テレビでも取材殺到の「ドタキャン防止システム」を運営する全日本飲食店協会の回答と新たなる3つの疑念
「ドタキャン防止システム」に対する疑念
先日執筆した<大絶賛されている「ドタキャン防止システム」を運営する全日本飲食店協会への拭いきれぬ4つの疑念>という記事で、テレビなどでも話題となっている「ドタキャン防止システム」を開発・運営する全日本飲食店協会に対して以下4つの疑問を提示しました。
- 不明な資金の出所
- 飲食店コンサルタントとの関わり
- セミナーへの誘導
- 一般社団法人であるのか
テレビでも取り上げられ、世間で注目されている「ドタキャン防止システム」および全日本飲食店協会に対する疑義だったことで、多くの方に関心を持っていただきました。
全日本飲食店協会への質問
ノーショー(無断キャンセル)やドタキャンが撲滅することを願っており、以前から記事を書いてきた私としては、「ドタキャン防止システム」など新しい施策に期待したいという思いもあります。
そのため、私の記事を案内した上で、記事で挙げた4つの疑念について全日本飲食店協会に問い合わせたところ、理事長を務める関良祐氏から丁寧な回答を得られました。
公平を期するためにも、少し長くなりますが、回答のほぼ全てをそのまま掲載します。ただし、本質問とは直接関係ないところに関しては「(中略)」を入れて割愛しました。
開発・運用について
まず、資金について尋ねました。「ドタキャン防止システム」を開発・運用するためにとても重要なところです。
東龍:「ドタキャン防止システム」の開発および運用の資金はどちらでしょうか?
関氏:開発や運営はこの活動に賛同してくれる有志の皆さんが協力してくださっています。
現状では経費をなるべくかけないよう、工夫しながら運営しています。
開発や運用にはお金をかけておらず、無報酬で働いてもらっているということは確かなようです。
飲食店集客実践協会との関わり
飲食店コンサルティング事業を行う飲食店集客実践協会とのつながりについて尋ねています。
東龍:関氏を始め、全日本飲食店協会は飲食店集客実践協会と深い関係があるのでしょうか?
関氏:飲食店集客実践協会(以下、実践協会)は、全日本飲食店協会(以下、当協会)の主だったメンバーが出会ったきっかけの場です。そこで出会い、業界への想いを語り合う中で、共通の悩みや問題を抱える現状の数々が浮き彫りになりました。大好きな飲食業界をよりよくするための行動を起こそうという同志によって当協会の結成に至りました。そのため、メンバーが似通った構成になっています。
関、櫻木ともに実践協会にて自身の経験を活かした講師活動はしておりましたが、現時点ではそちらの役割を終え、当協会の活動をしています。
関氏および櫻木氏は共に、以前は飲食店集客実践協会の講師を務めていましたが、現在は講師の任に就いていないということです。
全日本飲食店協会に属する会員の多くが飲食店集客実践協会と関わりが深いことについては、そこでの出会いから発展して全日本飲食店協会が設立したことを理由に述べています。
メルマガの必要性
全日本飲食店協会が配信しているメルマガについての質問です。
東龍:なぜ、メルマガを配信停止すると、全日本飲食店協会を退会したこととなり、ドタキャン防止システムも使えなくなるのでしょうか?
関氏:ドタキャン防止システムは、同じ想いに共感してくれる飲食業の仲間たちのために提供しようと考えました。
当協会は、「子どもたちが飲食業に憧れるような業界にしていこう」という想いを持って設立しました。同じ想いを持って、ともに(協会としてだけでなく個人レベルでも)活動していく仲間を増やしたいと思っています。そういう人たちが、私たちにとっては「会員」という名の「仲間」だと考えています。
私たちの想いを知ってほしい、みんなの想いも聞かせてほしい、同じ理想の未来に向かって地域は違っても動いていきたい。
そのために、会員のみなさんとは何らかの方法で繋がって、コミュニケーションできる状態を作る必要があると考えました。その手段としてメルマガの購読という方法を取っています。メルマガに対して感想や現状の辛さ、ご意見などの返信をいただくことも多くなってきています。
確かに関氏が述べるように、協会運営において、会員とのコミュニケーションは非常に重要でしょう。全日本飲食店協会は、メルマガによってコミュニケーションを担っていると回答しています。
一般社団法人なのか
法務局に登記されていないにも関わらず、一般社団法人として名乗っていることへの質問です。法律に触れることなので、是非とも見解を訊きたいところです。
東龍:なぜ、法務局に登記されていないのに、全日本飲食店協会は一般社団法人と名乗っているのでしょうか?
