありません。死にたくなるほどインパクトのある事象が起こりうるのであれば、経営者でもある店主は、そのリスクを少しでも小さくする努力を怠るべきではないと考えているのです。
貸切には、その時間帯の全売上が依存しています。町場の飲食店であれば、貸切の予約はそうそう入るものではないので、せめてその時だけは注意を払っておくべきです。
また、せっかくTwitterを使っているのであれば、ノーショーであることが判明した時に、ただ嘆いているのではなく、「誰か食べに来て」と新しい客を呼ぶための投稿をした方が、より建設的であり、より意味があったと思います。
キャンセル料の出所
次は小学校と教頭についてです。
身元が割れていたとはいえ、迅速にキャンセル料を支払ったのはよいことでした。
ただ、支払いに関しては少し疑問があります。その疑問とは、誰が支払ったのかということです。
1人4000円で、25人の貸切予約なので、合計10万円を支払ったことになります。この10万円は、予約した教頭が1人で全て支払ったのでしょうか。ノーショーは、他の参加者のせいではないので、教頭が1人で支払うことは納得できます。
もしも、教頭が1人で支払ったのではなく、他の参加者にもキャンセル料の支払いを求めて、払わせていたとしたら、どうでしょう。他の参加者が予約を管理していたわけではないので、理不尽であるように思います。
10万円は1人が支払うにしては大きな金額です。それだけに、本当に教頭が1人で支払ったのか、もしくは参加者全員で支払ったのか、さらには、そのどちらでもなく、小学校における何かの予算が使われたのか、このどれかによって、潔いキャンセル料の支払いに対する受け取り方が違ってくると思います。
ノーショーやドタキャンの抑止力
ノーショーやドタキャンは飲食店に大きなダメージを与える悪しき行為です。それがこれからの日本を任せる子供たちを教育する小学校の教頭が行ったことは、とても残念に思います。
ただ、それと同時に、飲食店は自衛のために最低限の防衛策は取るべきであり、その態度がいい加減な予約は許さないという宣言となり、ノーショーやドタキャンの抑止力になるのではないかと改めて思うのです。