関氏:法人登記の準備中でしたが、個人的事情などにより理事の入れ替えが急遽ありましたので、一旦法人登記の手続きがストップしております。(中略)
サイト上の記載によって混乱を与えてしまいましたが、ご指摘に感謝し修正に取り掛かっております。
法務局に登記されていないのは、やはり一般社団法人ではなかったからです。混乱を与えている部分に関しては修正すると述べています。
再び質問
関氏から詳細な返事が戻ってきたことにとても感謝しています。ただ、以上の詳細な回答をもってしても、まだ疑問点が残りました。
そして再び関氏にさらに細かく、深く突っ込んだ質問を投げ掛けたところ、「ゴールデンウィークも近いためイベントの準備なども重なり」ということで、回答期限を数日過ぎた8日後に返事をもらうことができました。
こちらも公平を期するために、回答を全て掲載し、私の考えも述べます。
有志による開発・運用
ドタキャンしたという負の行動に紐付いた電話番号は、大きな個人情報となります。そのことを憂慮した上での質問です。
東龍:ドタキャン防止システムは今後も有志による開発・運用を続けられる予定でしょうか?
関氏:有志の皆さんからのご協力もいただきながら、今後協会として予算を確保できる状態になることを目指して活動してまいります。
「ドタキャン防止システム」は引き続き有志による開発・運用を続けるということです。ただ、「今後協会として予算を確保できる状態になることを目指して」とありますが、会員からの入会費および年会費・月会費がない状態で、どうやって協会が予算を確保できるのか、まだ不透明に思えます。
他の個人や団体および法人から予算を確保できる見込みでもあるのでしょうか。
飲食店集客実践協会との関わり
飲食店集客実践協会で講師の役目を終えていたとしても、それだけで関わりがなくなったわけではないかも知れません。
東龍:現在、関さん、および、全日本飲食店協会は飲食店集客実践協会と全く関わりがないと考えてよろしいのでしょうか?
関氏:理事長、理事が実践協会で出会ったということは以前の回答で記載した通りです。
現在は講師の役目は終えております。
講師の役目は終えたのは前回の繰り返しになりますが、それ以外のことは何も述べていません。飲食店集客実践協会が運営する「ビンボー病クリニック」(ウェブ魚拓)では、未だに関氏が本部長として紹介されていますが、これはサイトが更新されていないからでしょうか。
本部長と大きく取り扱われているのであれば、第三者からみれば、飲食店集客実践協会の中枢にいる人物にしか思えません。
メルマガの目的
メルマガは全日本飲食店協会に属する会員とのコミュニケーションのためにあると述べていました。しかし、メルマガでは何度も飲食店集客実践協会について触れられており、飲食店集客実践協会が開催するセミナーについても案内されています。
東龍:メルマガは飲食店集客実践協会へ誘導することが目的ではないのでしょうか?
関氏:あくまでも全日本飲食店協会としての運用となりますので、他団体への誘導が目的ではありません。
他団体への誘導が目的ではないとありますが、メルマガを執筆する全日本飲食店協会の複数の執筆者が、全日本飲食店協会とは関係ないはずの異口同音に飲食店集客実践協会を褒め称える様子は、不自然であると考えられます。
コミュニケーションを取りたいのであれば、インターネットが発達した現在では他の手段も無数にあります。実際に、キャリコネニュースの記事によれば、全日本飲食店協会には「フェイスブック上のグループには500人ほどのメンバー」がいるということなので、メルマガにこだわる必要もないように思えます。
不適切な一般社団法人の表記
質問した時には、法務局に登記されていないにも関わらず、公式サイトに一般社団法人と記載されていました。
東龍:一般社団法人の記載は削除しますでしょうか?
関氏:既に削除しております。
確認したところ、いくつかは削除されていましたが、「ドタキャン防止システム」の紹介ページ(Wayback Machine)ではまだ削除されていません。
一般社団法人ではないのに一般社団法人であると名乗ることは法律に違反することであり、消費者に対して虚偽の信用を与えることになるので、こちらの記述も早く削除するべきであると思います。
一般社団法人の登記意向
手続きが途中で中断したため、一般社団法人として誤って表記したとありました。そうであれば、一般社団法人として登記する意向であるということです。
東龍:今後、一般社団法人として登記する予定はありますでしょうか?
関氏:登記する予定です。
登記する予定はあると述べていますが、2017年に発足していることを考えると、個人店オーナーが役員を務める一般社団法人としては、登記に時間がかかり過ぎているように感じます。
大きな企業であれば、役員を輩出するのに稟議や法務承認に時間がかかるので時間はかかりますが、それでも2~3ヶ月くらいで設立できるでしょう。
もしも、一般社団法人として登記する気はなかったのに、一般社団法人として登記していたのであれば、意図的な詐称となるだけに、一刻も早く手続きを終えるべきです。
新たなる疑念
ここまで、全日本飲食店協会の理事長である関氏とのやりとりを紹介してきました。疑念が氷解することもありましたが、まだ心配なところもあって、関氏の発言を踏まえた上でさらに調べてみたところ、以下の新たな疑念が生まれました。
- ドメイン所有者
- IPアドレス
- 所在地
ドメイン所有者
関氏は、関氏と櫻木氏は飲食店集客実践協会の講師を務めていたが、現在は務めていないと回答していましたが、全てにおいて関わりがないとは答えていません。先に述べたように、飲食店集客実践協会が運営する「ビンボー病クリニック」(ウェブ魚拓)では、まだ本部長として集客に一役買っています。
本当に全日本飲食店協会は、飲食店集客実践協会と関係ないのでしょうか。
全日本飲食店協会の公式サイトのドメインを調べてみると所有者は「SAKAKIBARA SHINSUKE」となっています。
一方、飲食店集客実践協会を運営する株式会社 店舗集客コンサルティング(ウェブ魚拓)の代表取締役は「榊原紳祐」と記載されています。
「榊原紳祐」は「SAKAKIBARA SHINSUKE」と合致しているように見受けられますが、全日本飲食店協会の公式サイトのドメイン所有者が、関氏が現在は関係ないと述べている飲食店集客実践協会を運営する株式会社 店舗集客コンサルティングの代表取締役の名前となっているのは、なぜでしょうか。
飲食店集客実践協会との関わりを終えて、新たに全日本飲食店協会を設立したのであるとすれば、どうして、飲食店集客実践協会を運営する株式会社 店舗集客コンサルティングの代表取締役である榊原氏が全日本飲食店協会のドメインの所有者となっているのか、不可解に思えます。
IPアドレス
先のドメイン所有者で不審に思い、さらに調べてみると全日本飲食店協会のサーバのIPアドレスは株式会社 店舗集客コンサルティングのサーバのIPアドレスと同じく<157.112.152.6>となっています。
これはつまり、全日本飲食店協会のサーバは店舗集客コンサルティングのサーバと同じであることを意味します。
全日本飲食店協会のドメイン所有者が株式会社 店舗集客コンサルティングの代表取締役となっているだけではなく、全日本飲食店協会のサーバも株式会社 店舗集客コンサルティングのサーバと同じになっているのです。
ドメインの所有者とサーバが同じであれば、少なくともITにおいて、全日本飲食店協会は株式会社 店舗集客コンサルティングに、完全に依存していると考えられても仕方がないのではないでしょうか。
所在地
全日本飲食店協会と株式会社 店舗集客コンサルティングの関係で気になるのは、ドメイン所有者やサーバのIPアドレスだけではありません。
「ドタキャン防止システム」のサイトからリンクされている<特定商取引法に基づく表記>ページ(Wayback Machine)や全日本飲食店協会(ウェブ魚拓)に記載されている所在地は<〒465-0018 愛知県名古屋市名東区八前1-315-2-202>となっています。
これは、株式会社 店舗集客コンサルティングの会社情報(ウェブ魚拓)に記載されている支社の住所と同じとなっているのです。
しかも、電話番号「052-778-9578」まで同じとなっているので、同じフロアをシェアしているだけではないでしょう。
全日本飲食店協会の公式サイトには、<電話でのお問い合わせは受けておりません。お手数ですが上記問い合わせフォームからお願いいたします>と記載されています。これでは、全日本飲食店協会が体裁上、株式会社 店舗集客コンサルティングの電話番号を記載させてもらっていると思われても仕方がないのではないでしょうか。
全日本飲食店協会は、一般社団法人として法務局へ登記する予定であると述べていますが、もしも、この店舗集客コンサルティングの住所をそのまま法務局に登記するのであるとすれば、全く不可解であると考えざるを得ません。
全日本飲食店協会の主体性
関氏は、全日本飲食店協会が飲食店集客実践協会と関係ないと述べています。
しかし、これまでみてきたように、飲食店集客実践協会を運営する株式会社 店舗集客コンサルティングの代表取締役である榊原氏がドメイン所有者であったり、サーバのIPアドレスが同じであったり、所在地や電話番号が同じであったりしています。
これではむしろ、全日本飲食店協会が株式会社 店舗集客コンサルティングの傘下にあるように見受けられても、仕方がないのではないでしょうか。
法律的な問題
全日本飲食店協会が一般社団法人ではないのに一般社団法人として名乗ることは、法律で許されていないので、すぐにも是正されなければならないことです。
それに比べると、全日本飲食店協会が、株式会社 店舗集客コンサルティングから全面的にバックアップを受けていたり、株式会社 店舗集客コンサルティングの傘下にあったりしたとしても、法律的には問題ありません。
個人飲食店オーナーのためとは
ただ、入会費および年会費・月会費が無料で、「ドタキャン防止システム」利用も無料となっている、良心的な全日本飲食店協会が、株式会社 店舗集客コンサルティングが運営する飲食店集客実践協会をメルマガで絶賛したり、セミナーを案内したりと、飲食店集客実践協会の集客装置として機能しているような状況は、純粋にノーショーやドタキャンに頭を悩まして入会した飲食店にとって嬉しいことなのでしょうか。
そしてこれは、<個人飲食店オーナーによる個人飲食店オーナーのための協会>と謳い、飲食店集客実践協会とは関係ないと否定する全日本飲食店協会にとっても、好ましくない状況であると私は考えています。